第九章:終わりなき逃走と太郎の夢
桐生も倒れ、マコトも一時的に退けた。しかし、二人の戦いはまだ終わっていなかった。桐生が倒れたことで、マイクロマシーンの力が消えたわけではない。彼の死は、さらなる混乱と追跡を招くだけだった。
ドローンはすでに動かない。彼らは、暗い神社の石段を降り、再び街を目指して歩き始めた。背後からは、遠くにパトカーのサイレンらしき音が聞こえてくる。エージェントたちの追跡はまだ続いているのだ。
太郎と花子は、互いの存在だけが頼りだった。花子の抱える運命と、それに巻き込まれた太郎の人生は、今や一つの物語として絡み合っている。彼らは、この終わりなき逃走を続ける中で、自らの運命にどう立ち向かっていくのだろうか?
夜が明け、二人は疲労困憊のまま、通りかかった安いラブホテルに身を隠した。ベッドに倒れ込むように眠りについた太郎は、深い夢を見ていた。
それは、遠い昔の記憶。幼い日の自分が、神社の石段から転げ落ち、頭を強く打ち、血を流す。もう死ぬかと思ったその時、一人の少女が、自分をそっと抱き上げてくれた。
「大丈夫だよ。」
柔らかい声が聞こえる。その子の名前は、確か、乙女。
乙女は太郎を介抱し、神社内で清めの儀式をしてくれた。儀式が終わる頃、不思議なことに、あれほど激しかった傷の痛みは、ずっと軽いものになっていた。
「肋骨にちょっとヒビが入ってるかな?まぁ、しばらくおとなしくしていれば治るよ。」
乙女の言葉に、太郎は拍子抜けした。病院に運ばれたが、医者は太郎が血を流して倒れていたという話を全く信じてくれなかった。
「まぁ、子供は大げさに言うことがあるからね。」
事実、太郎の体には、傷口があったはずのところはすっかりふさがり、なんともなかった。太郎自身も、あれは夢でも見たのではないかと思ったほどだった。
太郎は夢から覚めた。隣には、花子が静かに眠っている。なぜ、こんな昔のことを夢に見たのだろう。そうだ。昨日の神社、昔行ったことがあった。
あの神社と、花子。そして、自分の体に起きた不思議な出来事。すべてが、今、一本の線で繋がっていくような気がした。
太郎は、自分が持つ未知の力と、花子の持つ力の関係に、少しずつ気づき始めていた。




