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第三章:迫りくる影と覚醒する力
気づくと目の前にはスーツ姿の男が立っていた。背後からも人の気配がする。男がスッとポケットから何かを取り出すと、太郎は反射的に右へと回り込んだ。パスッという音がして、さっきまで太郎が立っていた地面で何かが弾けた。
花子は素早く男の後ろに回り込むと、ナイフを首に当てて静かに言った。
「動くな!」
「くっ、仲間が、いたのか!?」
男が唸る。花子は答えず、淡々と
「武器を捨ててここは引け」
と男たちに告げた。その言葉に、後ろにいた二人の男は走り去り、スーツの男も持っていた銃を捨てて、その場を去っていった。
花子は地面に落ちた銃を拾い上げ、残弾を確認すると、そのままバッグにしまった。
「追われているの。」
花子はそれだけを言って、太郎を見た。それは、退屈な太郎の日常が、音を立てて壊れた瞬間だった。