第二章:再会、そして隠された真実
翌朝、花子はメイクをしていた。昨日は手抜きだったが、今日はバッチリだ。日焼け止めも忘れない。
「これで3万とか、あのおじさんついてるじゃん。」
そんなことをちょっと考えた。けれど、ほんとに来るのかな。
翌日、午前10時10分。花子は約束の場所に現れた。
「待った?」
花子の問いに、太郎はぶっきらぼうに言った。
「おせーよ。」
そう言って、太郎は花子の顔をじっと見た。
「なんだよ姉ちゃん、思ったより美人じゃん。」
「そうでしょ。」
花子はからりと笑った。
二人は並んで川沿いを歩き始めた。太郎は独り言のように話し始めた。
「30年も仕事ばかりしてきた。それなりに頑張ってきたのに、時代が変わったってことかな。会社なんてさ。……あ、俺、つまんねぇ話してるな。」
「とはいってもモテねぇから、恋愛の話なんて、うまくできないなぁ。」
「なにそれ。」
花子が聞き返す。
「だってあれだろ、若い女子といえば恋バナが鉄板。」
太郎の言葉は下世話だが、確かに核心をついていた。
二人は草むらを抜け、堤防から川を見下ろした。
「ちょうど昼だし、寿司でも食おうか。もちろん、回るやつ。」
太郎が言うと、
「まぁ、寿司ならいいかな。」
花子は答えた。近くの寿司チェーン店に入り、太郎は真っ先に味噌汁を頼んだ。花子は曖昧に笑うばかりで、太郎の
「あんた仕事は?」
という問いには答えない。太郎は自虐的に
「俺は無職さ。」
と言った。
昼食を終えると、二人はまた川沿いを歩き始めた。寂れたラブホテルが目に入る。太郎は花子をぐっと抱き寄せた。花子が嫌がらないのを確認すると、
「じゃあ、約束だから」
と言ってホテルに入っていった。
小一時間ほどで、二人はホテルから出てきた。もちろん、大人の関係があった。太郎はあっけなく応じた花子を、どこか上の空で抱いたあと、残りの二万円を渡し、さっさとホテルを出ていったが、花子もそのすぐ後を追うように付いてきた。二人は再び並んで歩き始めた。
「あのひと、嫉妬深いから。」
花子は、なぜだか気を張っているように見えた。