第十二章:もう一人の巫女
太郎と花子は、古い伝承の中に手がかりを見つけ、**先々代の巫女、乙女**には妹がいることを突き止めた。妹の名前は、音羽。二人は、音羽に会うために、彼女が暮らす街へと向かった。
町の中心にあるコーヒーショップで、三人は向かい合って座った。太郎は、穏やかな笑顔を浮かべる音羽に、姉である乙女の面影を見た。
太郎は、切り出しにくい話を、しかし正直に語った。
「実は、あなたのお姉さんに昔お世話になったもので。」
太郎の言葉に、音羽は驚くことなく、静かに頷いた。
「ああ、姉から聞いた覚えがあります。石段から転げ落ちて、大怪我をした少年を助けたと。」
思い出話に花が咲き、二人の間に流れる空気が少し和らいだ。しかし、音羽は、太郎と花子の緊迫した表情を見て、本題に入ることにした。
「桐生さんが、幸恵さんを愛していたことも、巫女の秘密を研究していたことも知っています。」
音羽の言葉に、太郎と花子は息をのんだ。彼らが知りたかった真実を、音羽は知っているようだった。
「だからこそ、私は、姉と一緒に清めの井戸を埋めたのです。」
音羽は静かにそう言った。それは、巫女の力を悪用しようとする者から、その秘密を守るための、姉妹の決断だった。
音羽は、静かに言った。
「幸恵さんと花子さんには、悪いことをしたと思っています。でも、桐生を止めるには、他に方法がなかったのです。」
太郎と花子は、音羽の言葉に深く頷いた。彼女の行動には、悲しいほどの重みがあった。
「桐生がいない今なら、清めの井戸と儀式の復活は可能です。」
音羽の言葉に、花子の顔に希望の光が差した。しかし、太郎は冷静に、一つの疑問を口にした。
「巫女が特殊な力を得るのも、まぁ、**伝染病の類なんでしょう?**だったら俺も、清めの井戸とやらの力で傷が治ったんで、その、何らかの病気に感染したんじゃないですかね?」
太郎の言葉に、音羽は少し驚いたような顔をした。
「そう言われてみれば、そうなのかもしれません。私達姉妹も、傷の治りは随分と早いのですよ。そのおかげで、桐生にも気づかれずに井戸を埋めることができました。」
「じゃあ、巫女は本来、その2つの力を得ることでバランスが取れていたのですね。」太郎はそう結論付けた。
「そうなのです。巫女の儀式によって力を得、清めの儀式によってその力を安定させる。ですから清めの井戸を復活させ、花子さんに儀式を行えば、不適合に苦しむことはなくなるはずです。」
希望が見えた瞬間だった。しかし、太郎はすぐに現実を思い出した。
「しかし、神社の敷地はエージェントやマコトが抑えている。今潜入するのはかなり難しいな。」
二人の運命を変える鍵は、目の前にある。しかし、その鍵を手に入れるには、最大の難関が待ち受けていた。




