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四話

予約投稿はここまでです。

ストックはもう少しだけあるのですが、

ちょっと間があくと思います。

すみません。

 王族の紋章を持つ女性か男性(どちらなのか、判別は諦めた)に連れられてきたのは、宝石展の会場である博物館の応接室だった。それも貴賓用である。

 ヴィエラのような、一介の商人の娘が通されるような場所ではない。ということは、先ほど見せられた王家の紋章は本物である可能性が極めて高い。


「ケビン……私、トンってぶつかっただけよね?」

「どちらかというとドンっでしたが……他意がないのは明らかだったかと」


 立派なソファに座って縮こまるヴィエラと、その背後で立ったまま護衛に徹するケビン。いざという時はヴィエラを抱えて逃げる心積りだが、かなり厳しい。ここに来るまでの廊下にも、外の扉の前にも警備兵が立っている。


「いずれにしろ、お叱りではないと思いますが」


 正確にはお叱りではないと思いたい、である。

 王家の威光に屈してのこのこついてきてしまったが、見せられた紋章が本物かどうかなんてヴィエラ達では見分けられない。もしヴィエラの家から金を騙し取るための計画的な犯行だったりしたら……そんな心配をしているうちに、部屋の扉がノックされた。ヴィエラの背筋が反射的に伸びる。


(ケビンの背筋は常に伸びている)

「ど、どうぞ」


 反射で返事もしてしまった。自分の部屋じゃないのに。


「失礼します。お待たせして、申し訳ありません」


 扉を開けて入ってきたのは、明らかに高貴な男性だった。淡い金髪、顔立ちもものすごくいいが、着ているものも高級だ。ヴィエラは商人の娘としてそれなりに見る目があるつもりなので、彼の装い――決して派手ではなく品が良いものたちが、どれも一級品のものばかりだと分かってしまった。


 (これは多分、いや間違いなく王族っぽい……)


 詐欺の可能性はなさそうで一安心だが、それならなぜ別室に連れてこられたのか。全くわからない。

 男性がヴィエラの前に腰を下ろして、目が合う。

 その瞳の色で、ヴィエラ達をこの部屋に連れてきた人と、目の前の人が同一人物だと分かった。女性の格好は変装か何かだったのだろう。趣味とは思いたくない。顔立ちが中世的だからよく似合っていたが。


 「こんな場所で申し訳ありません。本来なら王宮にお招きすべきですが、時間が惜しくて」

「いえっ、全然です!」


 王宮まで連行されなくて本当によかった。そう思いながら、つい青年の方を見てしまう。正確には、その目を。

 どうしてだか、彼の目を見ていると月を連想する。この数百年、月が夜空で輝くことなどなかったはずなのに。


「……やはり、何も思い出されませんか?」

「え?」


 青年が少し寂しそうに呟いた。独り言なのか、ヴィエラに対しての言葉だったのか。意図を掴みかねたが、彼は構わず話し出した。


「いえ。――申し遅れました、私は第三王子エフィルクス。エフィとお呼びください」

「――」


 もしかしたら、万が一、億分の一の可能性でそんなことあるかなーとか、思っていたけど……いやそんなわけない従者だとか関係者だとかそんな感じじゃないですかねって希望があったけど――駄目でしたか……。

 王子――エフィはヴィエラを見て、ケビンを見た。


「シウェント家のヴィエラ嬢でお間違い無いですか?」


 身バレしてますね……いつの間に調べたんだろう。

 ヴィエラが遠い目をしながら「そうです」と控えめに肯定すると、エフィは頷いた。


「それではヴィエラ嬢、お時間少しいただきます。護衛の方は、席を外していただきたいのですが」 


 ケビンはムッとしたりはしない。彼は自分の分を弁えている。相手が王族であること、ここまでの警備体制をみて問題ないと判断したのだろう。ヴィエラを一瞥して、ヴィエラが頷くと、黙って礼をして退室した。ヴィエラは王族に逆らうのが怖くて頷いただけだが。本音は二人にしてほしくない。


「……」


 ケビンが退室してしまうと、部屋は二人きりになる。

 居た堪れない。一体何の御用か知らないが、早く終わって欲しい。私の宝石展。宝石展に戻りたい。

 宝石展がヴィエラのものであったことは一度も無いが、何せヴィエラは混乱していた。思考が現実から目を背けている。


「――ヴィヴィエナ様」


 ヴィエラは一瞬、自分が呼ばれたのかと思った。反射的に返事をしようとして、違うと気づいた。

 この部屋にはヴィエラとエフィしかいないのだから、呼ばれたと勘違いしても無理はない。

 畏れ多くも王子が間違えたのだろう。そう思ったが、王子が訂正する気配はない。

 どうしたのだろう、どうすべきかと考えているうちに、エフィの目にはみるみる涙が。


 (また泣く!?)

「すみません、何度も情けないところを……」


 エフィは涙を拭うと、頬を染め、とても嬉しそうに笑った。


 「二百年、待ちました。お会いしとうございました――ヴィヴィエナ様」

お読みいただきありがとうございました。

続きはお時間いただきます。

あんまり間が空くと修正したいことが

たくさん出てきちゃうので、早めに

あげたいとは思っています。

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