星の話
過去の話は今のところ
名前とかを出さないようにしています。
そのせいで分かりにくいと思います。すみません。
空に瞬く星々は、その一つ一つに名前があり、意味がある。
古い本にはそう書かれている。しかしそれが本当かどうか、検証できた人間はいない。
――そう思われていたが、たった一人だけ、それが本当であると語る者がいた。
その者は、空の星全てと契約を交わした魔法使いだった。
星は、人が魔法を使う時に力を借りる天体として最も扱いやすいものだった。あまり魔力を必要とせず、それほど難しい構築でもない。
だが、それが全ての星となると話は別だ。
星に力を借りる時、その在り方を意識するものはいない。
太陽や月には獣がいる。その意志の代行者であると言われているが、真実は定かではない。
だが、星にはそういったものが存在しない。星は数多に存在するが、その一つひとつに意思があるわけではない。
彼らは一にして全、全であり一。
夜空に見える星は全てが繋がっている。
一つの輝きは小さなものかもしれないが、夜空を彩るすべての星であれば、太陽や月にも匹敵する力を持つ。
星に手を伸ばしても、本当に掴めると思っているものはいない。掴もうとも思わない。
それでも今は、彼女の前に、選択肢の一つとして置かれている。
「……」
遠く、星の囁きが聞こえる。星を見上げた彼女は、その輝きを目に焼き付けた。
――私じゃなくちゃいけない理由はない。
そんなことは知っている。あと一日、一か月待てば、誰かがもっといい方法で何とかしてくれるかもしれない。
でも待てない。彼女は、自分にできることは全てやったつもりだった。
あと一つだけやれることが残っている。手を付けたら、取り返しがつかなくなるかもしれない。
でも、過ぎた時間を取り戻すことはできない。
今、やれ。
彼女は禁忌への一歩を踏み出した。
お読みいただきありがとうございました。