表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/9

前世

一応こちらの話は、現在の話と過去の話(時間軸や視点はバラバラ)を

ある程度交互にやっていきたいと思っています。途中から合流するか、

過去の話のネタがなくなったらやめます。

「エフィ。ご覧」


 声をかけられた背後の人物は、億劫そうに進み出て、隣に並んだ。眼下の景色を一緒に見つめる。人々が身を寄せ合って生きる、ある街の姿である。そこそこに栄えていて、昼間は人の多さに辟易するくらいには人が行き交う。


「見ました」

「どう思った?」

「どうとも。塵のように人間がいますね」


 正直すぎる感想に、笑いがこみ上げる。


「お前はちっとも変わらないね。もう少し色々なことに興味を持つべきだ」

「貴方以外に、価値があるものはありません」


 断言するその姿が、愛しくも、寂しくもある。


「ヴィヴィエナ様。なぜ、私の興味を移そうとするのですか?私との契約を後悔しているのですか?」

「そんなはずがない。私はお前が大事だよ。でも私は、お前よりも早くこの世を去るだろう。その時に、お前の寄るべが私だけではいけない」


 振り向くと、傍らの人物がひどく悲しそうにこちらを見下ろしている。


「そんなこと……冗談でも仰らないでください……」

「冗談ではない。お前が大事だし、お前より長くは生きられない。だからお前に大切なものを増やしてやりたい」

「要りません。あなたがいない世界に価値はない」

「なんてことを言うんだ」


 苦笑するも、今にも泣きそうな顔は治らない。その白い頬に手を伸ばす。


「エフィルカ。そんな顔をするな。」


 そっと撫でると、自らすり寄せてくる。


「例え私が先に死のうと君が長く生きようと、きっとまた会える。私がそう言うんだ、信じなさい」


 言い聞かせるように言えば弱々しく頷く。本当に、可愛い子だ。

 空を見上げる。曇天に、その向こうから届く弱々しい太陽の光。あの太陽が燦然と輝くのは、たった一人の人間を照らすためだけである。


「少なくとも、奴を打破するまでは、私もお前も死なない」

「――それは、もちろんです。俺が貴方を守ります。あいつも倒します」


 先程までの泣きそうな表情とは打って変わって、強い決意が表れている。淡い金の瞳は、月光のように優しい色なのに、その奥には炎が燃えているようだった。


「頼もしい限りだ」


 笑って、頬から手を離して踵を返す。決戦の時はもうすぐだ。

お読みいただきありがとうございました。

設定を考えるのが楽しい話なので、

書きたいことはあっても話にまとめるのが大変です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ