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相棒は地球産  作者: 西玉
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5 地球人の世界

 俺は、領主から荒野の所有権は譲られなかったが、魔物を退治したら自由に使用していいというお墨付きを貰った。

 もともと、利用価値のない土地と見なされていたのだ。

 脅威を取り除けば、俺の自由にしたところで、領主に不利益はないはずだった。


 俺は母船から呼び出した三体のB級モンスターに命じて、まずは荒野の周囲を盛り上げ、荒野のある場所だけを囲うように命じた。

 もちろん、母船から地球人を移住させるための準備である。


 10メートルを超える巨人が大木を引き抜いて運び、6本腕のクマが穴を堀り、30メートルを超える蜘蛛が糸で固定する。

 その作業を命じてから、俺は『静かな騒霊』の面々と合流した。

 リーダーのゴメスから荒野の調査についての報酬を渡され、討伐については依頼待ちだと告げられた。

 ゴメスは依頼を受けるつもりのようだが、本気で取り組めば『静かな騒霊』の最後の仕事になるのは間違いない。ただし、仕事の依頼は行われない。


 俺が領主と約束を取り付けたことも、俺が領主と面談したことも、秘密だからだ。

 3ヶ月後、三体の巨大なモンスターにより建築された街並みに、地球人3000万人が入植した。

 地球人は、移民して何がしたいのか。

 他の惑星を脅かしたいわけではなく、支配したいわけでもない。


 ただ、不自由なく暮らしたいのだ。

 地球は環境が悪化し、環境を守るために、あまりにも制約が厳しく定められすぎた。

 地球に住むことに息苦しさを感じるようになった地球人が、より快適で自由な生活を求めて宇宙を旅するようになって、数百年が経過している。


 俺が地球を旅立ったのは、西暦3000年代の初頭である。

 地球を飛び立った宇宙船は大きく、眠ったままの地球人五億人を積んでいる。

 俺はまだ、一億人の住む場所も確保できていない。


「ここが、キャプテン・ヒルコのお部屋です」


 荒地だった場所が綺麗に整地され、壁に囲まれた街並みに変化していた。

 俺は、ビッチに街の中央にある最も高い塔に案内された。


「どうして、俺の部屋がある?」

「作らせました」

「いつだ?」


 ビッチは、ずっと俺といた。間違いない。俺と離れれば、爆発するのだ。


「3ヶ月前です」

「誰に、どうやって命じた?」

「あの三体に、脳波コントロール装置を使用して命じました」

「そうか」


 俺には、それ以上の質問は無意味だとわかっていた。ビッチであれば、俺のそばにいたままで巨大なモンスターに命令を下すこともできるのだ。


「しかし、俺の部屋を作ってどうする? 俺は、いつまでもここにいるわけにはいかないぞ」


 さらに次に居住場所を探しに行かなければならないのだ。


「キャプテン・ヒルコのお世話をするのが私の使命です。お部屋をどうするかは、キャプテン・ヒルコのご判断ではないでしょうか」

「……そうだな」


 ビッチは、全て俺のために動いている。それが、行きすぎることもあるだろう。

 だが、それはビッチの罪ではない。

 俺は最も高い塔から、地上を見下ろした。

 100階建程度のマンションのような建物が並んでいる。

 俺の住まいだという塔は、300階相当の高さがある。


「もう、みんな入っているんだよな?」


 俺は、立ち並ぶマンションを眺めながら訪ねた。


「挨拶に来るよう放送しますか? 3000万人が順番に挨拶にきますので、100日間ほど続くと想定されます」

「いや。いい。まあ……この部屋は、この街の市長になる人間が使うよう指示してくれ」


 ビッチへの命令で最も重要なのが、俺の言葉だ。ビッチは応じた。


「わかりました。キャプテン・ヒルコを市長とするよう、地球人たちに命じます」


 俺は、ビッチの物言いが引っかかった。


「ちょっと待て。ビッチ、お前は、地球人に絶対服従ではないのか?」

「私がお仕えするのはキャプテン・ヒルコだけです。ほかの地球人については、他惑星の生物と同様に扱いをするようにしかプログラムされていません」

「そうか……これからも、よろしく頼む」


 ビッチの危険性をより強く感じながら、俺は手を差し出した。

 俺は拍手を求めたのだ。

 どうやら、俺の体調から水分が不足していると判断したビッチは、俺の手にコップを握らせた。

 コップは空である。


「ミルクと水、コーヒー、ジュースのどれにいたしますか?」

「ミルクで頼む」


 俺が言うと、ビッチは服を脱ぎ出した。これから絞り出すのだ。

これにて完結です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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