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新鋭機 昭和19年

19年も新鋭機?は続々と。

屁理屈はここでも。

 昭和19年登場の新型機    

2月  彗星二二型(剣星搭載型)

3月  紫電改(海軍局地戦闘機)

7月  紫電改三(艦上戦闘機)

9月  飛燕三型(剣星搭載型)

12月 牙竜(戦闘機型)

  


 完全な新型機は牙竜だけだが、他は見た目ががらりと変わった機体ばかりである。


 彗星は海軍が液冷発動機の稼働率のあまりの低さと稼働率を上げるための多大な手間に早期に匙を投げ、金星を積もうと考えたが、剣星が完成したので剣星を積んでしまった。高出力化で空気抵抗増大をくつがえし彗星十一型の速度をわずかだが上回った。整備性も金星と変わらずに良く現場からも好評だった。設計陣のために言っておくと、開発当時は要求性能を満たせる発動機が他に無かったせいでもある。射爆照準器も望遠鏡式から光像式に替えられ、風防形状の小変更もあり前方視界の向上と望遠鏡をのぞき込む事への弊害も無くなっていた。

 1400馬力のアツタ三二型搭載機は、試作だけに終わった。


彗星三三型

全長   10.22メートル

全幅   11.5メートル

全高   3.1メートル

自重   2650kg

発動機  剣星二二型

離昇出力   1600馬力

1速公称出力 1480馬力/2000メートル

2速公称出力 1370馬力/6000メートル

 

最高速度  312ノット

航続距離  1400キロ/増槽二本装備時2500キロ

爆装    胴体下 二五番1発  爆弾倉閉まる

          五〇番1発  弾倉扉閉まらず

      両翼下+胴体下 二五番3発 五〇番不可

機銃    機首 7.7ミリ二丁 後席7.7ミリ一丁


 五〇番装備時に爆弾倉が閉まらず速度が上がらないことから、大型爆弾倉を試した。腹がでっぷりとして見た目が非常に悪くなった。五〇番装備時に速度が二五番装備時と変わらないまで上がった。開口部の地上高が下がり爆装時取り付け困難となった。やたら爆装に時間が掛かる上に整備員が体をぶつけ負傷するなど問題も有り、実用的でないとして中止となった。




 紫電の改良型、紫電二一型(通称・紫電改、誉二一型搭載)が制式化されたのは昭和19年3月だった。低翼化と胴体の完全再設計に主翼も平面形を残して再設計した結果、原型が紫電とは思えない程の戦闘機に仕上がった。紫電の面影が残るのは風防と主翼形状だけと言っても良かった。

 海軍はさっぱり開発が進まない十七試艦戦を待てずに、艦上機化を命じている。主翼折りたたみ機構などを付けたために性能は落ちたが、グラマンF6Fに対抗できるとして19年7月に紫電改三として空母に積むことになった。

 紫電改は海軍重点生産機種として零戦の生産を絞っても生産量を拡大した。零戦の生産は中小型空母用がほとんどになっていく。


紫電二一型  通称・紫電改

全長    9.5メートル

全幅    12メートル

自重    2680kg

発動機 誉二一型

離昇出力   2000馬力

1速公称出力 1800馬力/1800メートル

2速公称出力 1700馬力/6200メートル

最高速度   330ノット

上昇力    6000メートルまで6分30秒

航続距離   1700キロ/増槽装備2300キロ

武装     九九式二号四型 両翼内四丁 装弾数各250発

       六番4発または二五番2発


紫電改三 

 自重が主翼折りたたみ機構を付けたために150kg重くなった。各性能がわずかに落ちた。生産機数340機。母艦航空隊専用で、基地航空隊には配備されていない。ただ戦争終盤では空母の活躍する場は少なく、防空が主任務となっていた。



 飛燕三型は彗星同様、液冷発動機ハ40・ハ140を諦め、剣星を積んだ機体だ。川崎は抵抗したが稼働率を言われると文句を言えなかった。軍の方も材料で迷惑をかけた覚えがあり、空冷化は彗星に較べること半年遅れとなった。かなり首無し機体がたまり、その空冷化改修も大変だったようだ。最高速度は変わらなかったが高高度性能が落ちてしまった。空冷彗星同様、稼働率の圧倒的な高さと振り回せる機体は現場で好評だ。ただ武装が鍾馗同様ホ103四丁であり、対爆撃機だと苦しい。


飛燕三型

全長   9メートル

全幅  12メートル

全高  3.75メートル

自重  2600kg

発動機  剣星二二型

離昇出力   1600馬力

1速公称出力 1480馬力/2000メートル

2速公称出力 1370馬力/6000メートル

最高速度   605km/h

上昇力    5000メートルまで6分

航続距離   1200キロ/増槽二本装備2000キロ

武装     ホ103 機首二丁 両翼二丁

       250キロ爆弾2発


主翼内機関砲を九九式二号五型二丁にしたのが四型で、昭和20年になって生産された。生産機数は480機だった。三型の生産機数は液冷首無しからの改造機も含むので600機から900機とはっきりしない。飛燕全体の生産機数は3500機である。




 牙竜は二式複戦屠龍に変わる復座戦闘機だが、対地対艦攻撃を含める万能機としたため派生型が多いのが特徴だ。開発は川崎だが、陸軍からは多様な拡張性を持たせることと最低要求性能のみで、後はお任せされた。このためかなり自由な設計が出来たと開発者は語った。

 この多用途性要求は、海軍も噛んでいた。銀河は高性能だが機体が大型に過ぎること。よって対艦任務をこなせる小型双発機の構想を練っていた。


牙竜(キ102)

要求性能

機体規模 双発復座で屠龍程度を望む 

戦闘機型

時速600キロ以上(高度8000メートル以上で)

固定武装 ホ103を2丁と海軍で開発中の試製五式30ミリ機銃を2丁搭載

     予定装弾数 ホ103 250発 五式30ミリ 80発から100発

航続距離 2000~3000キロ

離着陸性能に考慮すること

着陸速度は鍾馗程度でかまわない


爆撃機型

航空魚雷1本を抱いて海面上50メートルで時速500キロ以上出せること

爆弾搭載量 1トン半から2トン 全弾外部搭載可

急降下爆撃は要求しないが、高速緩降下爆撃が行えるように

             投弾速度500キロ以上

航続距離 2000~3000キロ


襲撃機型

対戦車用として40ミリ前後の砲を1門

機首に機銃掃射用として7.7ミリ4丁またはホ103を2丁

低空での運動性良好を望む

下面の防弾に留意すること

航続距離 2000キロ以下でも良い



 川崎設計陣は、要求性能を満たす発動機の選定から行った。誉以外無かったが。金星では高度8000で600キロ以上は無理だと思われた。火星でも無理だろう。ハ104なら行けそうだが、大径であり空気抵抗を考えると低空での機動性がどうだろうと思う。

 機体の大きさは若干大きくなるが程度問題であり、離着陸時の安定性を優先した。当時B-29の情報が入ってきており、高高度戦闘機の開発を優先して欲しいという軍の要望も有って、始めに完成したのは戦闘機型だった。


牙竜 戦闘機型 

全長   12.3メートル

全幅   17.5メートル

全高   3.9メートル

全備重量 8.6トン

発動機 

 誉四六型 2速全開高度7800メートル

      水メタノール噴射装置 酸素噴射装置

   離昇出力1900馬力

   1速公称出力 1800馬力(2500メートル)

   2速公称出力 1650馬力(7800メートル) 

   酸素噴射時  1800馬力(10000メートル 10分) 

最高速度   640km/h(8000メートル)

       670km/h(10000メートル 酸素噴射時)

実用上昇限度 11200メートル 酸素噴射時 12500メートル

航続距離   1800km

  攻撃過荷 2400km (200リットル増槽2本 爆弾無し) 

上昇力    5000メートルまで6分20秒 

固定武装

 ホ103     2丁 装弾数各200発

 五式30ミリ機銃 3丁 装弾数各120発

 後席旋回機関砲 ホ103 1丁 装弾数200発  

 一部機体で五式30ミリの代わりに試験的にホ204 37ミリ機関砲1門を搭載した。50機程度と言われる。

爆弾  両翼下装備 胴体下不可 増槽とは排他利用 同時装備不可

 50~100kg4発または250kg2発


 誉四六型は過給器の2速全開高度を上げており、4000メートルから5000メートルの中高度は過給圧の谷間となって苦手とする。通常飛行は出来るが中高度で戦闘機動はやらない方が良いだろう。

 2速全開高度は空気が薄く、無理矢理かき集めるので過給後の吸気温度が高温になる。吸気温度を下げるために、遂に水メタノール噴射装置が付いた。

 高度1万でも時速600キロ以上出ていたようだ。実用上昇限度では飛行がようやくで、進路を変えればあっという間に高度が落ちた。酸素噴射時には11000でも戦闘機動が出来たという。

 酸素噴射は、酸素魚雷の技術を応用し、適量の酸素を噴射。搭載した酸素が尽きるまでは出力を維持できた。基本10分で有るが、中には部隊で酸素瓶増量を行い稼働時間を延ばした機体もあった。機体重量の内、400kgが酸素噴射関係の重量である。ほとんどが酸素瓶の重量。搭乗員用の酸素も使ったと誤解される場合も多いが、搭乗員の酸素吸入用に利用できるが、酸素吸入用の酸素は酸素噴射に利用できないように配管されていた。

 酸素噴射は、排気タービン過給機を搭載したかったが日本の技術力では満足な排気タービン過給器が製造できなかったための苦肉の策である。

 気密室と高高度飛行服も開発はされていたが実用化には遠く、酸素吸入と電熱服で頑張るしか無かった。

 30ミリ機銃は当初要求よりも1丁増えている。これは情報しか入っていないB-29が、B-17以上に重装甲であると予想されたからだ。


 戦闘機としては双発といえども巨大であり、生産機数は終戦までに380機と少ない。ただ印象は強烈だったようだ。

 設計開始時、翼幅は16メートルであった。高空性能を上げるために幅を拡げアスペクトレシオをかせいだ。これは、飛燕の経験から正解であると思われていたからだ。


 爆撃機型と襲撃機型は、流星(三式襲撃機)の開発に成功したせいで要求項目から外された。

 



次回更新 8月16日 05:00予定

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