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終戦

 モロタイ島にB-29が配備されて以来、各地を爆撃に現れる。すでにその影響は現れている。

 高空でB-29が引きつけている間にB-24が中高度で来るとか。いろいろやってくれる。その全てに護衛機が付くものだから、迎撃も容易ではない。100機単位でやってくる爆撃機と同じ数の護衛機を相手にするのは、日本の国力では不可能だった。海軍が著しい弱体化をした今、海路の維持も困難だ。ルソン島以南の航路で安全な航路は無くなってしまった。B-29やB-24は独航船だと分かると高度を下げて爆撃してくる。強気な奴は銃撃まで加えてくる。もちろん沿岸部の基地から哨戒戦闘機が上がっているが、守るべき場所が広すぎて数が足りない。コレまでのんびりと独航船で航海していたのが船団方式になった。海上護衛総隊の護衛が付く。安全になったが発見もされやすくなった。船団方式で輸送効率は落ちた。


 米軍の動向を決死の覚悟で偵察して来るが、遂にハルマヘラ海に大輸送船団と大艦隊が集結していることを確認した。バリクパパンに配備された誉装備の一〇〇式司令部偵察機四型の成果だった。特別仕様として落下増槽二本を装備しての強行偵察だった。バリクパパンは本土以上の防空体制が敷かれているために米軍も数回の爆撃で手を出してこなくなった。


 大本営では次はどこかという議論になった。当然フィリピンという意見が圧倒的だが、沖縄やマリアナもあり得るという意見もあった。マリアナに関しては防衛不可能で航空隊は全部と歩兵は出来るだけ引き揚げて残存兵は白旗を揚げさせようという意見も出た。それ程までに戦力が隔絶しており、一発逆転などと言う妄想を語る者は居なかった。一撃を加えても負けが明日に行くだけで逆転など不可能という思いは共通だった。

 フィリピンが現実的だという意見に落ち着いた。ではどう痛撃を与えるか。日本が恐ろしいと言うことを知らしめるにはどうするか。細かい作戦を練っている時間は無い。開戦以来考えられてきた作戦の内、フィリピン戦に関する物から選ぶしかない。


 選ばれたのは【捷一号作戦】だった。

 直ちに作戦展開を図るものの時間が圧倒的に足りなかった。だが、基本は有るのである。無いよりもマシなのだ。間に合ったのは艦隊と飛行隊で、歩兵部隊ましてや重砲部隊など到底間に合わない。

 かくして【捷一号作戦】から陸戦を抜いた作戦が始まった。


 【捷一号作戦】は、健闘したもののやはり質と量が違いすぎた。3倍以上の艦載機。海を埋め尽くすのかと思われる程の威容を持つ艦隊。重厚な対空砲火。艦載機が減らない恐るべき後方能力。モロタイ島から数十機単位の重爆。何もかもが違いすぎた。

 連合艦隊が一敗地いっぱいちまみれた後で、レイテ島タクロバンとサマール島ボロンガンに野戦飛行場を造られ、戦闘機隊の進出を許した。

 そこからは、マニラを守るのが精一杯になってしまい【捷一号作戦】は失敗するべくして失敗した。





「意地は見せた」

「意地はな」

「何だ?」

「コレで終われるとでも?」

「終われないかな」

「終われるとでも思うのか」

「ではどうしろと」



 内地で騒いでいる内にミンドロ島が攻略され、飛行場が整備された。南シナ海航路は閉鎖されたと言っても良かった。

 またフィリピン内海にアメリカ海軍機動部隊が居座り、南シナ海に出撃してくるようになると完全に南方資源地帯と本土との交通は断たれた。

 本土も機動部隊の空襲を度々受け、損害が増していく。



「終わりましたな」

「国内にある物資だけでは、もう戦いにもならんでしょう」

「うむ。まだ戦えるが、これ以上は内地の被害が大きくなる」

「御前会議を」

「奏上するのですか」

「私がやろう」

「海軍大臣、いいのか」

「暴れてみせると言った手前、責任は果たさないとな」


 戦時内閣最後の総理大臣山本五十六が誕生した。


 昭和20年7月20日、御前会議。


 昭和20年7月25日、日本は連合軍に降伏した。



終わりました。閲覧ありがとうございました。


いったん完結しますが外伝を書いていますので、ボチボチ上げていこうと思います。

今の所、3話書いてあります。

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― 新着の感想 ―
技術系の裏打ちのある作品は読みごたえがあります。 楽しませていただきました。
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