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運試しゲーム     <夏>

作者: 黒猫っち

「ここは………どこだ?」


目を開けばモノクロの部屋に俺を入れて3人の男、そして真ん中に立つ小鬼。


見覚えのある、この小鬼 どこかで会った。そう 確かに会ったんだ。 あの場所で。















                 〜数日前〜


そう 俺は……あの日 友達との待ち合わせに遅れそうで、信号も見ずに飛び出したんだ。


そして横から俺を死へと誘うものが現れたとわかったのは、俺の体に激痛が走ってからだった。


目を開ければ、自分の血で真っ赤に染まった俺、体は動かず、目を開けるのと今の状況を理解することで必死だった。


そして、俺 死ぬんだ……………。そう実感したとき そいつは俺の目の前に立ち俺を見下ろしていた。


そう そいつが、ダブルのブラックスーツを着こなした1匹の小鬼だった。


『お前、生きたいかい?』


俺を見下ろしながら呟く言葉に俺はすぐに食らいついた。


「あぁ………生きたい……こんなところで……死にたくねぇよ。」


『そうか………ならゲームをしようじゃないか。 生きるか死ぬかのゲームだ。このままにしていてもお前は死ぬだけだ。生きたいだろ、なにをしてでも。』



「わかった………やってやる やってやるよ その賭け、俺は絶対に生きてやる。なにをしてでも生きてやるよ。」


生きるために必死だった俺は叫び、俺のことを見下ろす子鬼を見上げていた。


『OK〜 ゲーム開始だ。楽しんでいけよ。小僧……。』



小鬼は冷静に、そう呟いた。ニヤァッと口の端を持ち上げて楽しそうに笑いながら




〜現在〜


『それじゃ 参加者も揃ったところで今回の……………………………運試しゲーム……………………………STARTだ。』


真ん中に立っていた、小鬼が突然、喋り始める。今回……という言葉に引っかかる、前にもやったことがあるというのだろうか? そんなことを考える俺を尻目に小鬼は喋り続ける。


『ルールは簡単だ。 お前らはこれを振るだけでいい。』


そう言いながら 小鬼はスーツの内ポケットを探り床に投げる。















それは誰でも一度は見たことがあるだろう。


「サイコロ…………か?」


誰か呟く。そう 小鬼が投げたのは2個の小さなサイコロ。


『そう、お前らが使うのはこれだけだ。詳しいルールを教えてやろう』


『お前らは順番にそのサイコロを振る。そしてそのサイコロの出た目によって、オイラがこいつを撃つ。』


ルールを説明しながら、小鬼が内ポケットを探り、出したのは……リボルバー。


『いいか? ここからがお前らの運命を決める、重要な部分だ。』


『サイコロの目が1なら右肩を撃つ。』


『サイコロの目が2なら左肩を撃つ。』


『サイコロの目が3なら右足を撃つ。』


『サイコロの目が4なら左足を撃つ。』


『サイコロの目が5なら頭を撃つ。』


『サイコロの目が6なら………セーフ。』


『まぁ………簡単に言えばだれかが死ぬまで俺が引き金を引く……ってことだ。』




こいつは…………何でこんなに簡単にそんなことが言えるんだ。なんで人を殺すことをこんなに楽しそうに喋るんだ。


目の前にいるこいつはルールの説明をしながら、楽しそうに笑ってやがる。


いったいなんなんだ………こいつは。


『ルールは覚えたな。それじゃぁ サイコロを振りな。』


俺たちの返事も待たずに小鬼はドアのすぐそばにあった椅子に腰をかける。


「じゃあ 俺からいくぜ。」


俺の正面に座っていた男がサイコロを握る。


こいつらもそうだ、なんで こんなに楽しそうなんだ、なんで、自分の命や他人の命がかかっているのに、こんなに……………楽しそうな顔が出来るんだ。


カラン……


そんなことを考えていると、俺の耳にサイコロの音が聞こえる。










男が出した目は……………3と4…………


パンッ……パンッ


俺がサイコロの目を確認すると同時に銃声が聞こえた。立ち込める火薬の匂いと血の匂い。


そして遅れて聞こえてくる、男の絶叫に楽しそうな小鬼の笑い声。


「次は……………俺か………」


痛みで絶叫する男を尻目に小鬼の正面に座る男がサイコロを拾い、振る。













カラン…カラン……



サイコロが床に到達した音を聞き、目の前に転がってくるサイコロ。


5と6の数字が俺の目に映り、小鬼が小さな声で呟く。


『セーフをだしたのにもう一個は頭かよ。運のねぇ野郎だな。』


パーッン。


さっき聞いた音が小さな部屋に響き、小さな悲鳴が漏れる。


サイコロを振った男が血を流して倒れている。


小鬼はリボルバーに弾を装填しスーツの内ポケットへと入れ両手の指を口に入れ楽しそうに笑う。


『けっこう早く死んじまったな。小僧、運がよかったな。一発も喰らわなかったなんてな。それじゃ こいつは始末だ。』


小鬼がそう言い終わると同時に巨大な炸裂音が聞こえ、目の前の男の体に大きな穴が開いていた。


気付くと途端に臭ってくる血の匂い。足元まで流れて来る男の血。


小鬼の姿を見ると、いつのまにか右手に握られていたショットガン。


その握られていたショットガンも闇に溶けるように消えていく。


『よかったなぁ 小僧、これで家に帰えれるぜ。じゃあ あばよ。』


「やっと終わったのか。俺は生き残ったのか…。や……やった これで家に みんなのもとに帰れるんだ。」


喜びから涙がこぼれ、俺の頬を濡らす。床に転がっているサイコロに手を伸ばし 座っていた床から立ち上がる。


そして目の前にいる子鬼に「じゃぁな」と短く呟くと同時にサイコロを床へと落とす。


カランカラン…という音が聞こえると俺は意識を失った。

















「んっ…………ここは……どこだ?」


目を開けると真っ白な天井が俺を見つめる、ベッドに寝転がっている。


匂いを嗅ぐと自分の体と遠くから匂ってくる薬品の匂い。


「病院………か。よかった…」


そう 俺は帰ってこれたんだ。あの小鬼の部屋から、あれが夢だったのか現実で起こっていたのかはわからない。 でも 俺は生きている。ベッドから起き上がろうとすると体中が痛いけど。 自分で呟きながら苦笑する。なんだかおかしな気分だ。















『よぉ、小僧 元気してるかい?』


突然の声に横を向くと俺のベッドの横の椅子に座る。 あの小鬼。


「お前 なにしにきたんだよ?もうあのゲームは終わったんだろ?俺はここに戻ってきてるんだから。」


『そうだな 終わった……はずだったんだけどな。お前があのサイコロを振ったせいで俺がこっちに来ることになったんだからよ。』


そう文句を言いながら右手を上に持ち上げ、パチンと音を立てる。







そして小鬼の右手の少し上から落ちてきた、二つのサイコロ。


そのサイコロは真っ直ぐ床へと落ちて転がる……














二つのサイコロは別々に回転しながら……ゆっくりと…その動きを止めた……。




出た目は5が二つ。


サイコロを確認すると同時に自分の横からカチャンという聞きなれない音が聞こえる。


顔を音のほうに向けると、あの時のショットガンを2丁、両手に構えている。




『小僧のせいでこっちまでこなくなっちまったんだ…せめて…………脳みそぶちまけて派手に逝けや。』


そう言うと小鬼は俺の目の前に立ち、俺の側頭をショットガンで押さえ、俺の耳には不気味な小鬼の笑い声が聞こえる。そして…俺の命はもうすぐなくなってしまう。


「い いやだ…死にたくない……死にたくないよ。 助けてくれよ、小鬼。」


『……お前は、このゲームに参加した…勝ち残った…それで終わればよかったのに…お前はサイコロを振っちまったんだよ…それに覚えとけ、俺の名は小鬼じゃねぇ ラグナだ。 いいな この名を忘れるな 死んで地獄に逝ったら もう1度戻ってきてゲームに参加しな、そして俺を殺しに来い それまで俺はゲームを続けて待っててやるよ。』


小鬼の……いや ラグナの言葉を聞き終わると同時に俺の頭に痛みが走る













あぁ……あの時、サイコロを振らなければよかったんだ。

    あの時、普通に終わればよかったのに。

    あの時、俺は……俺は……。


  俺の言葉が頭の中でぐるぐると回る。

ラグナの言葉が頭の中でぐるぐると回る。




そして 俺は……底の見えない、真っ暗な闇へと…堕ちていく。















『俺を殺せるやつを待ってる…だれか俺を殺しに来い…。』

誰に言うわけでもなく、小鬼は…ラグナは呟く その口調はい。

スーツの内ポケットからタバコを出し、ゆっくりとした動作で火をつける。

口から吸い込んだ煙を吐き出し、自分の目の前に文字を描く。













           運試しゲーム    GAME OVER


えっと 運試しゲームをお読みいただき、ありがとうございました。

今回の運試しゲームはどうだったでしょうか?

また感想やこんなストーリーのものを書いてほしいなどのリクエストがありましたら よろしくお願いします。 では また次回作をご期待ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 小鬼というキャラクター造形は悪くないと思いました。 ゲームの内容が、物語ともっとうまく連動すると面白くなるかなと思いました。
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