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イチゴサイダー  作者: 南野 東風也
第二章
75/264

75.修練期⑮ 気の修練

技の具体案ができて「実践しようぜ!」と湧き上がっていた僕ら3人の訓練が、もう気付けば季節は秋を過ぎて冬になろうとしていた12月初め。


ゴリ先が、ストレッチを終えて、また質問をしてきた。


「定期の質問だ。お前らは何になりたいのか、考えがまとまった奴がいたら教えて欲しい。何度も言うがこれは意志の問題だ。興味が無ければ、ずっと返事をしなくてもいい。以前も言ったがこれに正解・不正解は無い。」


「僕は続行!!セビエドです!覚えてる動きが再現できるまで、まだまだかかるけど絶対なってやる!んでから越えてやるんだ!」


そういうと竜二は

「俺は・・・。ハイドラの言う通りになるのは(しゃく)だけど、カガミがセビエドなら俺は【ブレイバー】だ!」


竜二は他人第一マインドが最近増して来た。誰かを守る感情か、いいね!それ!お前にゃ合うよ!


ヒカルは

「僕は2人に敵わない。だから2人の道を切り開く足掛かりになりたい。カガミが言ってた言葉にするなら【バランスブレイカー】になりたい!」


そういや言ってたなぁ。使い捨ての一撃必殺ってよりは、切り崩しの機を狙う頭脳派って事かな?


ゴリ先が少し驚いた様な気がした、そして何かボソッと呟いてから、

「よしっ!」と言って


「ここで口に出して想像した未来を、体現する為に励め!」


「はいっ!!」


その日の床叩きはなぜか200回で初めて「合格。」と言われ、三人とも「201!」と言って無駄に畳を叩いた所で「え?」聞き間違いか?って感じで戸惑ってたら

ゴリ先が「休憩10分!」と言って


「よっしゃ~~~~~!!!!」と三人で叫び合った。


ヒカルが「条件は音か。」と言っていた。やっぱ賢いなヒカル。


お互いがお互いを待つ。最後にはゴリ先の掛け声を無視して僕らのペースで畳を殴り続けた。みんな初めはゴリ先を見ていたけど、100回を超えて僕たちは自分たちのペースで叩いていたんだ。ぴったりと音が重なっていた。ヒカルのペースを守り、竜二のペースを気にする。きっと2人も同じ感情で自分たちを()()()()()()()んだ。


「まず1つ!」竜二がそう言って拳を突き出して来たから、三人で痺れた拳同士をコツンっとぶつけ合った。



ジャンプは

「目線を高くする代わりに20回だ!集中しろ!」と言われたが、三人で初めて声を掛け合って3回のミスジャンプでこれまた初めて「合格」を勝ち取った!


「条件は気遣い?」「だね。思いやりかも。」ヒカルも竜二も気付いた。僕が最後に気付いたのは内緒な!


2回ミスったのは僕です!すいません!

竜二お前も1回ミスったんだから謝れ!!


いつもより5cmくらい高かった。これだけで結構しんどいんだよ。やり切った後は3人とも声もでず、バタっと倒れたが握った拳は天井を向けてお互いを褒めてた。



ヒカルは僕のやってた足払いを(かわ)すイメージを特訓してて、長身で軽量だった。得意分野だったんだ。一番きれいに飛べてたし安定してた。


こういう時に限ってきっちり成果を出してくるヒカル。さすがだね!

んでこうゆう時に限ってミスる僕。。。



そんなことを考えてたら

竜二が僕らの首根っこを掴んで言って来た、

「二つ!!最後は組み手だけだ!絶対有効打を取って次に行くんだ!」

「OK!リーダー!」僕もつられて「わかったよ!!リーダー!」って言ったよ。しっくり来たんだ。


竜二の手がリンクで【諦め】を吸い取ってくれた。僕とヒカルはあの日に戻ったみたいだった。


それは夏休みの肝試しで竜二がじゃんけんで負けてリーダーになった忘れもしないあの日。


組み手の直前、目の前のゴリ先がまるでセビエドとの邂逅(かいこう)に感じたのは僕だけだったんだろうか?


いつもはビジョンの事を悶々と考えて始まるのに、今日の組み手は何だかどうでも良くなって逆に楽しみだった。横を見ると二人とも緊張の中に似たような感情があったのか笑って見えて。


ゴリ先は今までの訓練では見せたことの無い、ものすごく楽しそうな顔で歯を食いしばって片側の口角を見せてからこう言った。


「久しぶりにいいなおまえら!いつでもかかって来いよ!!!」



そっから僕の攻撃中心で()()()3人で声を掛け合いながらのバトルが始まった。


なんで初めてかって?それは確実に有効打を取る為に、仲直りしてからもゴリ先には悟られない様に今日まで隠してたんだ!ヒカルめ姑息だぞ!


道場にはいつもゴリ先が同じ畳を叩いてたせいか他の武術かもしれないけど、2か所程、段差のせいで樹脂畳がもっこり浮き出た場所があった。それをゲームのダメージが喰らう場所とかけて「毒パネル」「毒パ」と呼ぶ事にした。


基本すり足で動き、逃げられない足払いはジャンプで(かわ)すらしくヒカルの見立てでそこに追い込んで少しでも体制を崩せないか?と考えた、


僕らはそんな都合よく!と言ったが、できる事を重ねがけしてそれでも届かない相手か見極めたくなったのでまずは何でも試すことにしたんだ。



竜二が「毒パに!」と言うと僕が繰り出すパンチを軽々と払っていたゴリ先が注意を注いでヒカルを睨む。


ヒカルは体当たりと見せかけて避けようとした方向に当たる直前の回し蹴りスライディングで移動させ毒パに近づけさせた!その間も僕はスタミナを使いゴリ先の集中を削ぐ!


ヒカルも「時間差で!」とか「一気に!!」と言うタイミングを指示出して

僕らは()()に遂行した。


指示と掛け声だけの攻撃()()無いように思わせる為に。




ヒカルがやられて竜二に指示権が変わった時も「カガミ持ちこたえてヒカルと挟め!」と言い立ち上がったヒカルと息を合わせて上段と下段をそれぞれ攻撃する。まぁこんなにやっても当たらないんだからムカつくよね!


ゴリ先も楽しくなってきたのか笑いながら攻撃が出てきたが、少し息も上がって来た。今はスタミナを削る事に集中だ!



ヒカルのスライディングは足を取ろうとした手を蹴られ、僕の走り抜け中段キック攻撃はうまく躱された時、背中にチョップが落ちる。

結構やられたぞ!竜二さーん指示を~!


竜二は重いパンチを繰り出し逆に隙だらけの腹を殴り返されたが、怯むことなく続けざまに回し蹴りを放って、一瞬ゴリ先が目を見開いた!触覚が無い事を忘れていたんだ!


竜二の蹴りが当たりそうなスレスレで躱されたが、毒パ一歩手前まで追い詰めてくれた。


そこで僕はゴリ先が毒パで一瞬だけよろけるビジョンを逃さなかった!!


「行くぞ!僕が先読む!!」そう言うとゴリ先は

「便利だな!イラつくぜ!」と返してきた。

会話してる暇なんてない!ヒカルも「ほっとけ!カガミ!」と言ってくれた。


「竜二すてタ!!!」すてみタックルを使ってやる!さながらエリートトレーナーの気分だぜ!


竜二は毒パに入りやすいようにタックルをする!ビジョンでは反対方向に(かわ)すな!じゃあ未来を変えてやるよ!



「ヒカル!毒パ誘導!!!左に逃げさせるな!タックルだ!」

「OK!!」

タックルは面倒だ、分かってると避けるだろ!


先に走り出した竜二のタックルはさらりと避けられ無駄に通り過ぎて奥に転がってしまったが、


すぐ後に速攻でタックルを繰り出したヒカルのおかげで、ビジョン的にはすり足で毒パ行きだ!!

よしっ!!!!


「毒パ!入る!!ヒカル!サソリの尻尾だぁ!!!!」ヒカルは竜二同様タックルを避けられたが、体制を立て直せずゴリ先に程近い床に転がったまま。 


けど、それでいい!()()()だもんな!


ゴリ先とヒカルと竜二がほぼ一直線に重なった時、


「うぉらぁぁーー!!」竜二が確定の情報を聞いて予定してた()()()()へと作戦を変えた!


一直線に大降りに構えて利き腕を貯めに貯めて殴りにかかる!!


ゴリ先は、またかって顔でいてたけど、すり足のせいで畳の浮きに引っかかり足がもう一度地面を探して浮いた所を、ビジョンで見ていた僕に捕まえられる!

「くそっ!」



「竜二!!いけー!!!」僕が大声で叫んだ時、ゴリ先は僕の掴んだ足を見てから、竜二の殴ってくるのを避けようとも考えていたが、僕がアンカーになって張り付いたせいで竜二の攻撃を真正面から受け止める作戦に出た!


ゴリ先的には距離的な余裕はあった、竜二の振りかぶったパンチが真っすぐくれば振り出しだっただろう。


でもむくっと立ち上がったヒカルが竜二の右腕を両手で掴んで遠心力を出す為に走り出す!

そこから竜二はヒカルを武器の様にぶん回した!!


技名【サソリの尻尾】でゴリ先の遅れて構えた左腕にヒカルの回転キックを喰らわすことに成功したんだ!!!


ついに!有効打が入った!!!



ゴリ先は思いもよらなかった方向からの一撃で左腕のガードが間に合わずアンカーのせいで右に倒れゴゴゴと畳に沈んでいった。のは一瞬で、起き上がってあぐらをかいて「ハハハハハ!」と豪快に笑う。


僕らはお互い見合って笑顔で頷く。ガッツポーズを小さくしたヒカルを見てやっと組み手が終了だと理解した。


そしてゴリ先は質問をしてきたんだ、


「何で、前回まで取れなかった有効打を取れたか、わかる奴はいるか?」


竜二が「()分が晴れてたかなぁ。」

僕とヒカルが「うん。」「そだね。」息はまだ上がってる。笑い合いながらみんな適当な返事だった。


だが何を言っても恐らく正解だったみたいだ。


ゴリ先はそういう先生だ、僕らを否定しない。

肯定できない時には考えさせる。悩んで悩んで悩ませて、自分達で根性で答えを見つける迄、待つ。それが1番自分達の力になる事を解ってる。


一見、酷かもしれないが、待つ方のしんどさも今ならわかる。それを根気強く待っていてくれたんだ。


ゴリ先も苦しかったんじゃないかな?だから心から喜んでくれたのかな?って思った。


ゴリ先は笑って首を縦に振って僕らの答えを認めてくれた。


「確かにそうだな。()の修練、合格だ!」と言ってくれた!



リアルクソゲーはチャクラみたいな「気」は存在しない。無いものを求めても仕方がない。


本当にあるのは

相手への()遣い

乗り越えるための元()

辛い時に必要な()合いに

運命に立ち向かう勇()






この3ヵ月。僕らに足りなかったのは、ほんの【()】の持ち様だったんだ。


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