46.遭遇期⑪ セビエド
「カガミ!ヤバい!挟み撃ちだ!僕が判断を怠った!」ヒカルの声に僕は返事をしたか、していないか正直覚えていない。
まず最初に見たビジョンは竜二達が焦って叫んでいるビジョンだ!
外国人少年が迫ってきているわけでは無いのに両サイドからのプレッシャーがすごくってネネちゃんは竜二の手を引きこっちにきた。
竜二はこっちを見ずに視界の先にいる人を睨み牽制していた。
そしてネネちゃんを庇うように僕達に合流。とうとう4人がじりじりと寄せ集められて背中合わせになってしまった。
僕たちが来た方向から歩いてきたのはガタイの良い日本人だった。まだ30m程は距離がある。
「カガミ、来た方向の日本人。正直、強そうだ。横をすり抜けて逃げられそうか?」
竜二の問いかけに僕は返事をしようとしたが、このままだとパニックになりかねない。
またか、いや、やるんだ!僕がみんなの恐怖を喰らおう。
再度みんなとリンクをして吐き気の催す恐怖の感情に根性で耐える。
「どのビジョンでも、どのタイミング、方向、時間を変えても、僕が逃げ延びるビジョンが浮かばない。たぶん頭を地面に強く押さえつけられてる。そこで意識が落ちる。最悪・・・死ぬって事か?」
言ってて辛くなった。僕ら如きでかなう相手じゃない。
そいつが近づくにつれ膨れ上がる恐怖がいっそう判断を鈍らせたが、竜二はまだみんなが助かる道を模索してくれていた。
リンクをして竜二の怖さが明らかに減った。焦って叫ぶビジョンは避ける事が出来たと思う。
あいつはリンクしていようが何だろうが最後まで諦めない。いやリンクで諦めの感情が多少あるんだろうけど、前に言っていたんだ。
【諦めた時、どうしたらいいかわからない】だから諦めない選択肢以外を知らない。リンクとは無縁の最強スキルだと思った。
「ちょっと怖いんで止まってください!」竜二は迫る日本人に声をかけた。良い判断だ!
すると「あぁ、悪い。」とまともに返してきた。足を止め竜二と向き合う。おや、これは話が通じるぞ。
そこで正反対にいる外国人少年がいきなり大きな声で叫んだんだ。
「そいつだ! そいつが仲間の骨を折って、スマホを奪い取った奴だ!!」
4人は全力で日本人を睨んで最大級の警戒をした。ヒカルは リンクを解いて恐怖に耐え、日本人に問いかけた。
「ホントなんですか?あなたは何者ですか?」
日本人は竜二を見て外人の少年に聞こえるような大きな声で
「まず、答えるが、そっちの外人達も含めてそこから一歩も動くな。君は原君だな。俺は五月。五月 勝利 警察だ。」そう言って服の後ろから伸縮する黒い棒をだし右手のスナップだけでシャカっと最長まで警棒を伸ばした。
外人達?? クソ!戦闘は避けられないのか!!
ヒカルが歯ぎしりをして五月を激しく睨んだ。最悪だ!そっちの答えか!!
「今のはウソだ!!!!!!」
僕たちは全員で五月を睨んで、ここで彼を敵として認識してしまった。
「なんで俺の名前を知ってるんだ!!!!お前が!ハイドラだろ!!!!」竜二が口を滑らした。そこで次に言葉を発したのは誰もが予想していなかった外国人少年だった。
「アハハハハハ!!!!!ただの子供が何でハイドラを警戒すんだよ!!!!!!」ギラギラした目で
竜二を睨んでそこで病院側に初めて竜二は振り返ったんだ。そしたら
「え??!ウソだろ。おい!おい!!!!!!エーセブン!こっち来いよ!!!」
ネネちゃんがいつの間にかリンクを解除して呟いた。
「廃病院から望遠鏡でこっちを見てる!もう一人誰かが来る!!!!」
そこへやってきたのは左腕が折れているのか添え木をぐるぐる巻きにした奴だったがそんな事どうでもいいと思えるくらいにヤバい格好をしていた。
エーセブンと呼ばれたそいつは【アザレア教裏聖典】で出てきた嘴医の絵そのものだった。恐怖が無い状態でも身震いするような、鳥のクチバシのマスクが次第に見えてきた。あーそうか。
完全に読み間違えた。こいつらこそが【ハイドラ】だったんだ。
エーセブンは「セビエド。you did good。」と言ってセビエドと言う名の少年のすぐそばに来た。
セビエドは
「おい!サツキ!こいつらが殺されたくなったら動くな!!!お前らもだ!」と言った。
五月は「クソッ!」と言ってくれた。こいつに僕らの命を託す方が賢明か??いや警察と言う嘘を付いた。どうする?
僕達4人は混乱の真っ只中だった。前門の偽警察、後門のハイドラだ。
セビエドはパーカーの両袖から初めて手を出した。黒いゴム製の手袋をしていた。
その手でだらんと下に向かって病院にあったのか鈍い輝きのメスを構えた。
明らかに子供の動きじゃない。きっと一番スムーズな【人の殺し方】を知っている。そんな構えだった。
このまましてても4人の誰かから殺られる。深呼吸だ。今出来ることを考えろ!
エーセブンと呼ばれたクチバシマスクの背の高い男は「ラスト2 OK?」と短い言葉をセビエドに話し、
「あぁ、目的変更で出し惜しみなしだ。あいつ相手に10分で出来るのか?」と返事をもらっていた。
「NO problem.」
軽くてプラスチックのように見える50㎝くらいの棒に水銀のような銀色の液体をドロッとかけて小さな機械をひっつけた後ボタンを押す。
すると銀の液体がガチっと形を形成して刃物に生まれ変わったんだ!
僕らは固唾を飲んでそれを見ていた。
なんだ!!何なんだあれは?ネネちゃんはその動作一つ一つを凝視して恐怖が増していた、ひとまずリンクだ。【恐怖】は僕が請け負う!
触れたその瞬間、気持ち悪さで黒い吐息が出ているようだった。
醜悪な顔になったセビエドは
「ここでまさかイチゴサイダーを見つけられると思わなかった!【ゼロ】の尻ぬぐいをコッソリしてやろうと思っただけなのにな!笑えるぜ!!しかもあのブレイバーときた!!!最高だ!サツキを殺せば後は残りのガキとジルだけだろ?楽勝だよな?エーセブン!」
「OKAY . I’m ready!!」
そしておもむろに右足のかかとで自分の右尻あたりをヒールキックした。一見何をしているか分からなかったが、竜二が僕らに聞こえるくらいの声で
「おい!両手に持ってるメスに電気が流れてる!挟まれたら感電するぞ!!」と言った。
僕が止めなきゃ。みんな 死ぬ。




