251.鏤骨期① 日本にて
第6章
日本に向かうことが正式に決まったのはザディウスが国連事務総長になって暫くした冬の終わりだった。
その少し前、アティウス医療財団が恐ろしく強い兵を連れて僕らの本拠地ロックアイランドを占拠したのはつい先日の事。
事前に見たママの未来予知で避難を済ましていた島民というかハイドラのみんなはアメリカ西海岸に移動を開始して難を逃れたが、A1とハイエンドドライバーNo.1のオニールは島に残り最後まで戦ったらしい。
生存について話すものはもはやいない。
そんな犠牲を顧みずザディウスは日本に対して要望だけを詰め込んだ安全保障の内容を書簡で送ったけど、どう受け取ったのだろうか?
ハイドラの目的は?もちろん日本侵略だよ!言い方が物騒かって?確かにそうだけど・・・。
アークのまとめ文章をチラ見しながら言うとハイドラから日本行きの渡航者は合わせて8人。
その内訳は、
ハイドラ代表ザイドラの ザディウス
ハイドラ戦闘部隊レイドラの ゼロ
A 3 (レイドラエージェント金田)
A 4(レイドラエージェント桃山)
スリル(ハイエンドドライバー3番手)
フォース(ハイエンドドライバー4番手 桃山 ショウ)
ヤエちゃん(アイドラ青年部隊構成員 桃山 ヤエ)
オマケに僕。
なんだろうね、この場違い感。
シラスの中にたまに入ってる小さなタコの気分だった。
でも日本に帰れる!!やったぜ!!イヤッホゥーーー!帰ったら僕がビジョン通り落下死してしまわないように記念公園の塔の腕部分だけでも破壊しに行こう!!ヒャッハー!!・・・とまぁ、僕なんて奴は一人放ってオクト妄想がエキスパンションしちゃう可能性があるんだよね。誰か止めてー!
ハイドラ本部のロック島からワシントン島へ船で渡り飛行機を乗り継いで、長時間の空の旅。
長すぎて疲れ出した頃、ようやく成田に到着した。
ぶっちゃけここでこっそり抜け出してハイドラとサヨナラでも良かったんだけど、ショウとヤエちゃん、それにそのお父さんの桃山さんが無事解放されるまでが勝手ながらきっと僕の責任だと感じていたから自分の意思に従って行動を共にしている。
ザディウス以外クチバシマスクやクチバシフードを被る僕らに対して国賓を扱うかの如き態度で接するがこの集団、実は蓋を開けると中身は過半数が日本人だぞ!
そこから懐かしい電車(貸切り)に乗り、また降りての移動。
僕らはザディウスを守るよう陣形を崩さ無いよう注意を払いつつ、用意されたマイクロバスに乗り込んだんだ。
一緒に何人か乗り込んできた人の中に1番偉い感じの大臣がザディウスに話しかけようとしていた。
「ナイストゥミ」
そこでザディウスは遮るように微笑みながら手を出して言葉を止める。
「日本語はほとんど理解できます、良ければそのままでお話しください。」
と流暢な日本語で返したんだ。
やるじゃんザディウス!さすが賢いなぁ。
「あ、え、ええ。そ、それでは。」
少し驚いたような大臣さんは気を取り直して
「私は外務大臣の山田と申します。事務総長様、単刀直入にお聞きします。事前に頂いた書面はご冗談では無いのですね?安全保障と引き換えに
【国土の半分を譲り渡す】と言う内容は。」
「ええもちろんです。今回重要なお知らせをお持ちしましたので、それを聞いて再考していただけるかと考えております。」
「はぁ。それは今、私が聞いても?」
ザディウスは困った顔をして
「事の重大さがあなた自身で受け止められるのならば可能ですが・・・。」
そう言われると大臣の山田さんはゴクリと唾を飲み、乾いた声で
「外相関連では収まらない内容かと、おっ、お見受け致します、総理大臣とのお話で結構です。」と逃げた。
周りのSPやお供の人、ハイドラの全員も(あっ、逃げた。)と思ったに違いない。ザディウスは笑顔で
「そうですね、どちらかと言えば国土交通大臣の案件が多いですから。」と意味深な発言をしたんだ。
隣の席でショウが僕の持つ優秀なAI、アーク様と勝手にクチバシフードの中から小さく話す。
「アーク、盗聴は?」
「あります。ですがご安心を、ジャミング済です。」
「助かる。これからの予定を確認したい。」
「わかりました。カガミさんへも聞こえるようにイヤホンをマルチリンクしておきます。」
「OK。」もう初めから聞いてたけどね。
「恐らく空港から高速鉄道で移動後のバスでしょうか?目的地が正しければ、もうまもなく到着しそうです。」
とイヤホン越しにアークが言ってくれた。良かったー誰かの香水か整髪料がキツイせいか酔いそうなんだよね
おもむろに動いたスリルから渡されたスマホを見ていたショウは
「あ、アーク。あーマジかぁー。」
「どうされたんですかショウさん?」
「アティウスの奴らがいる可能性ありって情報だ。」
マジか!?やだなぁ。
「面倒ですね、国土譲渡の反対派が武力行使に出る為に雇ったと考えるべきでしょうか?」
「順当にいけばそうだな、国連の皮を被っていても中身はハイドラだ、敵対するアティウス医療財団を日本側に付けて逃げ道を作ったか。」
その時バスが停車した。降りて円を描くようにザディウスを囲み、目の前の建物を見て感慨にふける、紛れもなく日本に帰って来た。その時、ゼロが声を出して全員が警戒態勢となる。
「次に来る車、アティウスの連中だ!」先行視覚で見たのであろうゼロは車から出てくる人物を知っていたのか、はたまた白の正装だけで判断したのかわからないが、言葉通り3人のアティウスメンバーと1人の女の人が降りて来た。
40~50歳くらいだろうか、若くは無いが威厳がある女の人にザディウスは睨みつつも声を掛ける。
「正面から戦う気か?ズゥ・アティウス。」
ズゥ!こいつが!お、お前が!僕らのハイドラの同胞を!トールズとA2を殺したアティウスのトップかぁ!!!!!!!!!!!!!
瞬間的に怒りが込み上げ、マントの下からホルスターに震える手をかけてボタンを外した時、殺気を消せと言わんばかりにA4が前に出て、僕を静止させる。
「こんにちはハイドラの皆さん。」ズゥは僕らを一瞥してザディウスに向き直る。
「ザディウス・ザリエラ。こんな辺鄙な国で私達が顔を合わすなんてご先祖様も考えてもいなかったでしょうね。」と言い放った。
久しぶりの投稿で緊張します。
ゆっくり進めていきますので面白ければお友達へ拡散願います。




