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イチゴサイダー  作者: 南野 東風也
第四章
168/264

168.入教期③ ショウ

「お前、声が出せないんだな?」


そうか。そうだよな。


超聴覚の持ち主だ。鼻っから嘘を付く必要のない、ごまかしの効かない相手。


今更焦って取り繕っても何の意味もない、まるで大雨の中、急いでさした傘は骨組みだけしかなくって空を見上げ濡れている自分を俯瞰して自分自身であざ笑ってしまう、そんな気持ちだった。


だが、相手に嫌味や敵意は無く、スマホを返してくれるフォースを見て僕は腹をくくり、手を伸ばしながら近づく。手渡された瞬間アークが話し出した。


「カガミさん申し訳ありません、カガミさんの寝ている姿が異常だったのでとっさの判断でオクトカムを解除しました。」


あぁメンタルギア・ソリッドってゲームで出てくる光学迷彩のマントのアイテム、【オクトカム】ね。

この場合、偽造解除って意味かな?


僕はフォースに向けて話したい言葉を今しがた受け取ったスマホに入力した。




「あぁ、A4にやられたヘルサイが喉から口にかけて貫いてた。僕は、あの日から、()()()()()()()。」と。





アークは隠す必要が無くなったのをいい事に、

僕に許可を求める文面で聞いてきた。


〔彼にI-AMS つまり私の存在を開示して、カガミさんの生存率を上げる協力を仰ぐのはいかがでしょうか?〕


この選択はベストか?その彼のペアがA4なんだぞ。


アークの提案を考えている最中でフォースはスマホを疑問視して

「少し、いいか?お前と話したい事がたくさんある。」

と言って僕の部屋のベッドに腰を掛けだした。僕も近くの椅子に座り落ち着きを取り戻す。



「まず、それは何だ?」鋭い眼光がアッシュグレイの髪から覗いている。


僕はアークに【OK】とだけ入力してアークの会話が始まった。


「初めまして。私の名はアーク。 商品名 インタラクティブ アーカイブ メモリーシステム

 人工知能を(ゆう)し持ち主の記憶、記録を保管、保持及び提案する事を目的に作られた国産でスマートフォンを媒体とするスーパーコンピューターです。」


「へー。機械だからウソかどうかわかる気がしないなぁ。本当か?悪いが脈を見させてもらう。」そう言って僕の手首の動脈に触れ事の真偽を確認しているようだった。


「で、何でそんな大層な物を持ってハイドラに?一度ハイドラに回収された後、中身を検閲されたはずなんだが。」


「私が話しても?」と言うアークの言葉に僕は頷く。


「カガミさんは遺伝子研究所で働いていた施設長のご子息です。

我々のはじき出した計算結果ではいずれ世界に巻き起こる人類の文明崩壊に備え、ご自身が亡き後も安全な道を指南してもらえるようにと、私を残したのだと()()()()()


自分で言うのもなんですがそれなりに優秀なAIを積んでいるのでハイドラの検閲に偽装で掻い潜る事は容易でした。」


「思う?機械なのに明確な目的がないのか?一番重要なプログラムは何だ?!最優先のタスクは!?」


それについて僕も気になっていた。アークは

「その項目について、私自身、条件を満たさないと確認すらできない状況です。」


そうなのか?いつも条件を満たして閲覧できる父さんからの【ファイル】はアークですら僕が条件を満たさないと、見る事が出来ないのか??


「そうか、不思議な設定にしたもんだな。何の意味があるんだ。まぁいい、次の質問だ。


なんでヘルサイから生還できた?俺はお前を水から引き揚げた後、ワシントン島にいたバイヤーに託したが、正直死んだと思っていた。」


なんだって!!フォースが助けてくれたのか?


「フォースさん、カガミさんを助けて下さったんですね。やはり信用して良かった。本当にありがとうございます!ハラさんと【ママ】と呼ばれている人が助けてくれたとてっきり勘違いをしてしまいました。」アークが僕の代わりにお礼を述べて続けて僕もアークに感謝を伝えてもらう。


「カガミさんも命を救ってくれて感謝するとおしゃっています。私がカガミさんの元に届けられたのはあなたのおかげですか?」


「いやそれはバイヤーだ。翻訳機能ぐらいないと生き残れても子供には厳しいとか言ってたけど、俺は今日明日にでも死ぬと思っていたから、そんな未来の事なんか見据えていなかった。


その様子だともうママには会ったのか?」



僕は首を振った。付け加えてアークが

「私たちは名前だけしか知りません。どなたかの母親ですか?」と聞くと。



「そうか。彼女はアイドラの責任者だ。アイドラの教会も運営している。無礼の無いように先に注意しようと思ったが、その様子だと対立はしないだろう。色々と厄介事が多い方だ、迷惑だけはかけるなよ。」そう言って軽く睨んできた。


あんまりきつく言わないでよ!迷惑かけるフラグになっちゃうじゃん!!



「そうですか、では話を戻しましょう。カガミさんが生き残れた理由ですが、一年半前の夏祭りであなた達ハイドラが奇襲をしてきた時、ヘルサイを受けた少年を覚えていますか?」


「あぁ、同郷だ忘れる訳無い。少ない時間だったが別れは済ます事ができたか?」


フォース、そうか、夜明けまで時間をくれたのは温情だったんだな。



「彼の死ぬ間際、あなた達の拉致対象である 佐井寺 ネネ様がポリミキシンBとよく似たヘルサイの毒に対する薬剤、いえ、それの上位互換のホルモンを産生しました。


その後、彼は助かり、カガミさんも一緒にその場にいてそのホルモンの恩恵に(あずか)った。というのが 一番有力な説です。」


「そうか、助かったのか・・・()()()()。だがなぜ影武者のおまえがホルモン産生できるんだ?」


彼は間違いなく()()()()と言った。

その嘘偽りない表情と声のトーンから僕はこいつを信用しようと思った。

ホルモンを産生できる時点で嘘は付かない方が良いだろう。


アークに入力文を発語してもらう。


「改めて、自己紹介をしよう。

僕がイチゴサイダーの天道 カガミ だ。」


握手をする為に手を出すとフォースは

ほんの僅かに驚いたような感じですぐ真剣なまなざしになり僕を見つめ返してきてこう言った。














「俺はショウ















桃山 ショウだ。」

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