前進のノーツ
サブタイトル、まあとりあえずこれで行こう!
翌日の朝、乃亜と真依はいつものように待ち合わせ、学校へと向かう。
「乃亜ー、おっはよー!」
「おはよー。いつにも増して元気だね。昨日あのあといいことあったの?」
「おっ、分かる?まぁ今夜のお楽しみ!って言いたいんだど、明日からテストなんだよね……。今回こそは良い点取らないとゲーム禁止されそう……」
「じゃあまた分からないところ教えるよ。」
「ありがとう!乃亜!」
乃亜のテスト成績は学年の誰もが認めるトップである。特に古典と歴史の二教科については教師よりも知識が豊富である上に、教え方も上手い。過去に一度、自習の時間でクラスメイト全員に古典を教え、クラス平均点を90点台まで上げたこともある。
「んー、あれ?けどテスト範囲どこだっけ?」
「ホントよくそれで点取れるよね……。人によってはそれ本気で妬むよ。」
乃亜ははっきり言って天才タイプである。授業中は趣味の読書に費やし、それ以外の時間もほとんど勉強しない。唯一の勉強は年度初めの教科書等の配布の時間、授業中の追加資料の配布時にそれらを読むだけである。
「そんなこと言われても……」
「まぁそんな乃亜に教えてもらってるおかげで、私もなんとか成績を維持できるから助かってるんだけどね!っと、忘れるところだった。はい、これ。」
そう言って真依は乃亜に一冊の手帳サイズのノートを渡す。
「なにこれ?」
「World Notesの基本、乃亜ならすぐ覚えられるでしょ?」
「うん!ありがとう!」
知らないことを知るということ自体が新鮮な感覚の乃亜の目はキラキラと輝いていた。
それから数分も経たない内に学校に到着する。乃亜たちの通う学校では、テスト前日は完全に自由である。休み時間、勉強時間は各々が決め、翌日のテストに挑む。しかし、乃亜のクラスだけは通常通りの時間割で過ごす。1時間につき1教科、計6教科を乃亜が教えるためである。そのためテスト前日の乃亜の疲労はピークになる。
「ふぅ、疲れた……」
「お疲れさん。というか、このあと私の分もって大丈夫なの?」
「そう思うなら少しは勉強してください……」
「うっ、それ言われるとなにも言い返せない……」
「ん?というか真依もこのクラスで受ければよかったんじゃ……」
「あっ。」
しばらくの間会話が止まる。2人とも、何故こんな単純なことに気がつかなかったのだろうと呆然とする。
「帰ろっか。」
「うん。」
過ぎたことは仕方ないと、2人は帰路についた。
その日の夜、乃亜は教えられる限りのことを真依に教える。
「これで最後っと。できた!確認お願いします。」
「間違いは……。なさそう。」
「よっし!本当にありがとう、乃亜ー。めっちゃ助かった!」
「ただ油断はしないでね。あと今日は早く寝るんだよ。」
「分かってるってー。それに疲れ果ててもうなにもやる気ないよ。ってことでおやすみー!」
「うん、おやすみ。」
通話を終えると乃亜は、今朝真依に渡されたノートをパラパラと黙読する。そこに書かれていたのはノーツの種類とその特徴、モンスターなどによる妨害ついて、装備やスキルについてなど、World Notesについての基本的な情報である。
「な、なるほど。これ私にできるのかな……。でも考え過ぎても仕方ないし、今日は寝てテストに集中しよう。」
乃亜はベッドに横になり目を瞑ると、すぐに眠りについた。
次の日から3日間、ほとんどの生徒にとっては地獄となる中間テストが行われた。
「よし、終わったー!これでゲームに集中できる!」
「うーん、それはいいんだけどなんでカミナはそんなに姿変わってるの?」
久しぶりに見たカミナは白銀の防具を身につけ、後ろにはかなりの大きさの剣を背負っていた。
「ん?あぁこれ?ふっふっふー。これが前に言った嬉しいことです!あのあとダンジョンひとつ攻略したの!それでヲノにも……。」
「え?こんなにいいの?」
フレンド機能の一つであるギフトを使って贈られたのはポイント、現実世界でいうお金である。
「うん。それでも結構使った後の残りになっちゃって悪いんだけど……」
「全然そんなことないよ。ありがとう!」
「よし、それじゃあヲノの装備とスキルを見にいこう!」
「あれ?けど装備とかを売ってる店ってまだ無いんだよね?」
「と思ってたんだけど、さっき確認したらあるっぽいんだよね。ただこの街じゃなくてこっから西に行ったところの街らしいから、しばらくは歩くことになるけど。」
「私は少しでも練習したいから、歩くのはいいかも。」
「おっけー、じゃあ行こうか!」
2人は草原に広がるノーツを処理しながら西の街へと向かう。
乃亜が教えることになったきっかけは古典の件です。(古典の件はクラス全員から本気で頼まれて。)いよいよ次回から本格的に話が進んで行きます。