最初のノーツ
この1ヶ月は平日の投稿も少しは増やせそうです!
「そういえばこのゲームってどんなゲームなの?」
ヲノはずっと感じていた疑問を口に出す。
「どんなってリズムゲームだけど……」
「それはそうなんだけど、リズムゲームってこう…専用の機械が並んでるでしょ?それをVRでやるってどういう風になるんだろうって。」
「あー、そういうことね!この世界ではこういう街を除く場所ではノーツが浮かんでたり設置されてたりするから、それをその空間に流れてる音楽に合わせて処理するんだよ。」
「えっと……ごめん。ノーツ?ってなに?」
「んー。説明難しいなぁ。楽譜で言う音符って言えば分かる?」
「あっ、あのタイミングよく叩くやつってこと?」
「そうそう!ただそのノーツにも種類があるからそこら辺はやって覚えてくしかないかなー。おっ、そろそろ街から出るみたいだから実物が現れるよ!」
カミナの言葉通り、街を抜けた草原には緩やかな曲調の音楽が流れ、ノーツと呼ばれるものが宙に浮いていた。
「まずは私がお手本見せるから!」
「うん。頑張って。」
カミナはスタスタと歩きながらそれらのノーツに軽く触れる。その瞬間、触れられたノーツはシャンッと音を鳴らし消える。そしてその動きを繰り返す。
「おーい、ヲノー!試しにやってみなー!」
数十メートルくらい進んだところでカミナは、ヲノにも試すように促す。ヲノは静かにうなずき、足を出す。
「えっと、こうかな。」
カミナがやっていたようにヲノも宙に浮かぶノーツに手を伸ばす。そしてノーツに触れる直前、ヲノの手は軽く反発を受けたように弾かれる。
「え?」
「ヲノー!音楽のリズムに合わせてタップするんだよー!」
「リズムに合わせて……。1、2、3、4、1、2、3、4、今!」
ヲノは音楽に耳をすませ、リズムを取り、タイミングよくノーツに触れる。するとそのノーツはシャンッと音を立てて消えた。
「で、できた…!」
「うんうん!その感じ!」
「でもすごいねカミナ。パッと見簡単そうだったのに実際にやると1つだけでもすごく難しい……。」
「まぁこればっかりは慣れかな。あとこの世界だったらスキルとか装備とかに頼るのも手だけど。」
「リズムゲームで…装備?」
通常、リズムゲームに装備といったものはない。タッチペンやバチなどの小道具なら使うものもあるが、この世界での装備は剣や弓といった本格的なものである。それが必要になるリズムゲームがそうそうないことは、ヲノでも分かることである。
「まぁその辺は追々かな。とりあえず今日はこの辺のやつを完璧にしよう!」
「うん、頑張る。」
それから練習に練習を重ね、軽やかではないものの、正確な処理まではできるようになった。
「うん!だいぶ慣れてきたね!」
「けど、もうヘトヘト……」
「じゃあ今日はお開きにする?趣味なんだし、コン詰めすぎてもよくないしね!」
「うん、そうするー。ってあれ?どうやって戻ればいいんだろう?」
「メニュー開いて、右上のログアウトボタンから落ちれるよ。」
「これかな。ありがとう。じゃあまた明日ー。」
「うん!また明日ね!」
カミナはログアウトし、現実世界へと意識を戻す。
「ん、んー!楽しかったー。けど疲れた……」
仮想世界での活動は慣れれば現実への負担は無いに等しいが、慣れないうちはかなりの負担になる。それに加えてゲーム自体が初めての乃亜は、疲れ果ててそのまま横になるとすぐに眠りについた。
一方その頃、World Notesの世界のある地点では、乃亜には考えられないような光景が広がっていた。
「おいおい、誰だよあの白髪。」
「チート?いや今日出たばっかでそんなことできるか……?」
「けど実力にしては……」
「まさかあいつ、カミナ……?」
「えっ、カミナってあの?」
街中のプレイヤーたちがモニター越しに見ている光景は、カミナが1人でダンジョン1つを攻略しているところだった。この世界ではダンジョンと呼ばれるものがあり、それらが攻略されるとその映像が街のモニターにて放送されるようになっている。ただ問題だったのはそのダンジョンである。それはβテスト経験者の間で1人では絶対に攻略不可能とまで称されたダンジョンだったのだ。モンスターや罠による妨害、トラップノーツと呼ばれる処理してはいけないノーツ。それらを全て見切り、通常のノーツをひとつ残らず処理する。その様子はとても人がプレイしているとは思えないものだった。
「さて、これで報酬はっと。おっ、結構ある!これならヲノの分も充分に援助できそうかな!じゃあ今日は落ちよっと。」
ダンジョンを攻略したカミナは、街に戻ったあとで報酬を確認し、そのままログアウトすした。
カミナは決してチーターではありません。本当にただただ上手いだけの神です。それにしても本当にサブタイトルがしっくりこない…