正体のノーツ
まさか、まさか、まさか。
「へぇ、そんなプレイヤーがいたんだ。」
「うん。」
2日目の仕事を終わらせゲームにログインしたヲノは、カミナとルインに昨日のプレイヤーについて話す。
「まぁヲノが怪しいって思うのは分かるけどその人が言うことも合っておるな。」
「え?そうなの?」
「本来なら我とカミナ、フリーネがずば抜けて目立つ記録じゃが……」
「ヲノの記録はそれを超えてるとか、そういう次元の話じゃないからね。一部では神プレイヤーって呼ばれてるし。だからこそここで勝とうとしてる人からしてみれば、ヲノがどういうプレイをするのかを知っておきたくなるってわけ。」
「それを参考にするの?」
「まぁそれもあるけど1番は妨害とかノーツの先取り、もしくは横取りとかかな。」
「そ、そうなんだ……」
「まぁ今のヲノであればプレイスタイルが決まってない分、逆に知られづらいとも取れるがな。」
「じゃあプレイスタイルは決めない方が良かったりするの?」
「まぁ次までは大丈夫かな。ここの運営がどういうイベントを出すかは分からないけど、ヲノの妨害に回るプレイヤーが増えるなら人数差が多少減ることになるから。そうすれば私たちがその分多く稼ぐしね!」
「ただある程度のベースはなるべく早く決めておいた方がよいぞ。次のイベントが終わってからあせることになるからの。」
「確かに……。じゃあ今まで通り考えておくね。」
それからヲノたちはほぼ同時にログインしたフリーネ、ハヤメと合流し、ヲノとハヤメはダンジョン攻略、残りの3人はハヤメにプレゼントする装備やスキルの探索を始める。
「ハヤメはどういう風にプレイするーみたいなのって決まってるの?」
「えっと……、あまり派手じゃないやつ……」
「派手じゃないやつ、ルインみたいな感じかな。」
「ヲノは……?」
「私はまだ決まってないんだよねー。いまいちこういうのが好きとかないから。」
「ふーん、まだ迷ってるの。」
「あっ、昨日の……。どうしてまた……」
聞き覚えのあるその声は、先程までカミナたちとの話題になっていたプレイヤーである。だが、それよりもその直後言葉が、ヲノに更に衝撃を与える。
「お姉ちゃん……」
「え?えー!?」
「なんだハヤメ、話してないの?」
「うん……」
「道理で反応がなんかよそよそしいわけだ。いやー、昨日は悪かった。てっきりもう話されてると思ってたからな。改めて、ハヤメの姉のシズク。よろしく!」
「よ、よろしくお願いします。」
「お姉ちゃん、どうしてここに……?勉強は……?」
「ぐっ、その言葉を言わないでくれ、妹よ!私は逃げてきたのだよ……」
「ちゃんとやらないとお母さんに言うよ……」
ハヤメにしては珍しく強い口調になる。
「シズクさん、勉強ピンチなんですか?」
「あぁ、今年で高校受験だからね。勉強しなきゃなんだけど……。もう嫌だ!疲れた!息抜きがしたい!」
「もしよかったら少し勉強教えましょうか?私一応学校では成績いいので……」
「え!?いいの!?じゃあ早速だけど……」
「お姉ちゃん!」
「わ、分かったよぉ。」
シズクは落ち込みながらゲームからログアウトする。
「い、いいの?」
「はい。あとお姉ちゃんについては甘やかさないでください。本当はやればできるのにやらないだけなので。」
「は、はい。分かりました……」
「あっ、すみません……。つい強くなっちゃって……」
「う、ううん。それだけお姉ちゃん想いってことだから。それはいいことだと思うよ。」
「……、ありがとう……」
静かに照れるハヤメを見て、いつもの調子に戻ったとヲノは安心する。
「じゃあ今日もダンジョン攻略を始めよう。」
「うん……」
一度落ち着いた2人は、前回と同様に多くのダンジョンへの挑戦を続けた。
仲のいい姉妹(兄弟)っていいよなー。




