謎のプレイヤーのノーツ
今回はまぁタイトル通りかな。
ログインしたヲノは、既にログインしていたカミナと合流する。
「今日はどうするの?」
「とりあえずハヤメのために装備とかスキルとかを集めようかなーって。ハヤメに合う合わないは分からないけど、数があれば色々試せるでしょ?」
「もしかして、いろんなダンジョンに挑戦してたのも……?」
「うん。そのため。確率は低いからなかなか集まらないけどね。」
ダンジョンの報酬は基本的にはポイントのみだが、1人目の攻略者に限り、低確率で装備やスキルが手に入ることがある。
「じゃあ私も手伝おうかなって言いたいけど初見でてきるかなぁ。」
「できると思うよー、今のヲノなら。最悪トラップノーツがなければ例の装備でできるだろうし。」
「うーん、できればそれは使いたくないかな。それに慣れるといざというとき困りそうだし。」
「そっか。でもまぁ今のところ難しいやつでも〈星密の教会〉くらいだから本当にできると思うよ。」
「それなら私も手伝ってみようかな。クリアってフルコンボじゃなくてもいいんだよね?」
「もちろん。」
「それじゃあ行ってくるね。」
「いってらっしゃーい。あっ、まだ誰もクリアしてないダンジョンは看板が光ってるからそれで判断してね!」
「うん、ありがとう!」
ヲノは手当たり次第にダンジョンを探す。だが、ヲノはふとあることに気づく。
「そういえば私どこにどんなダンジョンがあるか知らない……」
ネット等を積極的に用いて情報を集めるカミナたちと違い、ヲノは基本的にカミナたちの後を追うようにプレイしている。この世界のダンジョンの数は他のゲームに比べると圧倒的に多いが、経験の浅いヲノがホイホイと見つけられるほどではない。
「どうしよう。街まで戻るのも時間かかるし一旦ログアウトしようかな。」
World Notesではログインする際、前いた場所からスタートするか、最後に立ち寄った街からスタートするかを選択できる。今のヲノのように街までの距離が離れている場合には、ログインし直すことで街まで移動している者も少なくはない。
ガサッ
「ん?」
後ろからの物音にヲノは振り返る。そこには初めて見るプレイヤーがいた。
「こ、こんにちは。」
「……」
「え、あの。」
ヲノは挨拶をするが、そのプレイヤーは何も言わずにその場を去ってしまう。ここまでそっけない対応はリアルでも経験したことのないヲノは、なんとも言えない気持ちで一度ログインし直す。
「カミナは……、いないか。さっきのプレイヤーのこと、聞いてみたかったんだけど……」
ヲノはそれからしばらくの間今後どうするか考え、とりあえずハヤメがいない間は自分のプレイスタイルについて考えることにする。
「今の私なら【刻線界】はなくてもらある程度なら取れるけど、遠いやつとかは【天奏】がないとダメだし。いっそのこと【天奏】で遠距離プレイとかかな。いやでもずっと狙いを定めるのもきついよね……」
「ねぇ。」
「は、はい?」
突然声をかけられたヲノは戸惑いつつ振り返る。そこにいたのは先程見たプレイヤーだった。
「あなたヲノよね?前回イベント個人1位の。」
「一応そうですけど……」
「ふーん。なんか思ってたより普通ね。まぁいいわ。ところでさっきから何やってるの?」
「えっと、実は……」
ヲノは今やっていたことをそのまま話す。
「プレイスタイル……ね。それはあなた自身が決めることだからどうこう言わないけど、あなたもう少し危機感持った方がいいわね。あれだけの成績を出した以上、自分はマークされてると思うことね。あとフレンド申請しておいたから登録しておいて。それじゃあ。」
それだけ言ってそのプレイヤーはまたどこかへと去ってしまう。
「一体なんだったろう、本当に。」
1日が終わる頃には、ヲノの頭はそのプレイヤーに対する疑問でいっぱいになっていた。
謎のプレイヤーは一体なにがしたいんだろう?というか誰なんだろう?




