達成のノーツ
今回、なかなかおかしな、そして強引なやり方をするヲノがいます。
「そういえばハヤメはどうしてゲームをやろうと思ったの?」
「両親からのプレゼント……。ヲノは……?」」
「私はカミナに誘われたんだ。それからカミナに色々教わって、いまこんな感じ。」
ヲノとハヤメは自分たちのレベルアップも兼ねて、ちょうど良い難易度のダンジョンに挑戦し続ける。難易度については事前にカミナたちがチェックして、その中から適切なものを見つけている。
「今日はこれでラストかな?」
「うん……」
その日の最後に選んだダンジョンは〈歪音の祠〉というものである。このダンジョンの最大の特徴は音ズレが常に起きていることである。当然普通にやっていてはリズムが合わず、コンボにはならない。一見ヲノたちには難しいように思えるが、これについても攻略は可能である。その手段についても2人はカミナから指示されている。
「じゃあいくよ。」
「うん……」
開始と同時に曲が始まり、2人は協力しながらノーツを処理する。やはりそれらのノーツは曲とは全く合わず、誰が聞いても遅れていることが分かるようになっている。しかし、ヲノとハヤメは取りこぼすことなく確実にコンボを繋げていく。
「ふう、終わった。」
「本当にできた……」
ヲノが正確なリズムを取った方法は、流れる曲とノーツの生成された場所と順番を覚え、頭の中でそれらが噛み合うように曲をイメージする方法である。これはヲノが常識外の記憶力と正確性、そして情報の整理能力があるからこそ為せる技であり、同じことができる者はそういないだろう。一方でハヤメは今回は一切リズムを取っていない。それはハヤメが獲得したスキル【絶音】である。効果は名前の通り音を絶つ、つまり音が聞こえない状態でプレイするものである。本来は縛りのために使われるスキルだが、今回のように音ズレがひどい場合はリズムゲームの要素を捨てて、タップゲームにした方が記録は出たりする。
「じゃあ今日はもう遅いし終わりにしようか。」
「うん……、おやすみ……」
「おやすみー。」
ヲノはハヤメがログアウトすると、カミナにメッセージを送る。
『終わったよ。今日は私も落ちるね。』
「これでよし。」
『ピロンッ』
「あれ?返信かな?」
ヲノは届いた通知を確認するとそこには、合計処理ノーツ数20261015達成の報酬と書かれていた。
「なんだろう、これ。えっと"天の音"リーダー/ヲノ様へ。ん?リーダーって私……?まぁあとで確認するとして。内容はパーティーメンバー内で処理したノーツの数の合計が20261015達成したからその報酬っと。具体的にはメンバー全員にスキル【引納】をプレゼント。【引納】はノーツの生成箇所をランダムにする代わりにプレイヤー近くに限定するスキル。適用されるのはダンジョンなどの一部のみ、か。うーん、カミナたちに確認したいところだけど明日朝早いんだよね。また今度にしよ。」
ヲノは内容だけ確認するとゲームからログアウトする。ちょうどその頃、カミナたち3人もその報酬を確認していた。
「なるほどー、【引納】かー。これはちょっと微妙かなー。」
「第一印象は使い勝手のいいスキルに思われそうですね。」
「ヲノとハヤメはどうしてるんじゃ?」
「今ちょうどログアウトしたところ。」
「あとで集まって確認した方が良さそうですわね。」
「そうだねー。2人はこれからどうする?」
「一応おぬしに付き合うぞ。もともとハヤメは我とフリーネが連れてきたようなものじゃからな。」
「同じくですわ。」
「じゃあ引き続きよろしくね!」
カミナたちはダンジョンとは別で、ハヤメのためにある企画を進めていた。
ある企画ってなんなんでしょうねえ……




