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第12話:いざ反抗作戦!・幕間

※欠損表現アリなので、若干の注意です。

「只今より、管制区ストラディウム反抗作戦を開始する!」


異歴6月45日。俺、アンダリス。いいや、俺たち全員の待ち望んだ日がついにやって来た。

ストラド自治区を解放するための一大作戦が幕を開ける。


あの日、突然町に見知らぬ騎士がやって来て、全てが変わった。

冒険者で賑わうギルドも、アウフタクトの名品が集う市場も、酒と音楽と踊り子が集う酒場も、全てが消えた。

元傭兵、現バーのマスターだった俺には到底受け入れられなかった。

騎士の恐ろしさに屈した人も多かったが、反旗を翻した俺に賛同してくれる人は居た。


それでも騎士には叶わず、ただ悶々としている日々。


それに、終止符を打つ日が来たんだ。

突然現れた、聖堂教会の高位シスター、圧倒的な魔力を持った少女、

そして悪を討つ伝承を持つ勇者の剣の存在。

これは、最初で最後の希望かもしれない。


「俺の合図で、突撃するぞ、準備は良いな!」

「ああ」「大丈夫だ」「わかった」「「はい」」


レジスタンスの面々の返事は威勢がいい。きっと俺と同じく、気分が高揚してんだろう。

すぐ横には、管制区ストラディウムの堅牢な門扉。

そこには、長年俺らが貯めこんだ爆薬がたっぷりと張り付けられている。

魔導銃が開発されてからというもの火薬は貴重品で集めるのには苦労したが、扉一つ吹っ飛ばすには十分な量だ。


「じゃあ・・・作戦、開始だ!!」


握りしめた連振石に魔力を流し込み、それが赤く光震えるのを確認する。

と同時に、門扉に取り付けた着火装置に魔力を送った。



物陰に隠れていてもわかる爆風が轟き渡り、門の残骸と思われる木片や金属片が飛び散る。

俺らの戦いが始まる。


「行けぇ!!今の俺らは勝てるぞ!!」


「「うぉぉぉ!!」」


あえて大声を出しながら、レジスタンスがなだれこんでいく。

俺らの作戦は陽動。

派手に暴れて、騎士を倒しまくって、本隊の強襲から町に居る騎士の目を逸らす事だ。


つまり、今ここに居る俺らともう一つの陽動部隊でこの広い管制区の全ての騎士を相手にするって事だ。

ああ、やってやろうとも、本隊の女子供に負ける活躍なんて出来ないからな!!

俺は傭兵時代に使っていた大斧を担ぎ、戦場に駆けていく。




管制区に足を踏み入れて、ほんの1分もしないうちに戦闘は始まる。

門に隣接する広場。元々は繁華街か何かだろう。閉店した店の垂れ幕が目立つ。

入り口に騎士が重点的に配置されているのか、それともどこもそんな感じなのかは分からないが、

突入してすぐに4体の騎士と交戦した。


「うおぉりゃああぁぁ!!」


地属性の破砕の力を込めた渾身の斧を振るう。


『っ…この程度か』


簡単な岩すら砕くほどの一撃。

しかし、騎士にそれを叩き込んでも、軽く体勢を崩す程度の威力にしかならない。

俺はこれを一度体験し、絶望しかけた。

だが、この戦いにおいては、その一瞬の隙があれば十分。


「現世に蔓延る魔族に告げます、この契約を棄却し、帰還を命じます」


隠密に優れるアルとベルのどっちかが、その隙をついて反故の宣誓を突きつける。


『貴様っ!?なぜそれを!!』


少し体勢を崩した。

たったそれだけで騎士が、その宣誓を受け黒い煙と化し、鎧だけを残し消え去る。

あれだけ苦戦した騎士が、あっけなく倒される。

少し、空しい気分もするが、結局は敵だ。軽く倒せるに越したことはない。


「助かった」

「いえ、これが私の仕事ですので」


声で分かった。こいつはベルか。

感謝を告げると、ベルはすぐさま他に騎士と交戦している場所へと駆けていく。

どういう魔法を使ってるのかは知らんが、あの二人は本当に気配が感じ取れない。

それが役立ってはいるんだがな。


さて、この騒ぎを聞きつけて、他の場所からも騎士が集まりつつある。

俺も休んじゃいられねぇ、老体に鞭打って、この戦いだけでも切り抜けてやるさ。





--------------------------------------------




戦闘が始まって10分。

もう何体の騎士を殺ったかは分からないけど、広場の奥からぞろぞろと騎士が駆けてくる光景を見続けて行く。

最初はアタシらが優勢だったけど、騎士たちもバカじゃないみたいだね。

アタシらが騎士を一発で返す能力を持つと知ってから、露骨に牽制的な戦いをするようになった。


「アリッサ、大丈夫か?」


氷魔法で騎士を足止めしながらバークレイの奴が心配してくる。

アンタの方がひ弱なんだから、心配するタマじゃないだろうに。


「アタシは大丈夫だよ、寧ろアンタほうが大変なんじゃないかい?」

「はは、言ってくれるね」


そういうバークレイのヤツはさっきからバンバン魔法を使いまくってる。

アタシはあんまり魔法に詳しくはないが、あれじゃいつか尽きるんじゃないか?


とはいえだ。アタシもアタシで接近戦がメインだから、距離を取って戦ってくる今の騎士どもはやりにくいったらありゃしない。

極東の地、ガカクに伝わる太刀と呼ばれる片刃剣は攻めには有利だが、あまり防御には適さない。

騎士共があの黒い衝撃波を撃つたびに、アタシは剣に魔力を宿して切り払う必要がある。

これが結構体力と魔力を消耗するんだ。


「ああ、じゃあ一つ賭けしないか?」

「賭け?」


どうせならと、アタシはバークレイに一つ話を持ち掛ける。


「アタシの体力が尽きるか、アンタの魔力が尽きるか、どっちが先か勝負しようぜ?」

「お前なぁ・・・」


呆れた顔のバークレイ。

その顔を明日以降も見る為にこうして賭けてんでしょうが。


「実際に騎士を倒すのはアルとベルだ。不確定要素のある賭けはお断りだね」

「あーそうですか!!」


賭けを無しにしてきてた腹いせに、一歩踏み込んで騎士の懐に飛び込む。


「ったく!!」


剣撃を警戒する騎士に思い切り強化魔法を施した蹴りを叩きこんだ。


「現世の魔族よ!!」


そうすれば、その隙を逃すことなくアルが現れ、ペンダントをかざしていく。

全く・・・何が不確定要素のある賭けは嫌いだよ。


この作戦自体、不確定要素の塊じゃあないか。



消え去る騎士を見ながら周りを確認する。

アンダリスのジイさんは、なんか大丈夫そうだな。

昔は傭兵だったって言うし白兵戦はお手の物ってね。


イルフリードも平気そうだ。

アイツは守りに特化してるから、相手の攻撃を受け止めた所をアルとベルが狩っていく戦術がハマってる。


バークレイは相変わらずだ。

魔法をバンバン使って、多数の騎士を同時に相手している。

徹底的に足止めに徹し、アルベルが駆け付けるまでの時間を稼ぐ。

マメなやつだよ。



・・・っと!!


突然接近してきた騎士の剣をいなして、背面に一太刀叩き込んだ。

ちょっと鎧が傷ついた程度の小さなダメージしか入らない。

相変わらずでたらめな鎧だ。


そしてそうしている間にも、辺りには騎士が増えていく。


正直キリの無い戦いだけど、その分、本隊であるユーリト兄弟と、レイフィールさん達が楽になるなら、この苦しさにも意味があるって物。


だったら、意地でも生きて戦い続けないとねぇ!!






--------------------------------------------




騎士が多すぎる。


モールの町だって、数十ヤヤメルト程度の距離間隔でしか騎士は配置されて居ない。

だが、累計ならもう何十という数を消してきた。

町中の騎士を相手にしてるとしても、これは少々多すぎるんじゃないか?

もう片方のレジスタンスもこうなのか?


もはや視界には、街並みより騎士の方が多く映る。

主な攻撃手段は剣である以上、同時に相手にする量はさほど多くは無いが、消しても消してもすぐさま次が来るのは負担が大きい。


俺らの役割で言えばそれでいいんだが、陽動と攪乱、少数精鋭で続けるのには少々キツイ数になりつつある。


『まさか我らが数で押す側になるとはな』

『何、ここで押しつぶせば後はどうとでもなろう』


あれだけの戦闘力を持つ連中が、数で押す側に回れる時点で十分恐ろしいっての。


「一体何体いるんだ!?」


迫りくる騎士を氷漬けにして足を止める。

ほんの数秒でそれは破られてしまうが、破られる前に再度放つことで時間稼ぎを延長できる。

そこをあの双子に倒してもらう事で、俺の周りは鎧の残骸を固めた氷の壁が生成されていく。

幸いあの鎧は存分に強固なようで、騎士の黒い衝撃波や、大剣の一撃をある程度防ぐことは出来る。


この鎧は、金属と植物で作られていることが分かったが、正体を掴むまではいかず、この鎧を着て反抗作戦を行う事は叶わなかった。

呪われたり、乗っ取られたくはないからね。



しかし、魔力の残存量も中々危うくなってきたな。


バークレイさんも、イルフリードさんも、アリッサも十分戦ってる。

ここは一度引いて魔力を回復させるか・・・


あいつの賭けに負ける事になるのは癪だけど、その分多くの相手をしてるんだからいいよな?


そう思った矢先、あの双子の声がする。


「準備完了しました」「皆さん準備を!」


でかしたナイスタイミング!!

その声を聞くと同時に、俺は残る魔力の大半を込めて、炎の力で散らばった鎧の残骸や大剣を周囲に吹き散らす。

子供だましの目くらましみたいな技だけど、鎧の硬さや剣の鋭さを加味すれば、騎士とて対応せざるを得ない威力にはなるだろう。

その爆炎や飛び交う残骸を牽制にし、アリッサ達も一時撤退し入口に戻ってくる。

俺も残った体力を使い切る勢いで入口に転がり込んだ。


「よし、全員戻ったな!」


アンダリスさんが軽く息を切らしながら戻ってくる。

既に斧がひしゃげていてあまり長くは持ちそうにない。

見れば、イルフリードさんの盾もボコボコだし、アリッサも剣こそ無事だが当人は辛そうだ。


そう言う意味では本当にナイスタイミングだ。


「「では、起動します」」


アルとベルは元々どこかの諜報員らしい。

どうも今は何か本部でトラブってるらしいが、その辺詳しくは知らないな。

ともかく、何かをこっそり仕込むのは大得意で、今回もそう言う事をしている。


町の入口にある広場には、それを埋め尽くすほどの騎士が居て、こちらにゆっくりと向かってくる。

それに対してアルとベルが手を繋いで、お互いの空いた両手にそれぞれ奇妙な色の魔力が光る。


「時間固定」「魔力拡散」

「「秘大魔法を展開します」」


普通人間の魔力は個々に違っていて、他人の魔法は使えないものだが、双子の中にはたまに全く同じ魔力を持っていて、魔力を共有できる奴が居るらしい。

アルとベルがそれらしく、準備時間があれば大規模な魔法が使えると聞いた。

魔導士の俺としては羨ましい限りだ。


「「リアクト・ストップッ!!」」


寸分違わないタイミングで同時に呪文を唱えると、

広場全体に魔方陣のような光の線が走り、そして、


『むん!?』『これはっ!?』


向ってきた騎士が、まるで時間でも止まったかのように静止する。

いいや、実際に時間が止まってる。

広場に広がる土煙、俺が飛ばした鎧の破片も止まっている。


時間停止魔法か。

時属性魔法の一つ。

この規模で止められるのは双子だからか。


ただ、止めたからなんだって言うのはある。世の中には相手の時間を止めてその隙に暗殺する戦法もあるらしいが、物理的に倒せない相手かつ、いちいちあのペンダントで宣言して消し去って行くやり方じゃあ時間停止が持たない。

でも、あの双子の事だ。

何かは考えてるんだろう。


そしてそれはおそらく的中し、双子は時間の停止した空間に向かって、並んで歩いて行く。


「炎の力を以て」「この力拡散せよ」


双子の詠唱と同時に、空間が燃え上がる。


「この宣誓が届くすべての魔族に告げます」

「この契約は破棄されました」

「「速やかに魔界へと帰還せよ!!」」


燃え上がる炎が吹き散らされるように空間全体に広がり消えていく。

俺も魔法にはある程度精通してる。

きっとあれは、炎属性の拡散の特性でペンダントの宣誓を全範囲に拡散させてるんだろう。

実際にそんな事できるのかは知らないが、失敗が許されない任務を繰り返して来た双子の事だ。勝算はあるんだろうとは踏んでる。


俺は、その光景を身体の疲労を労わりつつ、座って見ていた。



--------------------------------------------



アルとベルが、何やら規模の大きい魔法を使ってる。

アタシには何が起きてんのかは分からないけど、二人が唱えた瞬間、辺りに居た騎士が皆動きを止めて、

次の瞬間には燃やし尽くされていた。


あの二人、諜報がメインだったはずだけど、こんな威力の魔法使えたのか・・・?


真っ赤に燃える広場が元に戻ると、

そこにいた大量の騎士が全員、ガラガラと崩れてく。

最初からそうすればよかった、なんて野暮な事は言わないよ。

元々長い準備が必要だって事は知ってたからね。

でもこれほどとは思わなかった。


とはいえそのおかげで、広場の騎士は一掃した。

増援もすぐには来る気配は無い。

もう片方のレジスタンスがどうしてるかは分からないけど、こっちはひとまず任務の第一段階は終わりだね。

後は、一旦体制を立て直して、城の方へと進軍する。


軋む身体を舌打ちしながら太刀を納刀する。

相棒とも言えるこの業物は、数多の鎧や剣と打ち合おうとも、一重の歪みすらなくスムーズに鞘へと吸い込まれて行く。

はぁ、まだアタシはこの剣の領域には達してないね。


この賭けはアタシの負けだよ。

アタシから持ち掛けた賭けの癖にカッコ悪いね。

そう思いながら、余裕そうに座っているバークレイを見る。


そして、そこでアタシは見てしまった。

その後ろにある建物の路地裏からゆっくりと接近してくる騎士の姿が。


伏兵!?

いや、回り込みか!?


どっちでもいい!


バークレイは気が付いてない。

魔法に疎くないアタシでもわかる。

あの距離ならあいつもすぐには対応できない。

だったらアタシが!!


動かない体に鞭打って、アタシは太刀を抜く暇すら惜しみ走り出した。

抜刀術なんかやったこたぁ無いけど、やってやる!!


「バークレイッッッッッ!!」



--------------------------------------------


崩れ行く騎士の大軍を眺めならふぅと軽く息を吐く。

全てが終わった訳じゃあないが、十分仕事は出来ただろ。


タバコは・・・吸いたい所ではあるけど今こんなところで吸い始めたらアリッサがぶち切れるだろうなぁ


でも、アンダリスさんもイルフリードさんも余裕そうな顔だし、ちょっとくらい良いんじゃねぇかな。

なんて思ってたら、


「バークレイッッッッッ!!」


アリッサがとんでもない形相でこっちに走ってくる。

おいおいおい、まだタバコは吸おうかなって考えただけだぞ?


・・・いや、待て

そんなレベルの形相じゃない・・・?


「お、おい、アリッサ、何を」


アリッサを制止しようとしたが、アリッサはそんな俺には目もくれず、

俺のすぐ横を通り抜けるように飛び込んできて、


ズシャリ、



と、鈍い音がする。


「アリッサ!?」


振り向いた俺の顔に、何かがぶつかる。


「・・・ッ・・・!」


目の前にあるのは、


大剣を振り下ろす黒騎士と、

それをその身で受け止めたアリッサの姿。


「な・・・っ!」


ぶつかって来た何かは俺にぶつかった後、地面に落ちている。

それは、

刀の鞘を握るアリッサの左腕だ。


「お前・・・!」

「・・・ふっ、貸し、ひとつな」


苦痛に歪んだ顔で、そんな余裕そうなセリフ吐かれても、説得力なんてありゃしない。

事実、その左肩から先には何もなく、真紅の血が滝のように溢れだしている。


クソッ、俺の油断でアリッサが!!


俺は、休憩して回復した魔力の全てを右手に込めて、騎士に叩きつける。


「お前ぇぇぇぇ!!」


超至近距離で爆炎を浴びた騎士は、よろめきながら半歩後退する。

畜生、これっぽっちしか抵抗できないのか・・・!!


ただ、それでよろめき倒れるアリッサを受け止める時間だけは稼いだ。


流石にこんな騒動を起こせば、他の連中も嗅ぎつける。

体勢を立て直し、第二撃を放とうとした騎士にイルフリードさんが盾を構え突進し騎士を推し留め、

その隙に双子の片割れが騎士を消し去った。


だが、



だが叩き切られたアリッサの腕は戻らない。

このレジスタンスに、切断された腕を治せるほどの回復魔法の使い手は居ないんだ。


「・・・クソぉ、しくじっちまった」

「アリッサ・・・」


受け止めた腕の中で、

傷口を抑えて呻くアリッサ。


「アリッサ、俺なんかをかばうなんて・・・」

「何言ってんだよ・・・バークレイ・・・、アンタの実力を一番知ってんのはアタシだっての」

「だからって」

「本当は・・・腕一本くれてやる気なんてサラサラ無かったよ・・・抜刀術、イケると思ったんだけどなぁ」

「そうか・・・でも、ありがとな」

「おぉう、まさかアンタの口から感謝の言葉が出るなんてな・・・」

「いや、そんな感謝しないキャラじゃないぞ俺・・・」


ったく。

向こう見ずな性格は相変わらずか。


傷口からはとめどなく血が溢れ出てくる。

一応応急処置の包帯や薬草は持って来てるけど、これじゃあ手遅れになるかもしれない。

それを何とかするなら・・・あるいは・・・


「なあ、アリッサ」

「・・・な、なんだい」

「俺はお前を生かしたい」

「あ、あぁ・・・」

「だが、このまま放っておけば確率は五分五分だ」

「・・・早く結論を言って、アタシはそういうの苦手だからさ」


ヘッ、と軽くはにかむアリッサ。

だが苦痛の気配は消えていない。


「腕を諦めるのなら、その確率を上げられる。だが、独断では出来ない」

「・・・そっか」


アリッサは、一瞬穏やかな表情をする。

それは安堵か、諦めか、俺には想像は付かない。


「ふっ・・・アタシは意地汚い女だからね。腕一本失ったって・・・生きて見せるさ」

「・・・わかった」


アリッサの息は荒くなっていく。

でも、その答えを聞いて俺は少し安心する。

こんな状況でも、アリッサの性根は変わってない事に。


俺はアリッサの傷口に手をかざし、まだカスカスの魔力を復活するなり注ぎ込んでいく。


「少し痛むが、我慢しろよ」

「それは・・・騎士に斬られた時よりか?」

「・・・さぁな」

「・・・っ!!」


傷口は、俺の魔力によって少しずつ凍ってゆく。

凍傷とは違う、純粋な氷の魔法による、停止の具現。

ごくごくシンプルな止血手段だが、時は流れるから元には戻らない。


・・・アルとベルは大魔法で時間停止はしばらく使えないし、残りの二人には応急処置手段はない。


すまんなアリッサ。


俺には、これしか無いんだ。

犠牲者は無かったが、犠牲は出ちまった。


さて、これからの事を考えなきゃな。

命は救えたとは言え、戦力のダウンは避けられない。

そう思い、次の作戦目標の城を見る。


丁度その時、城の屋根から、光の柱が立ち上るのを見た。

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