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第1話:二つの世界とわたしのはなし・Ⅲ


私は、別の世界に来てしまったのかもしれない。


幸い、日本語は通じるし、私の話を聞いてくれる人とも会えたし、

野宿とかする羽目に遭わなかったのは幸運だったと思う。


・・・でも、わかったのはそれだけ、帰る方法は、わからない。





「貴女が知っている料理とは違うかもしれないけど、そこは我慢してね。ごめんね」

マリナさんが夕食を作りながら言う。

美味しそうな香りが漂ってくる。



料理は家庭科の授業でお味噌汁を作ったことがある程度だし、マリナさんの言う通り、私はこちらの料理を知らないので、

ただ待っているしかなかった。




今日、会ったばかりの赤の他人に夕食を振舞ってもらうなんて、申し訳ない事この上ない。





私はさっきの応接間から、キッチンと隣接しているリビングへと案内されていた。

そこには一人掛けの椅子が8つと大きなテーブルが一つ部屋の真ん中に置いてある。

壁際は、本棚やソファ、暖炉に十字架など、様々な家具が部屋を取り囲んでいる。



テーブルを囲む椅子の一つに座って待っていると、





「「ただいまー」」

と奥の方で扉を開ける音と二人の声がした。


「あら、おかえりなさーい」

それにマリナさんは普通に受け答えしている。知ってる人かな?

「えっと・・・その」

誰なんだろう。この家に住んでいる人は、マリナさんだけじゃなかったんだ。


「前に言った、身元不明の子供たちよ。学校に通わせてあげてるの」

別の世界に来てしまったかもという衝撃であまり記憶に残ってなかったけど、そういえばそんな事も言っていた気がする。



それを思い出した直後、部屋に二人の小さな子が飛び込んできた。

男の子と女の子。二人とも小学生くらいかな?同じくらいの年齢だと思う。



「あれ?お姉ちゃん誰?」

私を見るなりそう聞いてくる。

多分誰だってそう聞いてくると思う。

私は、完全に部外者なのだから。


なんて説明しようか考えていると、

「その子はユイちゃんよ。今日から皆のお仲間になるの」

「え?ちょっとマリナさん?」

今日は泊めてくれるとは言っていたけど、明日以降のことはなにも聞いてないよ?


「へー、よろしくねユイお姉ちゃん」

でもどうやら私以外の皆はそうゆう認識になってしまったらしく・・・

「よ、よろしく・・・・」

子供たちの無垢な笑顔にそう答えるしか無かった。



因みにその子供たちは、男の子の方がケリー、

女の子の方がアンナ、と言うらしい。









夕食時。


食卓には、もう一人、見慣れない人がいた。

マリナさんと同じ修道服を着ている。


「あ、マリナさん、また拾って来たね?」


その人は、私を見つけるなり、そうマリナさんに話しかけた。

「あ、ユイちゃんの事?その子、ここに自力でやってきた子よ、いつもの迷い子とは違って、ちょっと特殊なケースみたい」


「ふぅん・・・私はカレン・ベーニャよ。よろしくね・・・えっと、ユイちゃんだっけ?」

その人は、私を見て、そう自己紹介をした。

カレンさんかぁ・・・やっぱりここにいる人みんな外国人みたいな名前だ・・・


「あ、はい。よろしくお願いします・・・」


「カレンさんも、この教会を切り盛りしてるシスターの一人よ」

夕食の配膳をしながら、マリナさんが捕捉を入れる。


「ま、あたしは専ら教会の仕事専門で、家事はマリナさんにまかせっきりだけどね」









テーブルには、白いクリーム状のスープに、色とりどりの野菜や肉が入った料理が並んでいる。


「これ、シチューって言うんだけど、口に合うかしら」

出された料理は、見たことのない不思議料理ではなく、見慣れた料理だった。

ちょっと、いいや、かなり安心する。


「あ、これ、私も知ってます」

「そうなの?って事は安心ね。実は味覚が全然違うとかだったらどうしようって思ってたの」

マリナさんが安堵の表情で胸をなでおろしている。


さて、実際の味はどうだろうか・・・

これで、滅茶苦茶辛いとかだったら、危ない。


「いただきます・・・・・・・・・・・・うん。美味しいです」

味も、私が知っているシチューの味だった。

食べなれた料理は、思っていた以上に安心できる。





「よかったぁ・・・あ、そうそう、このシチューはチェラ菜が入れてあるから、精神が安定して、安心して眠れると思うわ」



・・・?今なんて?

「え?今何って言いました?」

「チェラ菜よ。落ち着かせる効果があるやつ」

何それ・・・私聞いたこと無いよ?


「・・・すいません。それは知らないです」

「え?そうなの?シチューは知ってるのに?・・・じゃあ、セモン魚とか、ジャガイモとか、テリンとか、コショウとか、皆知らないの?」


「え?えーっと、ジャガイモとコショウは知ってますけど・・・他は聞いたことないです・・・」


衝撃の事実を提示され、私は目の前のシチューに目を落とす。

見た目はシチューだし、味もシチューだけど・・・何が入ってるんだろう・・・

このシチューの中に転がっている鮭だと思っていた魚は・・・何だろう・・・



「おねえちゃん、セモン魚知らないなんて、変なの。どこでも売ってる魚じゃん」

どうやら、セモン魚とやらは、かなり常識らしい。

私の世界で言えば、イワシとかマグロとか、そんな感じなんだろうか



「まだユイちゃんは記憶が曖昧みたいだから、優しくしてあげてね」

「はーい」

マリナさんがフォローしてくれる。

今までとケースは違うみたいだけど、記憶が曖昧なのは、間違いではない。

知ってるものと、知らない物が混ぜこぜだ。



「完全に記憶が無い訳じゃ無いけど、普通の迷い子でも覚えているような一般常識も欠落してる・・・なるほど、たしかにちょっと不思議な感じ・・・」

カレンさんも私の様子を見ながら、色々推察しているようだ。


一般常識が欠如してるって言われるのはなんか引っかかるけど、

広く一般的に知られている何かを知らないのは、きっと事実なんだろうなぁ・・・











夕食とその片付けが終わり、子供たちが寝静まった夜九時。

一番上が12を指している短針と長針から成る時計がそう指している。


時計の表記は同じで助かった。これも違ったら時間もわからなくなってしまう。

圏外とはいえ、時間を確認するたびにスマホの充電を消費するのはちょっと気が引ける。



「ごめんね。片付け手伝ってもらっちゃって」

「いえ、できる事ならやらないと申し訳ないですし・・・」


食器の片づけくらいなら、きっと同じだろうと思い、私は夕飯の片づけを手伝うことにした。

カレンさんは、教会の方の仕事があるとかで、どこかへ行ってしまった。




夕飯の片づけをしているときに思った事は、

水道もきちんとお湯が出ているし、キッチン周りは、私が知っているシンク周りと大差ないように見えた。


・・・レバーが見当たらないので、水を出す方法はわからないのだけれど・・・

なので私の役割は専らマリナさんが洗ったお皿を拭く事だけだった。









「さてと・・・一通りやることも終わったし、さっきの話の続きをしましょうか」

「今度は私が聞く番・・・ですよね」

「そうよ。でも私だって何でも知ってるわけじゃないから、あんまり期待はしないでね」


私が別の世界に来てしまったかもしれないというのは分かった。

でも、私はまだ、この世界を何も知らない。

話してる言語はほぼ同じなのに、日本語ではないと言うし、

食材の名前も、知ってるいるものと、知らないものもある。


聞きたいことはいっぱいだ。



リビングのテーブルで、また二人向かい合うように座っている。


「そうですね・・・まず、ここはどこなんですか?」

「ここ?ここはアウフタクトっていう町ね。オルケス王国っていう、国の西の方にある町よ」

門番さんにも言われたけど、聞いたことも無い名前。

っていうか、今も王国ってあるのかな・・・?

イギリスは、今も王国なんだっけ?



「その・・・オルケス王国ってどんな国なんですか?」

「どんな国・・・ねぇ・・・この世界には、いくつも国があるけど、オルケス王国と、ヴィクティア帝国が二大大国って言われてるわね。そういう意味では、大きな国と言えるんじゃないかしら」

「へぇ・・・そんな大きいんですね」

「まぁ、小さくても、技術が優れている国とかもあるから、単純にすごい国とは言えないけどね」

「なるほど・・・私の世界もそんな感じですね」

日本だって、領土は全然小さいけど先進国って呼ばれてるし、ここもそんな感じの国もあるのだろう。



でも完全に確信が持てる。ここは、地球じゃない。

地球には、そんな国は無い。

仮にあったとしても、二大大国などと呼ばれる規模では無いだろう。




「えーっと、次の質問なんですけど、ここの世界って魔法が発展してるんですよね?」

「そうね、魔力や魔法はありとあらゆる、いろんなところに使われているわ。ほら、あそこにも」

マリナさんが指さす先は、部屋を明るく照らすランプだった。


「あれも・・・ですか?」

「そうよ。あれは魔道具の照明ランプよ」

「魔道具って、なんですか?」

「魔道具って言うのは、魔法の力で動く道具の事よ。手動のものと自動のものがあるわ」

「なんか・・・不思議なものがあるんですね」

煌々と輝いているランプは、私が知っているランプよりも強く輝いていて、まるで蛍光灯のような明るさだ。

町には電線らしきものが無いから、どうやってこんな光をだしているんだろうって思ってたけど、まさか魔法だったなんて・・・




「うーん・・・確かに魔法を知らないと、そういう感想になるかもしれないわね。でも魔力を使う魔道具は、ここでは一般的に用いられているわ。この世界にいる間は、慣れておいた方がいいわね」


「はい。わかりました・・・・・・あと・・・」





そして、何よりも大事な質問がひとつ。





「・・・・・・私は、元の世界に帰れるんでしょうか・・・」




元の世界に帰ること。今私が一番気になっていること。

私には帰る家があるし、家族だって、友達だって、しっかり覚えている。

相手も私の事を覚えているだろう。

今、あちらの世界は、どうなっているのだろう。

今、あちらの世界では、私はどうなっているのだろう。

今、あちらの世界の私の家族達は、どうしているのだろう。



そんな私の問いにマリナさんは、

「・・・元の世界に・・・ごめんなさい。正直なところ、分からないわ」

うつむきながら、小さくそう、答えた。


「そう・・・・・・ですか・・・」

私の声も小さくなる。


お母さんやお父さん、

鈴、

他にも沢山・・・


皆には、もう会えないのかな・・・




「でっ、でもっ・・・さっき魔法で別の世界に穴を開けるとかって・・・・」

必死に食い下がる私。


「ああ、あれね。確かに別空間と繋ぐ技術はあるわね」

「だったら!」

自然と声が大きくなる。


「でも、まだ人が通れる程の穴は作れてないらしいのよね。」

「・・・」

「それに、まだ狙った世界に繋ぐ技術はまだ無いの。貴女の世界を見つけて、そこに繋がる穴を作る事は、まだ出来ないわね・・・」

「・・・・・・っ、」


「ごめんね、力になれなくて・・・」


「・・・・・・」


私から、生気が抜けていくのが分かる。

正真正銘の絶望が、私の中を駆け巡り、冷や汗がシャツを湿らせて気持ち悪い。



身体の中は熱いのに、表面はすごく冷たい。

まるで私の身体じゃないみたい。


なんだか、視界も少し揺らいできている錯覚もする。


目を落とした先にあるスカートや太腿が、とても遠くにあるように見える。


手を下せば触れる場所にあるのに、何故か触れない気がしてくる。










皆に・・・会いたいな・・・












その後、私はマリナさんに言われてお風呂に入った。


どうやらお風呂の設備も魔法の道具で作られているらしく、私はそれの使い方がわからないので、

マリナさんと一緒に入る事になった。

この年になって誰かとお風呂なんて、しかも全く知らない人と・・・

ちょっと恥ずかしいけど、一人じゃ水すら出せないので仕方なかった。



「あれ、ユイちゃん、その背中・・・」

マリナさんは私が服を脱ぐなり、背中のキズを発見した。

私には、交通事故で残ってしまった傷がある。

特に背中のものはとても大きく生々しい古傷になってしまっている。


「あっ・・・その・・・」


うっかりしてた。

普段ならこんなに無配慮に晒したりしないのに・・・


「痛む?水で沁みるとか、ある?」



だけど、マリナさんが聞いてきたのは、それだけだった。

何故こんなものがあるのか、とか。

そんな事は一切聞いてこなかった。



「いえ・・・大丈夫です・・・」


「そう、じゃあ背中も洗っちゃうわね」


「あの・・・洗ったりは自分でできますから・・・」

私が出来ないのはお湯を出す事だけだから・・・


「いいの。今日は私に任せて」


「・・・・・・わかりました」


マリナさんがそういうので、私は風呂場でのすべてを全部任せる事にした。


マリナさんは、とても丁寧に私の身体や髪を洗ってくれた。

多分、私が普段やってる時よりも丁寧だった。


ボディーソープやシャンプーだと思われるものが、ほとんど泡立たないヌルヌルの液体だったのはちょっと気持ち悪かったけど、結果的に綺麗にサッパリしたので、変なものでは無かったのだろう。

マリナさん自身もそれを使っていたしね。







お風呂から上がった後は、マリナさんから借りた白い寝巻のワンピースのような物に着替えて、

マリナさんの部屋のベッドの上で横になる。





ベッドで仰向けになりながら事実を反芻する。




・・・悲しい・・・辛い・・・




・・・・・・





当然だよね。

いきなり別世界に迷いこんで、帰る手段が無いなんて・・・







2年前。

私は全てを忘れてしまった状態で目覚めた。

そんな絶望の中にいる私を救ってくれたのは、

両親だった。妹だった。友達だった。


私は誰一人覚えてはいなかったけど、

あちらは4年以上意識不明だった私の事を忘れてはいなかった。

そんな私に、優しく接してくれて、いろいろ教えてくれて、沢山の勇気を貰った。

感謝してもしきれないくらいだ。


なのに・・・



なのに私はまた、皆を置き去りにして、一人ここにいる。


私はまた、あんな無責任な事を繰り返している。


今皆は何をしているだろう。

私を、血眼になって探してくれているか・・・

それとも、私に失望してしまっているか・・・




恩を仇で返すって、こういう事なのかな・・・








・・・・・・







こんな調子では寝れる筈もなく、

ゆっくりとベッドから身を起こす。






・・・あれ?





ドアの向こうから光が漏れている。

まだ誰か起きてる・・・?









そろそろとドアを開けると、リビングのソファでマリナさんが本を読んでいた。


「あれ・・・マリナさん、まだ起きてたんですか・・・?」

私に気が付いたマリナさんは本を横に置くと、


「あ、やっぱり寝れなかったのね」


と、優しい口調で言う。


「やっぱり・・・?」

「今まで色んな子を見てきたんだけどね、やっぱり初日は皆不安で、心配で、眠れないの。皆、昔の事が忘れられないのよ」

「そう・・・だったんですか・・・」

「貴女もいろんな事考えてたんでしょ?家族の事、友達の事」

「・・・」

「そういうのはね、自分で抱え込まないで、一回全部吐き出しちゃうのがいいのよ。だからほら、近くにいらっしゃい」

私はマリナさんに言われるがままに隣に座った。



「何が不安なのか、話してごらん?」



マリナさんの口調は優しくて、



「私はシスターだからね。願いも、懺悔も、願望も、全部受け止めてあげるわ。」




なんでも話して、楽になりたい。そう思わせてくれる。






「やっぱり・・・両親と、妹と・・・友達の・・・事です」

「会いたい?」

「はい・・・でも・・・」

「でも?」

「それよりも・・・皆を裏切っちゃった事が申し訳なくて・・・」

「・・・裏切る?」

「私・・・前に一度、事故で4年間意識不明になってて、記憶喪失になっちゃった事があるんです・・・その時、家族にも、友達にも・・・いっぱい、助けてもらったんです・・・」

話していると、目の奥からこみあげてくるなにかがある。私はそれを必死に堪えながら


「4年も関係を絶ってて、しかもあなたの事知らないって言う人に、優しく接してくれたんです・・・それがあったから、私は高校生になれて・・・感謝しても、感謝しきれなくて・・・」

瞳の端から涙がこぼれ落ちる。もう、我慢の限界かもしれない。


「でも・・・でも、今の私は・・・皆に何にも言わないで、皆の前からいなくなって、あっちからしてみれば、ただの家出同然で・・・」

涙をごまかす為か、ただ強がっているだけか、語気が強くなって、早口になる。



「こんなの・・・恩を仇で返すっていうか・・・親不孝っていうか・・・失望されても・・・仕方ない・・・ですよね・・・」



「そう・・・そんな事があったのね・・・」

気づくと、背中と頭に感触を感じる。

私はいつの間にか、マリナさんに抱きしめられていた。


「でも大丈夫よ、それは貴女のせいじゃないわ」

「でも・・・」

「話を聞いた限り、貴女の選択に間違いはないもの。記憶喪失だって、なりたくてなったわけじゃないし、ここにだって来たくてきたわけじゃないでしょう?」

「・・・そうですけど・・・」

「だったら、貴女が悪い点なんて無いわ」

「・・・・・・」

「それに、貴女の思っている大切な人が裏切られたと思ってるとは、限らないじゃない」

「・・・・・・・・・」

「だから、これでこの話はおしまい。貴女は気に病む必要は無いの」

「・・・?」

「今の貴女に必要な事は、自分の気持ちをなんとかすること。申し訳ないって気持ち。会いたいって気持ち。寂しいって気持ち。悲しいって気持ち。全部、全部、全部」

頭を軽く撫でられる感触がする。

なんでか気持ちが温かくなっていく気がする。


「今日は思いっきり感情を吐き出して、スッキリしちゃいなさい」

「うん・・・・・・・・」




「その感情は、私が全部受け止めるわ」







その日の夜は、マリナさんに抱きしめられながら、思いっきり泣いた。


会いたい、寂しい、悲しい、恐い、自分の気持ちに正直になって、

小さな子供みたいに号泣した。

本当なら他の人がいる中でそんなことするのは凄い恥ずかしいけど、マリナさんは別だった。







ひとしきり泣きはらして、すこし落ち着いた後、マリナさんが紅茶を淹れてきてくれた。

「はい、チェラ菜入り紅茶よ」

あの、落ち着く成分が入ってる草だっけ。




「ありがとうございます・・・」

「明日、ユイちゃんが最初に居た所にいってみようか」

「最初に、居たところ・・・?」

「そう、気が付いたら平原に立ってたって、言ってたじゃない?」

「・・・はい」

「そこに行けば、何か分かるかもしれないでしょ?」

「何か・・・?」

「そう、元の世界に戻る手がかりとか、あちらの世界の事とか」

「・・・」

「私はまだ諦めたわけじゃないわよ?貴女をもとの世界に返してあげるの」

「私も・・・です。まだ、諦められないです」

たとえ何年かかってでも、元の世界に帰って、そして、謝ろうと思う。

迷惑かけてごめんなさいって。

その時、お母さんや、お父さんや、鈴たちがどう思ってるかはわからないけど、それが私だから。


あの日、私が全てを失った状態で目覚めて、初めて家族と会った日、私の妹、鈴が言ってくれた。

"どうにもならない事でも、何とかしようって頑張るのがお姉ちゃんらしいよね"

って。


絶望の中でこそ、私が諦めてしまうわけにはいかないから。

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