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第4話:はじめてのおしごと・Ⅰ


新しい世界に来て、新しい服を買ってもらった。

まぁちょっと露出とか多いけど・・・



それから4日。



「・・・だいぶ魔法も制御できるようになってきたわね」

「はい」


私は暴走している魔力を、自分で押さえつける形で出力を調整して魔法を使っているのだけれど、

そのコツもつかめて来て、あまり意識しなくても一般的な出力で出せるようになった。


ただ、ビックリしたりすると、やっぱり暴走しちゃう。




「そろそろお仕事をしてみてもいいんじゃない?」

「仕事・・・ですか・・・」


マリナさんが言う仕事とは、ギルドの依頼の事だろう。

誰かのお悩みを、誰かが解決する。そんな助け合いシステム。


そこに私は、助ける側として登録をした。



「じゃあ、早速ギルドに行きましょうか」

「わかりました」


お仕事かぁ、とも思わなくも無いけれど、居候させてもらっている都合、あまり反抗は出来ない。







あの衣装、マリナさんは二着買っていたらしく、私はその二着をずっと着まわしている。

露出がどうとか言ってたけど、

いやらしい目で見てくる人も居ないし、なんだかんだ4日も着てると気にならなくなる。

それに、フィット感がとても心地よくて、

普段使いするのにもかなり優秀だった。


露出の多さ以外は割とキレイでカワイイので、結構好きな服かもしれない。

なんかこう・・・高級なドレスみたいで・・・ね。












平日なのにギルドは今日も人で溢れている。

週休土日がこの世界でもそうなのかはわからないけど・・・

・・・いや、ここの人たちにとってはここが仕事場なのかな?



「今頃ならきっとユイちゃん向けのお仕事もあると思うのよねー」


ギルドに到着すると、早速マリナさんが掲示板を眺め始めている。

沢山の紙が掲示板に貼り付けられている。これ全て依頼なんだ・・・



なので私も、掲示板の依頼を見てみる事にした。

行商の護衛依頼や、採石場に出没した大型バグの討伐など、なんだか物騒な依頼もあるし、

逃げたネコの捜索や、引っ越しの手伝いなんてものもある。

本当にいろんな依頼が集まってくるんだね、ここって。





・・・にしても、


「私向けの仕事ですか・・・」


大量に魔法を使っても全然疲れない特徴はあるけど、

使える魔法はただ水を出す魔法だけだ。

そんな私にできるお仕事なんてあるのかな?



「んー・・・あ、あったわ!ユイちゃん向けのお仕事!」


マリナさんが何かを見つけて手招きしている。

そこに近寄って見てみると、


「・・・畑の水やり・・・?」


依頼書に書かれていた内容を読んでみると、

町はずれの大規模農場の水やりらしい。

確かに水やりなら私もできる。



「そうよ、最近晴れ続きだったじゃない?」

「あー・・・確かに」


私がこの世界に来てから2週間。

確かに雨が降っている日は1日も無かった気がする。


「あそこで栽培してるチェラ菜はアウフタクトの名産品よ」

「そ、そんなもの私がやっちゃっていいんですか・・・?」


名産品の水やりなんて、失敗したら大変な事になっちゃう!


っていうか、チェラ菜ってここの名産だったんだ・・・

気分を落ち着かせてくれるとかで、既に私もいろんな方法で食べたり飲んだりしてる。


「大丈夫、私も手伝うから。フォローはするわ」

「ありがとうございます」




マリナさんは掲示板に貼ってあるそれを取って、受付へと向かう。


「これ、お願いできるかしら?」


マリナさんは依頼書をカウンターの女性に手渡した。

女性はそれを受け取ると、


「では参加者のギルド証をお願いします」


と、ギルド証・・・って前に貰った会員証かな?

今日も腰に下げてあるポケットに入っている。

マリナさんからは、唯一の身分証明になるものだから常に携帯しててね、と言われた。



マリナさんと私、二人ギルド証を提出する。

マリナさんのギルド証、なんか豪華な気がしたけど・・・ゴールド免許的なものもあるのかな?



カウンターの女性は、それらを魔方陣の上に載せて何かしている。

そういう情報管理も魔法でやってるんだ・・・


これも魔道具なのかなぁ・・・





それはすぐに終わり、女性はギルド証を返して来た。


「はい、受注処理完了しました。依頼の詳細はこちらに載ってます」


と、依頼書の代わりに、1枚の紙をマリナさんに渡した。

そして、続けて


「ユイ・リクエ・レイフィールさん、貴方は初めての仕事になりますね」

「はい」

「本当ならギルド入門担当官の指導が入る所ですが、マリナ・レイフィールさんは担当官の経験も御ありですので今回は特例としてこの依頼を入門教導とします」

「ええ、話が早くて助かるわ」


マリナさん、結構いろんな事やってるんだね・・・


「ということですので、ユイさん、マリナさんから色々と教わってくださいね」

「はい。よろしくおねがいします。マリナさん」





マリナさんと私、二人ギルドのテーブルに座って、

依頼の詳細が書かれた紙に目を通していた。


「チェラ菜畑の水やり・・・水をあげるだけでいいんですか?」

「ええ、そうよ。この時期は晴れが多いから、たまにこう言う依頼が来るの」

「こんな簡単な依頼なのに残ってたんですね」


言い方は悪いかもしれないけど、

こんなお仕事、水属性を持ってる人なら誰でも出来そうなものだけど・・・


「そうねぇ、実はそこまで簡単じゃないの」

「えっ!そ、そうなんですか・・・?」


なのに私の初めてのお仕事にしちゃったの?


「畑が広いから、普通の人だと魔力切れを起こしちゃうの。だから普通は何人も集まってやるんだけど、それじゃあ報酬が割りに合わないって、あんまり人気無いのよね・・・」

「な、なるほど・・・」

「そこでユイちゃんの出番!ユイちゃんなら魔力切れなんて気にする必要ないから楽勝よ?」

「そういう事だったんですか」


私の得意な事の欄に書いた、大量に魔力を使う仕事。

かつ、水を出す魔法だけで行える仕事。


確かに、今の私にピッタリだ。



・・・でも、


「水やりって・・・畑の中を歩き回ったりしますよね・・・?」

「まぁ・・・それなりにはね・・・」


マリナさんも、ちょっとだけ苦い顔をしている。


私は、魔力のスタミナには自信があるけど、

体のスタミナには全く自信がない。


成長停止の影響で、4年以上寝たきりだった時に衰えてしまった全身の筋肉が、

未だに戻りきっていないのだ。

この世界に来る前も、登下校だけで体力を使い果たしたり、

50メートル走で死にかけたり、教科書やノートが満載のスクールバッグを持ち上げられなかったりと、

様々な所で不便を強いられてきた。


畑がどの程度の大きさなのかはわからないけど、大規模農場なんて言うくらいだし、

端から端まで歩くのは、ちょっと無理かもしれない。



「ま、まぁこの依頼、別に素早くやらなきゃいけないってわけじゃないから、休憩しながらやれば大丈夫よきっと」

「そ、そうですね。はい」


マリナさんのフォローに私も乗っておく。

なんだかんだ言っても、今の私に出来る仕事なんてきっとこれくらいしか無いだろうし、

多少の我慢は必要なのだ。


むしろ、私がこの暴走体質で無かったとしたら、まだ私は何の仕事も出来ていないのだろうし。



「って事はこれからその農場に行くんですか?」

「ううん。今日は帰るわ。本格的なお仕事は明日しましょう。準備とかあるしね」


そ、そうなんだ・・・よかった。

これからお仕事じゃ、早急すぎて心の用意が・・・


「準備って、何するんですか?」

「お弁当作ったりかしら。一日がかりの作業になるだろうからね」

「はぇ・・・」


一日中畑仕事かぁ・・・日焼け止めクリーム持って来てないなぁ・・・










教会に帰って来た私は、マリナさんに聞いてみた。


「マリナさん」

「何かしら?」

「日焼け止めクリームとか、持ってないですか?」


まだ五月だけど、背中もお腹も出ている服なので、とても気になる。


「日焼け止めクリーム?うーん、知らないわね・・・」


えっ、嘘、日焼け止めクリーム知らないの?

って事は、この世界にはそんなもの無いの・・・?


「その・・・塗っておくと日焼けを軽減できるクリームなんですけど・・・」

「うーん・・・それは知らないけど、日焼けを止めるものはあるわよ?」

「あるんですか!私、それ使いたいです!」


ちょっと興奮していつもよりも二回りくらい高くて大きい声を出しちゃった。

まぁ・・・マリナさん相手ならそこまで恥ずかしくは無いし・・・


「ええ、いいわよ。ちょっとまっててね」


そう言ってマリナさんはリビングの棚の引き出しを漁って、何かの小瓶を持ってきた。

中には透明な液体が入っていて、マリナさんが歩くたびにチャプチャプと揺れている。


「これを塗り込んでおくと日焼けしないで済むわよ」

「ありがとうございます」


それを受け取って、小瓶の蓋を開けてみる。

薬品というか、薬草というか、なんとなく薬の臭いがする。

てっきり化粧水みたいにほんのりいい匂いがすると思ってたからちょっとビックリ。


まぁ・・・このくらいなら塗ってもあんまり気にはならないかな・・・


出来ればもうちょっといい匂いの方がよかったなぁ・・・

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