第8話
「ごめんね、狭くて。二階も無いし・・・」
「ううん。すっごくかわいくて素敵!!」
シャンヌはリビアの家を訪ねていた。夕食時にシャンヌが「リビアの家に行きたい!」と駄々をこねたのが原因の一つなのだが、リビアは一つ返事でそれを快く承諾してくれていた。
リビアの家はディランのそれよりも小さかった。壁やテーブルに飾られた花々を見つめるシャンヌ。次々に眺めていると、棚の上の写真に目が行った。そこには男の子二人とかわいらしい女の子が映っている。
「あ、それ?」
リビアがシャンヌの見ているものを見つけて微笑んだ。
「私とルークとディランが6,7歳の頃かな?」
「このムッとしてるのがディランでしょ?」
「そうそ。いつもルークと喧嘩してて・・・。ま、喧嘩するほど仲が良いんだろうけど」
クスッと笑うリビア。シャンヌは写真立てを元の場所に戻し、今度は隣に置いてあったものを手に取った。
「・・・この人は?お母さん?」
「ううん。おばさんよ」
言うとリビアは悲しげに微笑む。
「私、生まれてすぐに両親を事故で亡くしてるの。それで、母さんの姉に引き取られたらしいんだ。それから<ママ>はここに越してきたってワケ」
「・・・大変だったでしょう?」
「かもね」
リビアは小さく肩をすくめた。
「ママには迷惑かけっぱなしだったから・・」
シャンヌはリビアを見つめた。大変だったに違いないのに、それを笑って楽しそうに話している。この女性はなんて強いんだろう、と思わずにはいられなかった。
「あの・・・それで、そのママは・・・?」
「今は、素敵な男の人を見つけて結婚したわ。私を連れて行く!って言い張ってたんだけど・・・。それは断ったの。私がいると邪魔じゃないかなって思ったし、ママには幸せになってもらいたかったしね」
「じゃあ、今は一人暮らし?」
リビアはこくんと頷いた。
「そうよ。一人のほうが気楽だし、ディランのおばさんもルークもいるしね」
「私だったら・・・一人暮らしなんて無理だろうな〜・・・」
シャンヌは呟き、写真を元に戻す。
「私、料理なんて出来ないよ・・・」
「シャンヌちゃんはまだ小さいから・・・・ってそういう言われ方嫌い・・?」
ぶすっとしているシャンヌを横目で見て、リビアはすまなそうな顔をする。それがおかしくて、シャンヌは笑った。
「ううん。ダイジョーブ。子ども扱いされるのには、なんか慣れてるの。あ!でももう15になったし!これからはもっとしっかりしなくちゃね!」
言うと、リビアから渡された寝巻きを受け取った。かわいらしいイチゴ柄の寝巻きだった。
「お風呂入ってきたら?私はベッドをキレーにしとくから」
「うん。ありがと」
にっこりと笑うシャンヌにリビアも笑顔を返す。
久し振りの客人をどうもてなそうかと、リビアの心はうきうきしていた。