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第6話

 家の中も7年前とほとんど変わっていなかった。

 柱を剣で傷つけた痕、兄と喧嘩をして壊してしまったテーブル。それを直すのに、二人で丸一日かかったのを思い出しディランは苦笑した。

 出されたハーブティーに口をつけつつ、ディランは隣に座った母親に問うた。


「なぁ、モンスター退治って・・・あいつらに出来るのか?」


「そりゃあ、もちろん!二人ともすごいのよ?リビアちゃんは魔法が得意だし、ルーク君は武術の達人だしねっ!」


 得意げに言う母は、出来立てのマフィンを口に運ぶ。


(へぇ・・・リビアが魔法を・・・)


 シャンヌはディランがぼーっと手の中のカップを見つめていることに気付いた。マフィンに手を伸ばしつつ、ディランの母へ質問をする。


「あの、おばさま。リビアとルークって・・ディランの何なの?」


「ああ、リビアちゃんとルーク君はこの子の幼馴染。3人が小さいときは毎日一緒に遊んでたのよね、ディラン」


「・・・・」


 母の問いかけにも、ディランはカップの中身をじっと見つめている。シャンヌはちらりとディランを見たあと、小声で訊いた。


「それで・・・そのリビアさんとディランって婚約とかはしてないのよね?」


「ええっ?!してるわけ・・・・」


「してるわけないだろ!」


 母親に代わり、ディランは静かに、しかし語気を強めて反論した。ハーブティーを飲み干すと、ゴンっとカップをテーブルに置く。


「ディラン・・・聞こえてたんだ・・・・?」


「あんたの声が大きいんだ」


 キッとディランに睨みつけられ、シャンヌは縮こまった。青い瞳に涙が溜まっていく。


「これっ!ディラン!!女の子を泣かすんじゃないよっ!」


「・・・まだ泣かせてないだろ・・・・」


 ため息と共に言葉を吐き出す。シャンヌは泣きはしていなかったが、ディランの母の胸に顔を押し付けていた。


「よしよし・・・ごめんね」


 ディランの母親はシャンヌを自分の子供のように、抱き寄せている。柔らかなブロンドの頭をゆっくりと撫で、赤ん坊をあやすかのように優しい口調で言った。


「ごめんね、シャンヌちゃん。ディラン、無口で凶暴でワガママで最悪で」


「・・・おい。最悪って・・・・何だよ?」


 ジト目で睨むディランに、母は涼しい顔をして言った。


「かわいい女の子を苛めたから最悪なの!」


「苛めてない!!」


「泣いたじゃないかっ!!」


「泣いてもいないだろっ?!」


 シャンヌはいつの間にか顔を上げ、ディラン親子の口喧嘩を面白そうに見守っている。どう見ても、母親のほうが強いようだった。


「もういい!」


 ディランは立ち上がると二階へ上がる階段へと足を運んだ。


「寝る」


「ちょっと〜?ディランまだ早いよ〜?」


 シャンヌの声が耳に入り、ディランが階段の一段目に足をかけたそのとき、


がちゃり


 玄関の扉が元気良く開けられた。そして、明るい声が二つ。


「おばさ〜ん。今日も終わったぜ!」


「今日は31匹だったよ。あと、薬草も採ってきておいた」


 パタパタと足音が近づいてくる。

 ディランもいつの間にかその音の方向を向いていた。


「あーーー。疲れたっと」


「ほとんどあんたは何もしてないでしょ!って・・・・あら?」


 声の主はそこでようやく異変に気付いたらしい。リビングの椅子にちょこんと座る人形のようなシャンヌを見て、しばし固まるディランの幼馴染の二人。


「うわっ!すっげーーーかわいいじゃん!!」


 ルークの反応にディランの母親がクスクスと笑った。シャンヌは部屋に入ってきた二人にぺこりとお辞儀をすると特上の笑顔で自己紹介をする。


「シャンヌ=ルベリオンです。ルークさんに・・・リビアさんですよね?」


「やったぜ!俺の名前、なんで知ってるの?!」


「でも・・・どうして・・・?」


 尚もクスクスと笑う母親。リビアは部屋を順々に見渡した。

 カレンダーの張ってある壁、コーヒーをこぼしてシミになった床、テーブルの上のカップが4つ。そして、階段――。

 二人は目が合った。


(これが・・・・あのリビア・・・か・・・?)

 

 彼女の驚いた明るい茶色の瞳が、不意に優しい光を持ち始めた。彼女の唇がゆっくりと動く。


「・・・・おかえり、ディラン」


「・・・・ああ」


 懐かしい声に、ディランはただ頷くことしか出来なかった。


更新が遅くて申し訳ないです・・・。

ディラン君の性格からか、なかなか動かせなくて・・・。

私にはやはりロードのような明るい性格の人のほうが書きやすいんでしょうか・・・??


次回の更新も気長に待っていてくださいね♪

目安は1週間後!!(おそっ!)

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