第42話
お久しぶりです。
ここのところ、忙しくて・・・・ってのは言い訳ですね。すみません。
頑張って最後まで書きます(;一_一)
「この温泉にはドラゴンが住んでいるんだ」
大きなたんこぶを頭に作り、アラークは神妙な面持ちでディランら4人にやっと打ち明けた。
「もともと、この村はドラゴンを守る役割も担っていたんだが・・・いつのころからか商売に明け暮れてしまって・・・・。温泉業が軌道に乗っているときに、全く突然に温泉が出なくなってしまったんだよ。・・・・ま、村人への罰かもしれんがな・・・」
自嘲気味に笑い、アラークはリビアがいれた紅茶を一口すすった。
ソファで腕を組んで話を聞いていたルークが唸る。
「ドラゴンか・・・。んで、おっさんの話からすると、村人はそのドラゴンを恐れて隠れてるって感じだよな?でも、誰かそれ見たのかよ?ドラゴンなんて・・・・ほとんど伝説の話じゃねーか」
「それなんだがな」
アラークはソファの背に自分のそれを預けた。
「見た、と言うものはもうかれこれ50年はいないんだよ」
「50年?!」
「おっさん、歳いくつだよ?」
「てゆーか、最近の話じゃなかったっけ?」
「シャンヌ、生まれてなーい」
4人はそれぞれ口にする。アラークはまぁまぁと彼らを宥めると、その問いに答えていった。
「私は今、57だ。昔は空を自由に飛ぶドラゴンの姿を見ることができたんだ。温泉が枯れ始めたのは10年くらい前か・・・・。そこらへんだ」
「うあ。曖昧だな」
ルークのツッコミにアラークはフンと鼻を鳴らす。
「仕方ないだろ。いつの間にか枯れてたんだ!」
「逆ギレかよっ!!」
ルーク以外の3人はまともにアラークの話を聞いていない。リビアの紅茶をおいしそうにすすっている。
そんな3人に、アラークはいきなり頭を下げた。
「頼むっ!ドラゴンが住むというアトラス山脈に行ってはくれないか?」
「はぁ?」
ディランは顔をアラークに向けた。アラークは頭を下げたままにしている。
「自分たちで行けばいいだろ?旅人を当てにするな」
「そーだぜ、おっさん。今まで何人の旅人が来たのかは知らねーけど、ずっと断られてきたんだろ?おそらく」
「いや、お前さんがたが初めてだ。家の扉を叩いて回ってたのは」
しばしの間。
かぁ、と何かの鳥の声が聞こえてくる。
ディランとルークとシャンヌは、扉を叩いて回っていた犯人にゆっくりと顔を向けた。彼女は素知らぬ顔で紅茶を飲んでいる。3人の視線に気づき、その彼女はにっこりと笑顔を作った。
「ん?なぁに?」
「なぁに?ってなぁ!お前――」
「んもう、ルーク。怒っちゃヤ」
人差し指をルークのおでこにトンと当て、リビアは彼女らしくないぶりっこの振りをする。
「そんな怖い顔しないで。せっかくかっこいいのに」
「えっ?そう・・・?」
ルークの顔が一瞬にしてにやけたものに変わった。それを見て、ディランはため息をつく。
「お前のことだから、どうせ行くんだろ?助けを求めてるのを見過ごせないタチだからな」
「ディランくん、せいか〜い」
リビアはディランにも人差し指を向けた。そして、そのまま彼の頬をぷにっとつつく。
「あ。意外と柔らかい」
「え?!うそうそ!私もやる〜!」
あろうことか、シャンヌまでディランの反対側の頬をつつき始めた。
「・・・・お前らな・・・」
「お〜お〜いいな。若いもんは」
アラークはいつの間にか傍観者に回っていた。ディランたちのやり取りをのほほんとした表情で見ながら、
「それで、ドラゴン退治は引き受けてくれたのかな?」
と、ルークに問うた。
「ん。ま、いいんじゃないか?」
頭の後ろで手を組み、ルークはあっけなく頷いた。
「ドラゴンなんて、一生に一回見れるかどうかわからねぇしな。オレもディランも見てみたいってのが本音だし」
「そうか、よかった」
アラークは笑うとディランたちを再び見た。きゃっきゃと笑うシャンヌと、ディランの髪をくしゃくしゃにしているリビア。ディランは困った顔をしながらも楽しんでいるようだった。
しばし、ルークとアラークの間に無駄な沈黙が続き、
「なぁ」
口を開いたのはアラークだった。
「私ら、無視されてないか?」
「今頃気づいたのかよ。おっさん」
再び沈黙。
と、やおらルークの肩にアラークが手を置いた。そして、一言。
「気落ちしちゃいかんぞ、ルーク君!わしがついとるっ!」
「つーか、目がもろに笑ってるってんだよ!ほっとけ!」
ルークの叫びは、再び誰もいない屋敷に響き渡る前に、シャンヌたちの笑い声によってかき消されてしまった。