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第32話

 様々な山車だしと人形。笛や太鼓。種にみせかけた花を撒きながら踊る農民たち。

 ディランたちの前をパレードだけが華やかに通過していく。


「さぁ、後は<生贄いけにえ>だけだぜ。どんなに可愛い娘なんだろうな〜」


「ルーク好みの女の子だったら、ルークが<生贄>に欲しいんじゃない?」


 食べ終わった飴の棒を振り振り、シャンヌはルークをからかう。ルークはからからと笑った。


「あったりめーだ!オレなら速攻、味見しちゃうね」


「うわっ!ルーク、やらし〜!!」


 シャンヌとルークの他愛ない会話の中、ディランはリビアのことを考えていた。


(もし、今、フォードがリビアのところに現れたとしたら・・・・。あいつは先にリビアを手

に入れるつもりってことか・・・。シャンヌは後回しでも良いってことは、そんなに急な依頼じゃない・・・。どちらにしろ、俺はフォードと対決しなきゃいけないらしいな)


 最後の山車が近付いてきた。その上には大木に縛られた女性の姿がある。足元にはわらが敷き詰められ、捧げものらしい果物や野菜まで置いてあった。


「おっ。来た来た」


「どんな女性かな」


 近づく車。その女性はイバラの冠をかぶり、体は無造作に白い布が巻き付けられただけという姿だった。髪を上にあげ、そこで止めてはいるもの、首筋や肩にかかったおくれ毛が色っぽかった。


「へぇ〜。美人じゃねーか、な?ディラン」


「そうだな」


 適当に相槌をうつディラン。その<生贄>の女性を見上げた丁度その時、彼女と目が合った。


「リビアっ?!」


 声を発し、驚いた表情をするディランに山車の上からその彼女は笑いかける。


「うわっ!マジで?!リビア、何やってんだよ?!すっげーーー!!いいぞ〜〜!!リビア〜〜!!」


「リビア〜!素敵よ〜〜!!がんばって〜〜!!」


 口々にはやし立てるルークとシャンヌ。リビアは頭上で縛られている手を器用に二人に振って見せた。

 彼女に答えるように、ルークとシャンヌはキャーキャーと歓声を上げる。

 ディランは彼女に見とれていた。その姿に、その笑顔に、彼女の全てに。

 普段飾らない彼女だからこそ、その女らしさ、美しさにディランは目が離せないでいると同時に、目の覚めるような不思議な感覚を覚えていた。

 目の前をゆっくりと通過していくリビアの車。その後ろ姿を見つつ、


「・・・私だって、きっとキレーよぉ」


 頬を膨らまし、ぽつりとシャンヌがこぼした。それにルークが答える。


「まぁな。そりゃシャンヌちゃんもキレーになるとは思うけどよ。リビアは・・・何つー

か・・・年上だし。色っぽいっつーかさ」


「むぅ〜〜」


 ルークの横で膨れるシャンヌ。そして未だぼーっと通り過ぎた山車を見つめているディラン

の腕を引っ張った。


「ほら、ねぇ。もう行こうよ」


「あ・・・・ああ。そうだな」


 視線をそこから引きはがし、ディランはシャンヌに頷く。


「あ〜〜。良いもん見た!さて、と」


 伸びをし、ルークが頭の後ろで両手を組んだ、その時


カッッ


 今まで暗かった空が、一瞬真っ赤に染まった。


『?!』


 振り返る3人。見ると、今しがたリビアの乗った山車が行った方向の空が赤く染まっている。わらわらと色とりどりの衣装に身を包んだ人々も、こちらに逃げるように走ってきていた。


(リビア?!)


 嫌な胸騒ぎに駆られ、ディランは駈け出していた。


「おっ・・おいっ!ディラン!」


「ルーク、シャンヌから絶対に離れるな!!そこにいろっ!!」


「ディラン!!」


 シャンヌの自分を呼ぶ声など、もはやディランには届いていなかった。彼は今、<傭兵>であるということを忘れていた。ただ彼女をあんなヤツに渡したくなかった、それだけだった。


(フォードのやつ・・!!)


 目の前に炎の海が近付きつつあった。

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