第22話
「ああ〜〜〜。疲れた」
ツインのベッドのひとつにルークが部屋にはいるなりうつぶせに倒れ込んだ。日付はとうに変わっている。
ディランは頭のバンダナを外し、前髪を掻き揚げた。
「はしゃぎすぎたからだ」
「だってよ!お前の親父さんにもらった5万枚。すっからかんにしてもいいって言うから大博打を打ったのに・・・減らねぇんだもんよ!やっぱ元手があると違うよなぁ〜」
ルークはごろりと天井を向いた。その顔にディランはソファのクッションを投げる。
「ぶっ!なにすんだよ!」
「15階にいたのもそんな理由か?コイン30枚くらいでどうやって増やしたんだ?」
「・・・知りたいか?」
ルークはむくりと起き上がると、ディランに意地の悪い笑みを見せた。ディランは小さくため息をつく。もったいつけているということは、聞いてほしいということなのだ。
「聞いてやるよ。どうしたんだ?」
「あのな」
ルークの話はこうだった。ディランから残りのコインを譲り受け、リビアが稼いだコイン10枚を貰った。それで全部で30枚。この半分をルーレットで『赤の3』に賭けた。それが見事に的中し、コインは36倍の540枚。その調子でどんどんかけていくと・・・いつの間にかコインは1000枚に増えていたというのだ。
「んで、リビアとシャンヌを連れて15階にでも行ってみっかってなって。遊んでたらお前の親父さんらしき人に会ったってわけ」
「お前、こんなとこで運使うと、後々ろくなことがないぞ?」
ため息交じりに言葉を吐き出すディランにルークは人差し指を出し、それを左右に振った。
「ちっちっち。分かってないなぁ、ディラン君は。15階にはめっちゃ美人なオネーサマがいっぱいいたんだぞ!そのオネーサマたちがオレに群がってだなぁ―――」
「はいはい。良かったな」
ディランはソファのもう一つのクッションをにやけているルークに投げつけた。しかし、ルークはクッションを抱きしめムフフと笑っている。よほど嬉しかったのだろう。
「でも、お前、それリビアに見られたんだろ?いいのか?」
自分のベッドに腰掛け、ディランはシャツを脱いだ。ルークはクッションから顔を上げ、
「リビア?ああ、別に」
と、あっけらかんと言う。
「あいつはシャンヌちゃんとレース見てたし・・・。オレが他の女の子にキョーミ持っても別にって感じだぜ?悲しいことにな」
「そうなのか?そうは見えないけどな」
「そうなの!つーか、何だよ、その筋肉!!オレに見せつけてどーしようってんだ?!」
ボスンとディランにクッションが飛んできた。ディランは不思議そうにルークを見やる。上
半身裸のディランはルークをじっと見つめ、すっと目を細めた。
「・・・お前、それ以上言ったら・・・殺す」
「うっ・・・。じょ、ジョーダンだって!もう!ディラン君のイ・ジ・ワ・ル」
なぜか一昔前のぶりっ子ポーズをするルーク。それにディランは軽くキレた。
「ルーク!!覚悟、出来てるんだろうなっ!!」
「うわっ!マジで!ちょっと!タンマっ!!あ〜〜〜れ〜〜〜〜」
かくて、男同士のじゃれあいともいえる戦いの幕が切って落とされたのだった。