第20話
「もう!ルークのバカっ!」
「なんでカードもらったのよ?!ばかっ!!せっかく19だったのにっ!」
ルークの両サイドで口々に文句を言う茶色の髪の女性とブロンドの少女。真ん中のルークは抱えていた頭から手を放し、
「やかましー!!」
と、一喝。
「次に2が来たらブラック・ジャックだろーがっ!それにかけるのが男ってもんなんだよっ!」
「ばかみたい。それで何回やられてんの?」
「これじゃあディランより稼げないんじゃないの?」
「ぐっ・・・・」
言葉に詰まるルーク。ディーラーはその光景を面白そうにカードを切りながら見ている。
「どうです?お嬢様方もいかがですか?もうルールは分かったでしょう?」
「私、やる!」
シャンヌがルークの横の椅子にちょこんと腰掛けた。
「それじゃ、私も」
リビアもルークの左隣に腰掛ける。
「ではコインを賭けてください」
シャンヌは2枚、ルークは3枚、リビアは2枚をそれぞれかけた。
<ブラック・ジャック>は『21』に近づけば勝ちというゲームである。絵札を10とし、エースは1又は11とカウントする。初めに2枚が配られ、その時点で『21』になっていたら、その人の勝ち。またプレイヤーは『21』になるまでカードをもらうことが出来るが、『21』を超えてしまうと先程のルークのように負けとなる。掛け金は2倍のみ。
ディーラーがカードをオープンの状態で配っていく。2枚ずつ配り終えたところでシャンヌが13、ルークが9、リビアが15、ディーラーが14だった。
「カードを引きますか?」
シャンヌは一枚カードをもらった。ハートのクイーン。
「あ〜あ。ドボンしちゃった〜。運がないなぁ〜!」
ルークは2枚もらった。クローバーのジャックとダイヤの9。
「げ〜〜〜!1枚にすればよかった〜〜!!」
リビアも1枚もらった。出た数は5。
「あ!やった!20になった!!」
ディーラーも結局19で終わり、リビアの元に掛け金の2倍のコインが置かれた。
「お前、運強いな!」
「ルークがマヌケすぎるだけじゃない?」
クスクスと笑っていると、「リビア」という低い声。振り返るまでもない。
「ディラン!もう、遅かったじゃない」
口を開きかけたリビアより先に、シャンヌがその手を引っ張っていった。
「あのね、ブラック・ジャックしてるの。今、リビアが勝ったとこ。ディランもしよ?」
上目遣いに言われ、普通の男ならここでくらくらとするものなのだろうが、ディランはいたって平然と答える。
「別に、いいけど・・・。それより夕飯はどうするんだ?ルーク、お前、文無しになってたら・・・」
「まだなってねーよ!」
じとっと睨みつけるディランに、ルークは半ば憤慨して叫んだ。そこにポツリとリビアが付け加える。
「・・・まだ、ね。まだ」
「うあ・・・その言い方って・・・・」
嘘泣きを始めるルーク。それを見て、シャンヌがくすくすと笑っている。
「それじゃあ、ご飯を誰に奢ってもらうかで勝負をしてみない?これに負けた人が奢ること!」
「あ!それ、おもしろそう」
「よっしゃ!のった!ディランもやろうぜ!」
「分かった」
リビアの提案に、ディランも頷き椅子に座る。
かくて、夕飯を賭けた戦いは白熱し、ルークの『泣きの1回』を含めた全10回戦は―――ルークの全敗で幕を閉じた。