第19話
チン
ディランの乗った動く箱の扉は21階で開いた。目の前には綺麗な女性がにこやかな顔でこちらを見ている。
「いらっしゃいませ。こちらはホテルのフロントでございます。ご宿泊なさいますか?」
ディランを見るなり、そう声を掛けてきた。ディランは「ああ」と言い、カウンターに近づく。
「でも、まず予約を取りたいんだが・・・」
「畏まりました。では、これにご記帳ください」
出された紙には代表者名、宿泊者名などがあった。面倒くさいな、と思いつつも、ディランはそれを書いていく。
「部屋は2部屋にしてくれないか?どちらもツインで」
「畏まりました。明日の朝食はどうなさいますか?」
最先端の機械を使い、受付の女性はディランに問う。ディランは眉を寄せた。
「あー・・・・できればそうしたいんだが・・・。それ込みだと値が張るだろう?ここにはコ
イン40枚しかないから・・・」
「問題ございません。デラックスツインにしない限り、そのお値段で朝食もご用意できます」
にっこりと微笑む女性に、ディランはほっと胸を撫で下ろした。
(シャンヌに文句を言われないで済みそうだな)
ディランは朝食込みのツインの部屋を二つ予約すると、チェックインの時刻を伝えた。いつ
でもチェックインできるのは嬉しいことだった。
「それではお待ちしております。カジノ楽しんでくださいね」
下りの箱に乗り込み、ディランは6階のボタンを押した。そして足元のパネルを踏む。一瞬、体の中のものが浮くような感覚に襲われるが、乗り物酔いをしないディランにはそんなこ
とは関係なかった。
(レストランで食事をするとなると・・・コイン10枚は確保しとかないとな。ルークのやつ、もうなくなってるんじゃないだろうな)
自分のコイン袋の中から10枚を取り出し、ポケットに入れる。そうしているうちに、箱は6階に到着した。と、同時に聞きなれた声が響いてくる。
「しまった〜〜!!やっちまった〜〜〜〜!!!」
「・・・・ルーク」
大きなため息をつき、ディランは箱から下りると、その声の方向へ歩き出した。