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第17話

「・・・意外と遠かったな」


「ほんと・・・・」


 ディランの呟きに、リビアが半ばげっそりしながら答えた。青く澄み渡っていた空は、今や淡い群青色に染まっている。薄い桃色の雲がゆっくりと4人の頭上を流れていった。


「まさか真反対に橋が架かってたなんてな〜。どうりでこっちから見えないはずだぜ」


「ルーク・・・それって言い訳?」


「う・・・・・・」


 シースネイルからの逃亡を試みた4人は、そのままカジノ<ラゼルム>に入ろうと思っていたのだが、彼らが到着した場所は建物の裏側。ぐるりと大回りをしているうちに、リビアの足のしびれもとれ、すれ違ったカジノの警備員にシースネイルのことを告げ、お礼を言われたのがつい先程。やっと、4人はカジノの正面入り口前に立っていた。

 煌びやかな看板に「ようこそラゼルムへ!」の文字がチカチカと瞬いている。巨大な高い建物を、見上げたライトが四方から色とりどりに照らしていた。着飾った人々は笑いながら、その入り口に吸い込まれていく。


「ねぇ、早く入りましょうよ!」


 シャンヌがディランの腕を引っ張った。その顔は早く入りたいという好奇心で満ち満ちている。


「・・・わかったよ。でも、お前ら・・・金は持ってるのか?」


「オレは金貨4枚」


「私は金貨7枚と銀貨がちょっと」


 ルークとリビアの返事を聞き、ディランは腕を握っているシャンヌにぎぎぎ・・・と首を捻った。


「お前は・・・?」


「持ってるわけないでしょ!」


「・・・・」


 逆ギレされ、ディランは頭を抱えた。自分のものと合わせると金貨20枚そこそこ。それでどうにかなるレベルではないだろう。ディランがため息をついた、その時、


「それくらいでダイジョーブだよ。建物の階によって、掛け金が違うから」


 入り口の受付の上にある料金表のようなものを見て、リビアが声を上げた。


「前にルークと来たって言ったでしょ?そのときはもっと手持ち少なかったの。でも十分楽しめたよね?ルーク」


「おお!めっちゃ儲かったけど、最後にぜ〜〜んぶ持って行かれたからな」


 にかっと笑うルーク。逆にリビアはため息をついた。


「半分は残しておこうって言ったんだけど、こいつ聞かなくってさ。結局、惨敗。ディランもシャンヌもこいつとだけは一緒にやらないほうがいいよ」


「そうだな」


「うん。そうしとく」


 リビアの言葉にディランとシャンヌが同意するのを聞き、ルークは「ひでぇな〜」と文句を言った。


「絶対、ディランより稼いでやるからな!そしたら今の言葉、撤回しろよ?!」


「ああ。良いぞ」


 ディランは面白そうに口の端を上げた。リビアとシャンヌも顔を見合わせて頷く。

 受付で4人は金貨をコインに換えた。この建物はカジノ・ホテル・レストラン・ショップの4つの部分からなっており、その全てでコインを使う。つまり、金貨や銀貨は使えなくなるのだ。


「金貨20枚でコイン200枚になります。お一人様50枚ずつでよろしいですか?」


「ああ」


 受付のバニーガールの格好をしている女性はディランににこりと笑いかけると、4つの皮袋とパンフレットを手渡した。パンフレットの表紙には『カジノ<ラゼルム>をもっと楽しもう!』と書かれている。


「そちらにも記載しておりますが、この建物の1階から5階までがショップ、6階から15階までがカジノ、16階から20階がレストラン、21階から50階までが宿泊施設となっております。どうぞお楽しみくださいませ」


 ディランはそれぞれに皮袋とパンフレットを渡した。ぱらぱらとパンフレットを捲ってみると、ホテルは一人コイン10枚はいるようだった。


「よっしゃ!んじゃ、かせぐぞ!」


「ちょっと、待て。ルーク」


 ガッツポーズを決めるルークに、ディランは待ったをかけた。


「先にホテルを予約しておいたほうが良いだろ?俺がしとくから、コイン10枚よこせ」


「ええぇぇぇぇぇぇ?!」 


 あからさまに嫌な顔をするルークだったが、しぶしぶ皮の袋の口を開けた。


「しょーがねーな。リビアかシャンヌちゃんと一緒の部屋が・・・・」


『却下』


「・・・・」


 ディランら3人に同時に突っ込まれ、ルークはその先を言うのを止めた。リビアの突き刺さるような視線が怖かったからだ。

 リビアたちからもコインを回収し終わり、やっとディランは「解散」を宣言した。


「カジノは6階から15階だが・・・俺たちができるのは8階までだな。9階からは掛け金がすごいことになってる」


「ほんとだ・・・なんか、桁が違うね」


 シャンヌもディランの手元のパンフレットを覗き込み、頷いた。


「それじゃ、そこをうろうろしてたらいいのよね?迷子になったらどうするの?」


「ホテルの受付で待ってれば良い。探すのは面倒だからな」


「なるほど」


 リビアがコクコクと首を振る。


「なぁ、早く行こうぜ!」


 その場で駆け足をしているルークは今にも飛び出して行きそうな雰囲気だ。ディランは「ああ」と答え、言った。


「それじゃ、解散。ルーク、文無しになるなよ?」


「分かってるって!」


 口を大きく開けて笑うと、ルークはすごい勢いでカジノへと入っていった。


お待たせいたしました。

やっとカジノに到着です。

・・・・長かった・・・・

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