第16話
「はっ!!」
気合いの入った声と共に、ディランはシースネイル5匹を切り付け、倒す。その返す刀で後方に飛びついてきたそれ3匹を切り落とした。
「だっ!!とうっ!!やぁっ!!」
その横で、ルークが十数匹のシースネイルと格闘していた。拳や蹴りにより、それらは水のようにはじけ、虚空へと還っていく。
しぱしぱしぱ・・・・
右手のブーメランを放つと、リビアは口の中で魔法を唱えた。
「『氷結魔法』」
天にかざした右手をシースネイルの群れに向けると、頭上に集まっていた無数の氷の粒が一斉にそこへ降り注いだ。
ヒギィィィン!!
音を立て、凍りつくシースネイル。それを返って来たブーメランが片っ端から壊していった。
「あとちょっとだぜ!!」
ルークの声にリビアは頷いた。あと十数匹。
リビアがブーメランを投げようとした、その時、
「リビア!後ろっ!!」
「えっ?!」
シャンヌの声に振りむいた彼女の右足にシースネイル1匹が噛み付いてきた。一瞬、針に刺されたような痛みのあと、じんわりと感覚が無くなっていく。
「ちょ・・・!!やめてよ!」
右手でそれを掴み、地に投げつける。とたんに足の力がすっと抜け、リビアはそのままぺたりと地面に座ってしまった。
「おいっ!リビア!」
「・・・噛まれちゃった。右足に感覚が無いんだ。ごめん」
「っとに!!しょーがねーな!!」
ルークがリビアの周りにいたそれらを片っ端から片付けていく。それにあまり時間はかからなかった。
「はっ!!」
最後の1匹を無へと還らせ、ディランは長剣を鞘に収めた。シャンヌがカメから降り、まっすぐにリビアの元へと駆けつける。
「大丈夫?」
「うん。痛みはないんだけど・・・・もうちょっとかな」
右足を触っては見るものの、人形を触っているようでリビアは顔をしかめた。
「フツー噛まれるか?あんなヤツに」
「ごめん。ルーク」
すまなそうな顔をするリビア。ルークは肩をすくめた。
「謝るこたぁねーって。もうちっとゆっくりしていけばいいだけだしな」
「・・・そうもいかないかもな」
ディランは川を見ながらぽつりと呟いた。
「どういうこと?」
「第2陣がくる」
ディランの言葉にルーク、リビア、シャンヌの3人は川を見、そしてほぼ同時に声を上げた。
『シースネイル!!』
波が立っている。その波の中には煌めく小さな生き物の姿。
「どーするよ?!ディラン。いちいちやってたらキリ無いぜ?」
「・・・そうだな」
川とリビアを交互に見つめていたディランは、無言のままリビアに近づいていった。
「なに?」
彼女の問いかけも無視し、ディランはそのまま彼女を横向きに抱きかかえた。丁度、お姫様抱っこの形になる。
「うわっ!ちょ・・・・ちょっと、何やってるのよ?!」
顔を真っ赤に染めたリビアはディランを見上げた。ディランのドアップに、リビアの胸は何故か早鐘を打ち始める。そんな彼女をディランはちらりと見て、言った。
「あんなのといちいち戦う義理はないだろ。それなら、この場から早く移動しないとな」
「でも・・・」
尚も渋るリビア。困ったように視線をさまよわせる。すると、
「もしもーし。お二人さん」
つんつんとディランを肩を突き、ルークが進み出た。
「オレにはな〜〜んの相談も無しってワケ?」
「・・・お前が運ぶか?」
「オレはその方が良いけどな」
ニカッと笑うと、ルークはリビアを見た。リビアとしてもその方が心臓には悪くは無いだろう。ルークからディランに視線を移すと、そのディランとばっちり目が合ってしまった。
「あ・・・」
思わず声が出てしまい、リビアは再び顔を背けた。それをどう思ったのか、ディランは「分かった」と言い、リビアをゆっくり地へ下ろす。
「んじゃ、おんぶと抱っこ、どっちがいい?」
ディランに代わり近づいてきたルークが笑顔で訊いてきた。それにあからさまに嫌な顔をして、リビアは声を絞り出す。
「う・・・・・おんぶ」
「よし」
ルークはにっこり笑うと、彼女を背におぶり、迫り来るシースネイルからの逃亡を試みた。
なかなか更新できなくて申し訳ございません(泣)
テンポを上げていきたいのですが、なかなか忙しく・・・すみません。
まだまだお話は続きますので、これからも気長にお待ちください。