第11話
マトゥーラを出たのは昼近くだった。あれから、ルークとリビアは旅支度をしなければならず、それの準備に時間がかかったのだ。2人は少しの食料と着替えをナップサックに詰め込み持ってきていた。もちろん、ディランとシャンヌのものもある。シャンヌが荷物を持たないため、ディラン一人に持たせていたのだが・・・。
村を出るときに、リビアはディランの母に注意をしていた。
「いい?モンスターが出てきたら村の西の洞穴に隠れてね?」
「分かった分かった。早く行きなさい」
「それから、私の畑は自由に使っていいから!イチゴも食べてね!」
「はいはい。行った行った」
追い立てられるように村を出た四人。リビアは時折村を振り返っていた。
(おばさんたち・・・ダイジョーブかな?ちゃんと出きるかな・・・)
視線を前方に移すとシャンヌがディランに寄り添って歩いていた。彼女の横にルークもくっついている。
(もし、村がモンスターに襲われたら・・・)
思いため息をついたそのとき、
「リビア。そんなに心配なら帰ってもいいんだぞ?」
ディランの言葉にリビアはうつむく。
「・・・心配は心配だけど・・・」
「ダイジョーブって!リビア!親父達がいるだろ?きっとおばさんはディランの親父さんを呼び戻すって」
ルークの明るい声にリビアも少し元気が出たのか、「そうだよね」と呟いた。しかし、ディランはリビアの反応よりも、ルークの言葉が気になった。
「ルーク、親父、どっかに行ってるのか?そういえば家にいなかったみたいだけど・・・」
「ああ、おじさん、今出張中なんだって。オーガスタのどっかで教えてるみたいだぜ?」
(へぇ〜・・今度はオーガスタか・・・)
ディランの父は教師をしていた。特に<剣士>としての技術を。しかしそれをディランや兄のロイドに教えたことはなかった。彼が言うには「息子だからと贔屓する気は無い」のだそうだ。
「おじさんが早く帰ってくればいいのに」
「ま、なんとかなるんじゃねーか?」
ルークに肩をたたかれたリビアは吹っ切れたように大きく頷いた。それを見てシャンヌもにっこりと笑う。
「たまには都にでも行かなきゃ!かっこいい人が見つかるかもよ?ね?ディラン」
「・・・さぁな」
「んもう!照れちゃって!」
言うとシャンヌはディランの腕をギュッと抱きしめる。ディランは顔をしかめた。
「おい。歩きにくいだろ?」
「いーじゃん!ディランのケチ!!」
「お〜お〜!ラブラブじゃね?」
前を歩くディランとシャンヌの二人を見てからかうルーク。リビアはそんな彼らから視線をそらした。
(・・・なんかムカつく・・・のは、ナゼ?)
ディランは嫌がっているがシャンヌはディランに絡み付いている。それを羨ましそうに見ていたルークに、リビアは声を掛けた。
「行こっ。ルーク」
そして、ルークの手を握る。久し振りに握った手は大きく暖かかった。
「ラブラブな二人にはついていけないよ」
「だな!オレらもラブラブといきますかっ!」
言いつつも半ば引っ張られるようにルークはリビアに手を引かれ、ディランたちの前へとずんずん歩いていく。それを見てディランは目を丸くした。
「・・・お前ら・・・付き合ってるのか?」
「そんなこと、ディランには関係ないんじゃない?」
ルークに代わりリビアが言い放つ。
「あなたはシャンヌの護衛なんでしょ?きちっと守ってあげなくちゃ!!」
プイとディランから顔を背けるリビア。彼女たちを見つめているディランに今度はシャンヌが問うた。
「・・・気になるの?」
「・・・別に」
「そ。なら良かった」
にっこりと笑い、腕を抱く手に力が入る。
(俺には関係ない・・・か)
心の中がもやもやしている。こんな気持ちは初めてだった。
(・・・・変な感じだ・・・。病気か?)
そんなことを思いながら、ディランは前を行くリビアとルークの繋がれた手をいつまでも見つめていた。