プロローグ
道を行く、大小の人影が2つ。
「なぁ、エン。」
大きい影が、小さい影に話しかける。
「何?ヤヒロ。」
大きい影はヤヒロ、小さい影はエンと言うらしい。
ヤヒロは17歳ほどの青年で、旅人の風体である。この世界では一般的な、よくいる青年だ。
エンは青年の隣で異彩を放っている。旅をするには幼すぎる容姿、前髪の隙間から見え隠れする一本の角。
華やかな和服のような衣服を身に纏うその姿はさながら蝶のよう。
あまりに似合わない二人の間に流れる雰囲気は、どこまでも、どこまでも、穏やか。
「次は、どこに行こうかねぇ。」
「どこでもいい。ヤヒロがいれば、それで。」
「それは困った。まだ、旅を終えるのは嫌だからね。」
心底楽しそうに青年が笑う。そのやり取りこそが、少女との時間が全てであるかのように。
その隣で、少女もまた微笑む。彼との時間、彼こそが全てであるかのように。
「道があるなら、どこかに繋がってる…でしょ?」
「その通り。もう少しで次の町か村だろうしね。」
「その前に、ごはん。」
「はいはい。安全確認してからね。」
「もうしてるくせに。」
何を言っているのかと少女が呆れたように苦笑する。
魔物や天敵の闊歩する世界で、彼らはのんびりとその時を楽しむ。
何者にも囚われず、ただ自由に、その日々を。
書き始めました。ゆっくり更新していきます。