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警告

「バカなんじゃないんですか?」


「――え?」


 突然の罵倒に、少女の美しさに見惚れていた黒羽は意識を取り戻す。少女は表情を変えず淡々と言葉を続けた。


「あなた、あの数の能力者相手に颯爽と現れて、私を助けたつもりかもしれませんけど。もしあの中に本当に危険な能力を持つ人がいたらどうするつもりだったんですか?」


「そ、それは……確かに少しリスクはあったけど、襲われている人を何もせず見過ごす事なんて出来ないよ。それに――」


「私はそこがバカだと言っているんです。なんでそんな高いリスクを冒してまで私を助けたのかってことです。出来てまだ日が浅いこの()()()では治安機構がまだ完全には機能していません。そんな中、彼らみたいなのを一々相手してたらそれこそキリがありませんよ。――無能力のあなたならなおさら。」


「――――!?僕が羽無しだってなんで知ってるんですか。」


黒羽がそう言うと少女は大きなため息をつき、あきれ顔で話を続ける。


「はあ、やっぱり貴方バカですね。カマをかけたんですよ。私をあそこから連れ出した時に貴方は能力を使用した形跡がありませんでしたから、もしかしたらと思ったらやっぱりそうなんですね。無能力ならなおさら危険じゃないですか。あそこは私を見捨てるか、人をもっと呼んで彼らを追い払うかするべきです。」


少女の答えに羞恥を覚え顔を赤らめながら、しかし黒羽はその指摘に納得いかず反論する。


「た、確かに人を呼ぶべきだったかもしれないけど、その間に彼らが君に暴力を振るうかもしれないし…」


「――――平行線ですね、まあいいです。貴方が考えを改めないというのなら、私が何を言っても無駄ですから。だけど、こんな事続けてたらいつかあなた死にますよ。」


少女のその言葉に、黒羽は反論出来ず悲しげに顔を伏せる。


「はあ、まあ貴方がお人よしだったおかげであまりめんどくさいことにはならなかったですから、私にとっては良かったですけどね。余計なお世話であることには変わりませんけど。」


「うっ……まあでもやっぱり僕は君に怪我がなくて良かったって思うよ。」


「だから!そういうのが余計なお世話だと……もういいです。それじゃ私はそろそろ帰りますね。」


少女はそう言うと、黒羽に背を向け歩き出す。しかしその瞬間、大きな警報音が島全体に鳴り響いた。


「警告、マニュアルSの非常事態宣言。一般の生徒は速やかに教師に従い、校舎の避難場所に集まってください。教師は所定の場所に付き、生徒に避難指示を出してください。繰り返します、一般の生徒は――」


警告音に続き、このような避難アナウンスが島全体に流れる。


「い、一体何が…ね、ねえ君!何か大変みたいだ。とりあえず校舎まで行こ――」


黒羽が少女に語り掛けるが、一切彼女の耳には入っていないようだった。少女は俯き、独り言をつぶやいている。


「マニュアルSが発令?どれだけヤバい非常事態なんですか……ここから一番近い合流地点は……いや、まず本部に集合でしたか……」


「ねえ、急いで避難しないと!」


「――――私にはやらなくてはいけない事があります。貴方はまっすぐ避難場所へ向かってください。」


「な、一体何を……。」


「あなたに言うべきことではありません、それでは。」


「ちょっ!待ってよ!」


 黒羽の静止を振り切り、彼女は校舎と別の方向へ走り出す。黒羽は彼女を追いかけようと思ったが、先 ほどの彼女の指摘と、避難所へ向かうように指示を出した時の彼女の深刻な表情を思い出し、足を動かすことが出来なかった。


「ねえ、君の名前だけでも教えてよ!」


黒羽は走る彼女の背中にそう問いかけたが、彼女はそれに答えない。

港には黒羽ただ一人が残された。

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