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模擬戦闘

 天咲と黒羽は、トレーニングを2時間で切り上げた後、バーチャルフロアへと訪れた。バーチャルフロアの模擬戦闘室は小さな体育館程の広さがある真っ白で広大な部屋となっている。2人は頭にヘッドホンとサンバイザーが合わさった様な機械を装着していた。

 この機械は、現実拡張デバイスと呼ばれており、バーチャルフロアで使用する事で、様々な環境、また現実にはない物体を存在する様に使用者に感じさせる事ができ、様々な状況をリアルに再現し戦闘訓練をより実践的に行う事ができるシステムとして利用されている。


「黒羽、それじゃあ環境を市街地に設定、私のデバイスと同期してくれ。」


「はい、わかりました。」


 黒羽がデバイスを操作して天咲の機器と同期すると、黒羽の目には真っ白だった景色から一変し、大小様々な家が立ち並ぶ市街地が映し出される。これによって相手がした行動が、景色や体感としてお互いに伝わるようになる。


「それで天咲先輩、まず何をしますか?」


「ああそうだな、まずは……こうだっ!」


天咲がそう言うと、黒羽に向かって一軒の家屋から鉄骨が一直線に飛んでくる!


「――――うわあっ!」


黒羽は右側にジャンプすることで間一髪躱すと、天咲に抗議の目線を向ける。躱した鉄骨は地面に深々と突き刺ささっており、もし当たったらどうなっていたかは想像に難くない。


「い、いきなり何するんですか!当たったら即死ですよ!?」


そう、先ほどの鉄骨は天咲の能力、『磁界(マグナ・フィールド)』によって飛ばされた物だ。この能力によって、彼女は自分の周囲一定にある金属を磁力によって自在に操ることが出来る。


「なあに、この鉄骨はしょせん電子データだ、当たっても死にはしないよ。ただ君の脳が錯覚して少しは痛むかもしれないが。」


この現実拡張デバイスは脳とリンクしているため、ある程度の五感は再現してしまう。この模擬戦闘室では痛覚判定を50パーセントまでに制限しているため、現実での痛みをそのまま感じるわけではないが、それでももしあの鉄骨が当たれば相当な痛みを感じるだろう。


「僕の能力を発現させる手伝いをしてくれるんじゃなかったんですか――――ってまたっ!?」


黒羽の抗議を無視して二本目の鉄骨が家屋から飛んでくる。無理やり二本も鉄骨が抜かれた家はすでに見るも無残な姿になっているが、天咲は全く気にするそぶりはないようだ。

黒羽は、今度は左に跳ぶことでギリギリ躱すことに成功した。そこで天咲が語り始める。


「――流石だね。君はやはり驚異的な戦闘センスを持っている。私は今の二本は確実に当たるように発射した。だけど君はそれを持ち前の瞬発力と判断力で躱したわけだ。それほどの戦闘に対する適応力は普通は持ち得ていないものだ。」


「―――ですが、いくら訓練を積んで戦闘がうまかったところで、能力がないと()()に対抗するのは……」


「私はそんなことはないと思うがね、君ほどの実力があればあいつら相手でもそれなりに戦えるだろうさ……」


 天咲のその言葉に、黒羽は複雑な感情を抱く。自分の戦闘能力が褒められるのはうれしいが、しかし彼はもっと力を必要としていた。そんな彼には素直に先ほどの言葉を受け取ることが出来ない。


「――天咲さんは僕を励ますためにこんなことをしてるんですか?それならもう止めたほうが」


「いや、そんなことはないさ。私は逆に考えたのさ。」


「逆……ですか?」


「ああ、君の体、そして脳は無意識下で安心してるんじゃないかと思ったんだよ。能力がなくても自分はやっていける。能力がなくても自分は()()()()()()()。そんな風に体が勝手に君自身にセーブをかけてしまっているんじゃないか、とね。」


「――――僕自身が本当に能力を必要とすれば。」


「ああそうだ。体がセーブを外して自然と力を使ってるって訳さ。つまり……」


「――つまり?」


「君が能力を使わないと死ぬ所まで、私が追い詰めてあげよう。」


天咲がそう言うと、鉄骨が一本どころではなく何本も黒羽に向かって飛んでくる。


「っく!?うおおおおっ!!」


先ほどより明らかに広範囲にわたる攻撃を躱すため、黒羽は前へと走り出す。


(ほう?前に躱すことで私との距離を詰め、接近戦に持ち込むつもりか。だがそれは……)


「甘いぞ黒羽!」


 天咲がそう言うと、黒羽が彼女に向かって走ろうとしたルートに鉄骨が上から飛来し、黒羽の足を強制的に止めさせる。


(くそっ!完全にルートを予測されてる!)


 黒羽が走り抜けようとした道は、すでに鉄骨のカーテンが出来上がっており、容易に抜けることが出来なくなっていた。また、彼女の周りにも結構な数の鉄骨が刺さっており、容易に接近することはできなそうだ。


(このまま時間が経てば鉄の檻に閉じ込められる……っそうだ!)


 黒羽は何を考えたのか、前に走るのを止め、左の家屋の中へと走り出した。玄関のカギは開いており、勢いよく黒羽は家へと飛び込む。


(なるほど、今度は私から身を隠し隙を伺うつもりか、だが。)


「それはもっと甘いな、黒羽。」


 鉄骨が抜かれていなかったのか、どこも傷ついていない状態だった家屋は天咲が手をかざすだけで見るも無残な形へと壊れていく。屋根が崩れ、柱が折れ、最終的にぺしゃんこになったこの状態で、中で黒羽が身動きが取れるような状態とは考えられない。


「現代の建築物は鉄で出来ているといってもいい。そんな中に飛び込むというのは、私の好きにしてくれと言っているようなものだ。」

 

 天咲がそう言うと、最後の仕上げといったようにすでにボロボロな家に鉄骨が何本も飛来し、突き刺さる。それはまるで黒羽の墓標のようにも見えた。


(さて、黒羽のデータを確認してやるか、何回かこの修羅場を繰り返させればあいつもいつか能力が覚醒……っ!?)


天咲が黒羽のバイタルデータを確認すると、そこにはほとんど傷を負っていない黒羽のデータが確認できた。


(一体どういうことだ?この家の中にいて無傷で済むわけが―――まさかっ!?)


 天咲は急いで先ほど自分が壊した家へと走る。しかし、家の中を確認するまでもなくすでにその家から離脱し、それなりに離れた距離を急いで走る黒羽の姿が見えた。


「くそっ!?」

悔しそうな声を上げると、天咲も黒羽を追いかけ走り出す。訓練はまだ始まったばかりだ。


四話に誤表記があった為訂正しました。混乱させてしまっていたら申し訳ないです。

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