第5話 龍姫転生①ー初めての異世界へ
それは突然来た災厄だった…。
それは意思を持った災害だった…。
その厄災に名は…。竜種…。
私の村は山脈の麓に広がった森の中にあった。
山には竜種が住むと年老いた者は言うが、実際に見たことは無いようだった。
私は父と母、それに妹と暮らしていた。
私も母のようにこの何も無い村で結婚し、子を産み、育てていくのだと曖昧ながら思っていた。
妹は何も無い村を嫌い、大きくなったら村を出るのだと息巻いていた。
そう、その生活はささやかであったが幸せなものだった。
あの災厄が来るまでは…。
妹はその爪で殺された…。
父は喰われ、母は私を庇って息吹を浴びて死んだ…。
私ももうすぐ喰われ死ぬのだろう…。
足は母が庇ってくれた息吹を浴びて無くなっている…。
悔しい、何も出来ないのが悔しい…。
妹を守ってあげられなかった…。
父が喰われるのを見捨てて逃げるしか出来なかった…。
竜種に復讐することが出来ないのが悔しい…。
死にたくない…、まだ死ねない…。
竜種にどんな細やか傷でもいいから付けるまでは死ねない…。
力が欲しい…。竜種を殺すだけの、復讐するだけの力が欲しい…。
「力が欲しいかい?」
そして、あの人が現れた…。
◆
「さて、じゃぁちょっと行ってくるわ。」
戦闘技術についてある程度納得がいくレベルまで成長できたような気がするので、能力の検証も兼ねて詩篇世界へ一度降りてみることにした。
「ほいほ〜い。行ってらっしゃ〜い。」
「行ってらっしゃいませ。御主人さま。」
「ジークさま、いってらっしゃい。お土産待ってる!」
「ジークにいちゃん、いってらっしゃい。お土産よろしく…。」
見送りはメタトロンとコレット、それにドリーとエマだ。
アル、ベティ、チェスターは仕事中。
「良い子で待ってられたらな。
『世界の扉【ワールド・ゲート】』オープン!」
始めて発動させたが、扉というだけあって妙に装飾過多な扉が出現した。
何だろう、所謂もやみたいなのを想像してたので、逆に驚いた。
後ろでメタトロンがドヤ顔してる様な気がするが、とりあえず無視しておこう。
「行ってきます。」
そう言って扉を開ける。
さて、初の異世界はどんな世界なんだろうか。
◆
扉をくぐった瞬間、何かに引っ張られるような感覚がしたが無事にぬけるとそこは森の中だった。
一瞬、何◯でもド◯かと思ったのは内緒だ。
さて、詩篇世界に降りたらまず行おうと思っていたのがステータス確認だ。
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名前:ジークフリード・ランベルト
種族:人族
職業:なし
体力:99999999
魔力:99999999
筋力:3000
知力:4500
敏捷:4500
器用:3000
スキル
斧術、槌術、槍術、棍術、杖術
格闘術、召喚魔法、時空魔術、魔眼
加護
神の加護、精霊の加護、妖精の加護
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突っ込みどころ満載に振り切れてる気がする。
まぁ、現地の人と比べて無いので詳細は不明だが。
「しかし、魔眼って何だ?」
試しに目の前の巨木に使ってみる。
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杉の大木
一般的な杉の木
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ふむ、鑑定スキルということは『神の眼【アイズ】』のことだろう。
ということは、時空魔術は『世界の扉【ワールド・ゲート】』のことだろう。
詩篇世界でおかしくないように変換されるのか。
「……けて…。」
「し……たく…ない…。」
「に……げ…ろ…。」
いきなり頭の中に声が響いた。
何事かと周りを確認するが特に異変はない。
ただ、ある方向を向くと声がきこえる。
(これが詩篇登場人物の死の声…?)
思い当たるのはそれ位しかない。
なんかヴァ◯キリー・プロ◯ァイルみたいだ。
「死にたくない…。力が欲しい…。」
他のと違いなんか面白い声も聞こえる。
さて、こいつはどんな人物なんだろう?
興味が湧いたので全力で声の方向に突っ込んでいく。
さて、鬼が出るか、蛇が出るか…。
メインヒロイン登場です。
まだ、名前も出ていませんが…。
切りが良かったので、若干短めです。