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黒猫、異世界へ旅立つ

連載はじまったばかりなのに日常が忙しくて投稿がままならないとか笑えない…


『そんなことないですわ!こちらこそひよりと同じなんて光栄ですもの嬉しいの!だからひよりには(わたくし)世界(レーベンヴォール)で不自由なく生涯を過ごしてほしい。そのためにも、私からささやかながら加護を授けますわ!』



そう言ってアルミスは嬉しそうにわたしの両手をとったー…





「…?加護…?」



それに対してわたしが頭で疑問符を飛ばしてると、アルミスは一層笑みを深めて言葉を紡いだーー…





















【創造主アルミスの名の元に、汝に最大限の加護を与えるー…


()(さか)る‘火’は創造と破壊


揺蕩(たゆた)う‘水’は浄化と再生


吹き抜ける‘風’には自由を


豊かな‘土’には繁栄を


自然の力は‘木’に宿り


(せい)なる‘光’は(いや)しを与える


生きとし生けるモノ‘闇’に(かえ)りし時


生命(せいめい)(みな)等しく


永遠(えいえん)時間(とき)と安寧を与えられるだろうーー…】












アルミスが紡ぐ普通に話す声と違った響きの声に耳を傾けていると、言葉を紡ぐたびに不思議な力がわたしの身体に流れ混んでくるのを感じた。



そして、アルミスから最後の言葉が紡がれた時、今まで淡く光っていた身体がより一層強く光り、一瞬目の前が真っ白になると光が治まった時には先程と変わらない景色に戻ったのだったー…












「…今のが、加護…?」



わたしは、無意識に(つぶや)く。




『はい!そうですわ!日和には7属性の加護を授けました!』


その呟きを拾いアルミスは(こた)える。




「…7属性ってアルミスの世界にある…?」



『はい!正解です!ひよりにはその7属性の力が同じだけ使える様にしたのです。実を言うと、私の世界(レーベンヴォール)では通常、一人が操れる魔法の種類は自分の生まれ持った属性だけなのが一般的なのですわ。稀に魔法に特化した種族であるエルフなどは複数操ることが可能な場合もあります。この違いは潜在的魔力が関係していて、魔力が多いほど操れる属性も多くなります。その点でひよりは私と同等の魔力があります。しかし、ひよりのいた世界には魔法がなかったため魔力を感じ取ることがなかったかと思います。ですので、私から加護という形で日和に魔力を授け、魔力を感じて頂き潜在的な魔力を呼び覚ましました。』




そこまで聴いてわたしはアルミスの行動の意味を理解した。


確かにアルミスから加護を授かってから自分の中に魔力とやらを感じられる様になっていた。





「確かに力は感じる。これが魔力…、ってことは魔法はこの魔力を操れれば使えるのね?」



『はい!そうですわ!魔法についても説明しますね!』











そこから魔法について説明を受けた。





説明を要約すると、、




1、魔法はイメージが大切

2、魔法を使う際には呪文の詠唱またはイメージから浮かんだ言葉を発する必要がある。(イメージがしっかりしてれば無詠唱も可能)

3、属性を組み合わせることで混合魔法が使える(組み合わせ無限大)

4、幻獣や妖精などを召喚することができる(召喚したモノと契約することも可能)




…とのこと。







「へぇ、魔法って可能性がある反面、危険も伴うね。」




『…はい、実をいうとひよりのいう通り、魔法は良い事象ばかり起こせるモノではありません。時として大き過ぎる力は害にしかならないのです。実際に魔法を使って悪事を働く者がいるのは否定できません…。』





そう付け加えたアルミスは落ち込むようにしゅーんとする。


そんなアルミスを、神を持ち上げるなんてちょっと失礼かなと内心考えながらも、ハイルを抱くように抱き上げ、片腕に座らせるように体勢を変える…



「まぁ、そうだろうね。わたしがいた世界でもそれはかわらなかったし。ただ、わたしとアルミスの世界とでは、傷つける手段が違うだけなんだと思う。人為的なのか、魔法を使うのかね。」


アルミスはその言葉に目を見開いた。


「これから行く所がどんなモノなのか想像しかできないけど、アルミスが造った世界だし、きっとわたしにとっては何があっても楽しい世界だよ。アルミスと話してそう思った。」


それでも構わずにわたしは思ったことを伝える。


「それに、住んでる世界が違うから文化や風習、それぞれの考え方が違うのは当たり前。感情が豊かだから喜怒哀楽もある。


要はそれぞれ何を考えて自分の(せい)をどう(まっと)うするかなんだよ。」


今言ったことは生きてきた中でずっと思ってることだ。


「だから、魔法を造った側が悪いわけじゃなくて、魔法を得てどう使うかを選択したコチラ側に責任があると思う。


でも、悪い事に魔法が使われてるからと言って目を逸らしてしまうのはいけないよ?造った側は管理者として、良い事も悪い事も見届ける義務があるのだから。」


最後に1番アルミスに伝えたかった言葉を伝え、頭をできるだけ優しく撫でた。



『…はい、そうですわね…、私は自分の使命をしっかり考えられてなかったようですわ…、ひよりの考え、言葉を聴いて考えさせられることがたくさんありました。私はまだまだ未熟ですわ。』


「ん。それが解っているのなら十分。誰しも間違わないことはないし、間違いから学ぶ事もあるからね。学んだことは次に活かせる。、前進できるってことだよ。よかったねアルミス?(微笑」



『!はい!』



ここに来てはじめて微笑みを混じえて語りかけるとアルミスは暗い顔を満面の笑みに変えて返してくれた。






『今度は間違いません!その一歩として、私の世界(レーベルヴォール)で生きるひよりを生のある限り見守りましょう。何があっても目を逸らしたりしませんわ!』



そう言ってアルミスはわたしの首に抱きついて猫の様に頭をすり寄せる。




「あぁ、ありがとう。」




わたしは妹ができた様に微笑ましく思いながら頭をなでたのだったーー…




































「…さて、名残惜しいけどそろそろアルミスの世界へ行こうかな…?」



あれからアルミス、ハイルと戯れて一段落ついた頃わたしはそう切り出した。




『!…そうでしたわ、そろそろひよりを転生させなければならなかったのでした…、時間が経つのはこんなにも早かったのですね…、』



わたしの言葉にアルミスははっとしたように呟き、寂しそうに遠い眼をした。



「ん。楽しい時間ほどね。でも、これで終わりではないよ?」



『…?』




アルミスは小首を(かし)げる。そんな反応が愛おしくてついつい頭を撫でた。





「この別れは“さよなら”じゃなくて“またね”ってことだよ。」



『!…またね…、』




「それでも寂しいなら、わたしからアルミスとハイルに約束の証をあげるー…」





わたしはこの時始めて魔法を使ったー…



















【美月日和は此処に誓うー…


例え遠くに居ようとも


例え声が聴こえなくても


例え姿が見えなくても


貴方達を忘れることはないだろう



創造の火と再生の水をもって(かね)を打ち


自由の風をもって音を伝え


繁栄の土と自然の木をもって花を咲かせ


癒しの光と安寧の闇をもって安らぎを与えんーー…


わたしから貴方達に永遠(エターナル)約束(プロミス)をーー…】














魔法はイメージが大切らしいから想いを込めて丁寧に魔力を操る。







シャランー…


最後の言葉を紡ぐと澄んだ音が響いた。

それはまるで澄んだ水の様な…、それでいてそよ風で揺れる風鈴の様な音だった。








「…ふぅ、成功だね。イメージ通りできた。」




わたしはイメージ通りできた約束の証を眺めて満足した。






『!これは…!』


《ニャーン!》


わたしが眺めた先、(もとい)、アルミスの髪とハイルの首には、パステルカラーの大小バラバラな7色の華が散りばめられた髪飾りと首輪に、鈴をベースにした銀の球体が揺れるように2つ付いていた。球体には(つた)と花をモチーフにした透かし彫りが施されキラキラ輝いて揺れる度に綺麗な音を奏でている。




「わたしからの約束の証。気に入ってもらえた?因みにわたしとお揃いね。」


そう言ってわたしは自分の耳が見えるように髪を耳にかける。そこには花飾りがないバージョンのピアスが両耳についていた。




『!すごく、すごーく!気に入りましたわ!ひよりありがとう!』


《ニャー!ニャーン!》



アルミスは頬を染めながら嬉しそうに抱きついてきて、ハイルはわたしの足に擦り寄って尻尾を絡めたのだった。





































『それでは改めて、今からひよりの転生をはじめますわ。転生場所は私の世界(レーベンヴォール)(クリーレンブリューテ)。本当は街までお送りしたいのだけれど、人目につくのはなるべく避けたいので、ごめんなさい…。』



「どこでもいいよ。旅するのに変わりないから。それに、森でなら魔法も試せるし好都合でしょ。」



『ふふ、そうね!日和ありがとう。それじゃあー…』





アルミスは私から少し距離をとり瞳を閉じた。そして一呼吸おいてから、両手を祈る様に組み合わせ呪文を唱えた。




















【創造主アルミスの名の元に果なき道を(しめ)すー…


()の地は(はる)か遠く果なき道


遠く及ばぬ()の地まで


輝く光は道標(みちしるべ)ー…】










アルミスの言葉に反応して魔法が発動する。

それに合わせてわたしの意識が少しずつ薄れて行くのがわかった。



わたしは抗うことなく身を任せつつ目を閉じたーー…





『…ひよりーーー、』






目を閉じた後聴こえたアルミスの言葉を最期に意識は完全にフェードアウトしたーー……





アルミスからの最期の言葉は“またね”確かにそう聴こえた気がしたーー…







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