黒猫、願われる。
別視点です。
俺は、目の前で起こっていることを信じられない気持ちで眺めていた。
あんなにも頑丈で壊そうとしても壊せなかった枷が指を添えて魔力を注いだだけで意図も簡単にはずれたのだ…。普通にびっくりするだろ?
そんな俺に平然と声をかけて手の調子なんて聞いてくるしつくづく調子が狂う。
『ん。』
バサッ
俺が思考の海に沈んでいると途端に視界が暗くなった。
急すぎてなんの天変地異かと思ったがそれはどうやら布で、ちょっと必死にもがき、顔だけ出した。
そんな俺に何事もなかったようにローブと食いもんを渡したかと思うと返さなくていいとか、消化に良いも食えとか終いには“すまん”とか謝って来やがるし…
本当にもうこいつ人か?もしや化かされてるんじゃないか?と疑心暗鬼に陥りそうになりつつも断りの言葉を口にした。
のだが、次に呟かれたそいつ言葉に首を傾げることになった。
『…この世に偶然はなく、物事は必然的に起こるらしい。』
あまりにも唐突すぎて困惑するばかりだったが、そいつはゆっくり語りかけるように言葉を紡いでいった。
『目の前で起こっている物事に無駄なことはなくて、何かしらの意味があるらしい。だから、君との出会いは必然だったんだと思う。
君が追われてこの森に迷い混んだのも、そこにわたしが居て君を助けたのも。それぞれがその瞬間に考えて感じて導き出した結果であって、それは偶然が重なっただけかもしれない。
でも、君が助かるために此処に引き寄せられたのかもしれないし、目の前で消えそうな生命いのちを助けるためにわたしが此処に居たのかもしれないと思うとこの出合いは偶然じゃなかったかも。』
語られていく話を聞いて確かにと納得できるところがあった。不思議だが納得できている自分がいることに驚いている。
『それに誰に強制される訳でもなく自分で思考したり、最善を模索し思うままに行動することはその人の“自由”だ。』
そいつが発した言葉ー…
“自由”
その言葉に俺は心が震えた。
それは俺が欲しくて欲しくて、止まなかったものだった。
生まれてから今まで叶わない願いだと諦めていたものだったからー…
そいつの言葉で俺は初めて自分が今“自由”を手にしているのだと気づいたのだ。
『わたしは“自由”を縛るのも縛られるのも好かない。それに恩を売るつもりもないし、恩は与えるものだ。与えられたものなんだから、貰った恩は返さずに同じように困ってる人に与えなさい。
善い行いは廻めぐって自分に返ってくる。』
そして、こいつはなんて“自由”なんだ…
“自由”で“懐が深い”そう感じた。
俺とそう歳も変わらないだろうに考え方が大人だった。
『まぁ長くなったが、言いたいことはつべこべ言わず受け取れってことだ。』
…ん?んん?大人か?
最後の方、絶対めんどくさくなったよなこいつ?
フードで表情は見えんが、雰囲気が物語っていた…
めんどくさいということを全身に纏っているようだ。
こいつマイペースか?
俺が最後の言葉についてグダグダ考えいるとフワッと仄かに甘く優しい香りが鼻についた。
視界の端にはサラサラな黒い髪が見えて、頭には目の前の奴の手だろうか…?暖かくて柔らかな感触がある。
それに一瞬ビックリしたものの、不思議と嫌な感じはしなかったため振り払いはしなかった。
たぶん、生まれて初めて頭なんて撫でられたかもしれない。それは思いの外心地いいものだったー…
それを誤魔化す様に少し上を見上げると、思いの外近くにそいつの顔があって、ローブの中がチラッと見える。
そこにはあの綺麗なアメジストの瞳があって、一瞬だが目が合った。
合うとフッと少しだけ瞳を和らげながら、頭のてっぺんから耳の付け根まで鋤くように撫でて囁くように言葉を紡いだ。
『…とりあえず寝たほうがいい。
【闇の奏かなでし旋律は
安寧の祝福
安らかな時の中
“眠れ”】』
それは睡眠を誘うような魔法だった。
言葉を紡がれるにつれて瞼は落ちていき、身体の力が抜けていく。
そして身体を支えられていることがわかった。
なんとか眠気に抗おうとしてもダメみたいだ。
そいつが言葉を紡ぎ終えた後、完全に動けなくなったがそいつは木に寄りかからせてくれたらしい。
そして、俺の頭をもう一度撫でて“おやすみ”と一言残し、そいつが離れて行く気配がした。
この出合いは俺にとって初めての衝撃で、世界がガラリと変わった瞬間でもあった。
きっとこの恩を俺は一生忘れないだろう。
そして願わくは、、
あいつのために何かしてやりたいと思った。
そして、俺は微睡みの中に身を任せながら、近い未来、そんな必然が起こればいいと願ったー…
→
文章が纏まらないなぁー




