傭兵な少女との出会い
初めての、投稿ですがよろしくお願いします。
「ダメ商人さーん、そろそろ着くよー。」
ダメ商人さんと呼ばれた青年がゆっくりと顔を上げる。どうやら少し寝ていたらしい。
「ん、あぁ…」青年は一回大きく深呼吸した。
新しい木材の好い香りがする、シンプルな骨組みの馬車の中、周りに広がるのはのどかな農村
前を見ると、軽装の鎧を身に付けた可愛らしい少女が馬車を馴れた手つきで走らせている。
彼女は俗に言う傭兵である。
「そろそろダメ商人さんじゃなくて錬人って呼んでくれよ…。もう一週間になるんだからさ、フィナ?」
そう青年が言うと、フィナと呼ばれた少女傭兵は
「うるさい、ダメ商人。」と即答。
どうやら、今日も名前ですら呼んでもらえないらしい。
もう、一週間もこの調子だ。
周りから見れば男女の関係に見えるらしいが
それは大変な間違いだ。
フィナは錬人のことを心底嫌っている。
その理由は一週間前、錬人がこの世界に来た日にまでさかのぼる。
…一週間前…
錬人は引きこもり気味なただの大学生だった。
得意なことといえばネットゲーム、それ以外には趣味と言えることもなく、運動も苦手だった。
その日はレポート提出が遅れてしまい、教授からこってりと絞られ、帰りが遅くなってしまった日だった。
錬人は急いで帰り支度をして帰ったはずだった。
…えっ?
駅は?人混みは?コンビニは?
大学からの帰り道、いつもの曲がり角にある光景はそこには、なかった。
茂った木々によってできている広大な森林、怪しげな声で鳴く黒い鳥達、そこから日常性は、微塵も感じられなかった。
「と、とりあえず戻ろう。」言うが速いが元来た道の方に振り向くが、
「ない!?」元来た道は、なくなっていた。少し歩いてみるしかし、ただ森が続くばかりだった。
「どうなってんだよぉぉぉ!!」
少し自暴自棄になり大きな声で叫ぶが返事はなかった。
上を見上げるとそこには満天の星空
現代日本ではなかなか見られない光景である。
「ここ、どこだよ…」と一人でつぶやく、すると
「えっ!誰かいるの!?」少女だろうか。錬人は、藁にもすがる思いで叫んだ。
「オォーイ!!ここにいるよー!」しかし返ってきたのは、意外な返事だった。
「危ない!逃げて!」と声の主はまた叫んだ。
危ない?何が?と思ったがそれはすぐにわかった。斜め前の茂みから「それ」が出て来たのだ。
真っ赤な爪をこちらに向け、「それ」は飛び掛かって来た!
「ひ、ひぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
今までに聞いたこともないような悲鳴を上げながらも
飛び掛かって来た「それ」を避けることができた。
錬人は、今日はやたら大声を出してるな、と頭の片隅で考えていた。
が、そんな余裕もすぐに無くなった。
「それ」が向きを変え、また飛び掛かって来たのだ。
もう一度は避けられない、そう直感的に感じた。
来る…!
そう思い目を閉じた。しかし覚悟したはずの痛みはなかった。
「まったく、何をしているの?」
声の主か?そう思いゆっくりと目を開く。
そこには「それ」と思わしき生物の死骸
そして声の主と思われる人物がいた。