屋上
授業の終わりを知らせる馴染みの深い鐘の音がして、読みかけの本から頭を上げる。
学校の屋上は俺を除いて誰もいない。フェンスの向こうには夕日に照らされた住宅街と、遠くには超高層ビルが数本。
田舎ではなく、かといって都会でもない、中途半端な街並み。
そんな景色が何かに似ている気がして俺はあまり好きではないが、この時間のここから見る景色だけは、なんとなく気に入っていた。
「やーっぱ、ここにいたか。」
屋上の入り口に目をやると、そこには茶髪の軽薄そうな奴がいた。まぁ、そうなとは言うが実際、普段は軽薄な奴である。
「どうした?海斗。会計の仕事ならもう終わってるぞ。」
そう言って、本を閉じ立ち上がり、海斗の方へ歩く。
「いんや、生徒会の話じゃねーよ。お届けモン。」
「届けもの?」
「ほらよ」
と、ほひょいっと海斗が投げ寄越したノートを掴み取る。
「陽菜の奴が今日用事が出来たとかで、代わりに返してくれってさー」
来週から中間試験だからその前に返すということだろう。陽菜の奴……こういう所は律儀だな。
「なー真治、暇だろー、久しぶりにどーよ?ギャンブル。小遣い稼ぎにさぁー。」
そして海斗よ、お前は大丈夫か、色々と。将来が心配になってくるぞ。
ギャンブルにはまるのは結構だが、変なお兄さんに追いかけられても、周りの奴らを道連れにしないでくれ、主に俺を。
「いや、やめておくよ。俺は不良な生徒会長殿と違って真面目なんでね。」
「おいおい、授業ほっぽり出してこんなとこで本読んでるよーな奴のどこが真面目なんだよ。」
と扉の前でニタニタしている生徒会長。
「授業時間外にも本を読んでるなんて真面目だろ?」