prologue
後悔など、あるはずがなかった
そんなものが己に許されているとは到底思えない。
ーー否、許されてはならないのだ。
我が選択は他者を犠牲にすることで成り立ち、
この結末は自らの選択の成果《結果》である。
ゆえに、抱くべき念は心を満たす愉悦であり、自己満足でなければならない。
どう、と音がして視界が傾く。
ーーー驚きはなかった。
思えばこの結末を自分はとうに知っていた。
硝煙の香りが当たりに漂い、血液は熱となって傷口から溢れ出る。
だが
おかしな事にそこに痛みという物はなく、
この身体はただの土くれで作られた容器であるかのように自身のヒビ割れを感じている。
排莢口から排出された金属が乾いた音を響かせ、遅れ、鈍い音が耳元から届く。
天から生える幾つもの鉄のカタマリ。
それを、下から光が照らしていた。
「…………ッッ」
なんと言いたかったのだろうか。音は口から漏れてくれなかった。
だから、もう、ダレニモ分からない。
月もビルも霞んでぼやけてしまった。
そんなもうはっきりとしてくれない世界でさえ、次第に黒く塗りつぶされてゆく。
ーーーー体が寒い。
ふいに、ナニカが瞳からこぼれ
景色が鮮明になる。
ーーああ、そうか
気がつかなかった。
今夜は、こんなにも
月が、きれいーーーだーーーーー