初登校、不良との遭遇
俺の名前は山本大和。今日から高校生だ。
田舎から引っ越してきたため、中学の同級生はいない。ボロアパートに一人暮らしなので家族も頼ることはできない……。
ああ……。なんと素晴らしい環境だろうか。
男たるもの常に自らに厳しくいなければいけない。自立はその基本である。人に頼ってばかりでは、この「大和」という名が廃る。俺は強く、たくましく、硬派な日本男児になるのだ。
そんなことを考えながら俺は入学式に向かっている。
駅から学校まで多少距離はあるが、もちろんバスなどは使わない。当然歩く。
道もあまり覚えてないが地図などいらない。直感だ。
高校生があまり見えないが……大丈夫だろう。
しばらく歩いていると、前に女子高校生が見えてきた。
やはりこの道で合っていたようだ。
ん?なんだあれは?
俺の前を歩いていた女子高校生が、ガラの悪い、いわゆる不良というやつに絡まれている。
まったく、世の中には馬鹿が多くて困るな。
「ねえねえ、君、大国高校の生徒だよね? よかったら俺らと遊ばない?」
不良の一人が、やはり馬鹿みたいな誘い文句を言っている。
「す、すみません。学校に行かなくてはいけないので……」
女子高校生が怯えながら答える。
やはり男としてはこのような場面では女性を助けるべきなのだろうな。
だが、厄介事は面倒だな……。
「おい! なに見てんだおまえ!」
不良が叫ぶ。多分、俺に向けての言葉だな。周りには俺しかいないのだから。
「登校の邪魔をするのは良くないと思うぞ」
俺はなるべく相手を刺激しないように注意をしてみた。
「あぁん!? うるせえ! お前に関係ないだろ!」
無駄だったようだ。
「お前、なめてんのか?」
「ぶっとばすぞ、コラ!」
「調子にのってんじゃねえぞ!」
三人の不良が口々に威嚇をしてくる。
どうやら矛先は完全に俺に向いたようだ。この隙に逃げたせば良いと思うのだが、女子高校生はそんな素振りも見せない。たしかに確実に逃げることができるとは限らないからな。
「お前らみたいな奴らは、男として失格だ。群れないとナンパすらできないのか?」
「は!? ぶっとばすぞ!」
「語彙が少ないな。それしか言えないのか?」
「てめえ、本当に殴られたいみたいだな!」
「言葉だけか? 実際に行動に移してみたらどうだ?」
「やってやろうじゃねえか!」
不良が殴りかかってくる。大振りなので動きが読みやすく簡単に避けることが出来た。
どうやらこいつはそんなに強くないみたいだな。
俺は再び殴りかかってきた不良の腕を掴み、ひねりあげた。
「いてえ、いてえよ!」
「当たり前だ。痛くしているんだよ」
「おい、離せよ!」
別の不良が向かってきた。かなり太っている。さっきの奴はチビだったが、こいつはデブだな……。
「離してやる」
俺はチビの不良をデブのほうへ思い切り押した。
「うわぁー!」
情けない声をあげるデブ。なんだ、見掛け倒しか。
「てめえ、いいかげんにしろよ?」
おそらくリーダー格の不良が、臨戦態勢をとった。こいつは身体を鍛えているな。マッチョというやつか。
「レオくん、やっちまえー!」
デブの不良が声援を送る。お前、何にもしてないな。
「おら!」
レオくん、とやらが蹴ってきた。俺はなんとか避ける。なかなか良い蹴りだ。おそらく空手か何かの経験者だろう。
俺は一歩踏み込み、顎を狙いパンチを打つと見せかけ、不良の腹を殴った。顔をガードしていた不良は、がら空きのみぞおちを殴られて顔をしかめる。大半の奴はこれでダウンする。いや、今初めてやったけど。
「くっ……」
苦しくて喋ることが難しいみたいだ。
「レオくん! 大丈夫!?」
デブと調子が心配して駆け寄る。どうやら、もう襲ってくる気はないようだ。
「こんなこと、やめにしようぜ。意味がない」
俺はなんとか、なだめようとする。そうだ、意味がないのだ。本当にくだらないことだ。
「お前の顔は覚えたからな……」
そう言って不良達は立ち去った。一件落着だ。捨て台詞は気にしない。
「あ、あの……、ありがとうございます」
女子高校生がお礼を言ってきた。いつのまにか遠くに隠れてたみたいだ。
「ああ、いいよ、気にするな」
と言ってから思った。もしかしたらこの人は先輩という可能性もあるな。敬語を使うべきだったか。
「私、1年生です。琴浦 心っていいます」
同級生か。良かった。
「俺は山本大和、同じ1年だ。よろしくな」
「はい!」
知り合いがいない新生活は不安もあったが、とりあえずは知人と呼べる人物とも出会えた。
案外、順風満帆に事が進むかもしれないな。




