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洋菓子店の経営事情(2-0・中)

 ……行った?

 ……よし。


「……はぁ、マジ焦った」


 ついでに恥ずかしい。


――あの外人が無駄に重たい空気を残して去った後、あいつが見事に気絶するからマジでビビった。

 救急車と連呼するバカを黙らせた後、とりあえず奥の部屋まで運んだ。

 ぶっちゃけみくも救急車かなと思ったけど、なんか、空気的に違うかなって思った。

 それは残りの二人も同じだったらしいから、まぁ民主的な選択ってヤツ?


 なに? どの角度で見ても、てか見なくてもメンドクサイっていうの? そんな事案に手を出すとか、みくのポリシーに反するっていうか、金の為にやってるバイトでこんなメンドウな事件に巻き込まれるとかマジ転職希望って感じだけど、まぁその、借りがあるし? あーあ、やだやだ。

 そんなわけで、あの場は訳知り顔なエセお嬢様に任せて、みくは役立たずだから自宅待機ってことになった。

 それから、夏休みでバイト以外はオールフリーな……たまたま暇だったみくは、軽く悩んだ。

 なにあれ? どういうこと? ……こんな感じ。

 で、深夜にエセお嬢様からメールが届いて、その文面がコレ。



 矢野未来さん。

 洋菓子店スタリナで共にアルバイトをしている丸井華です。


 てんてんとの話が一段落しましたので、ご報告します。

 まず、詳細な報告は出来ない事を謝罪します。

 理由については、失礼を承知で、お察しください。


 さて本題です。

 彼は今、乗り越えようとしています。

 なので私は、彼を応援します。

 我ながら意味不明な文章ですが、ようは、これまでと変わらないということです。

 明日からも頑張って働きましょう!

 あの感じ悪いドイツ人には絶対負けたくありません!

 

 ps てんてんの笑顔が脳裏から離れなくて眠れません。鼻血も止まりません。助けてください。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 丸井 華 (Hana Marui)

 洋菓子店スタリナ ホールスタッフ

 〒655-630 鳴明街名労地区5695番地

 Tel:0365-56-5965

 E-Mail:hanakaketenten@softau.syosetu.ac.jp

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ……スパムかと思ったし。

 てかケータイのメールに署名付けるJKとかヤバイ。

 ぱっとみ丁寧に見えて頭おかしい所もマジやばい。 


 で。

 そろそろ寝ようかなーってトコに火が付いたっていうか、そんな感じで、深夜にパッチリ目が冴えたっていうか、あいつマジ次会ったら覚悟しとけよ。とか思いながらベッドの上でゴロゴロして、気付けば例のマンションに居たって感じ。


 エセお嬢様に話を聞くのはなんかヤだし、本人とかもっとムリで、じゃあ残ってんの一人じゃん。

 ということで、キッカさんの部屋の前まで来た、のはいいものの、着いてから思い出した。

 まだ早朝じゃん。絶対寝てるし。いや雰囲気的に起きてると思うけど、とにかく早朝から自宅訪問とか、みく超積極的っていうか? ないわーって感じ?

 だから帰ろうかなーとか思ってたらドアノブが動くからビックリ。

 しかも出てきたのキッカさんじゃなかったらビックリ。


 ……部屋間違えた。


 というわけで軽く話をして、帰るふりして、あいつが何処かに行った後で部屋の前に戻って来た。

 回想終わり。


 やだもう。帰りたい。顔熱い。

 てかイライラする。


 ……まぁでも、なに?

 もやもやがウザいっていうの?

 ここまで来たら、スッキリしなきゃ帰れないし?


 ピンポーン、と電子音。

 

 ……は? 反応無いんだけど?


 ピンポーン、もう一回。


 ……お、足音――


「ナーダ! …………」


 勢いよくドアが開いたと思ったら、中からバスタオル一枚のパツキンが出てきた。

 なー、だ? なにそれ外国語?

 とにかく良く分からない事を言いながらスマイルいっぱいに出てきたキッカさんは、みくを見るとあからさまにテンションを下げた。ごめんねみくで。

 てかなにその恰好。

 まぁいいや。さっさと本題に入りましょう。


「……はなし、しにきた」


 やば、みくコミュ障かよ。

 悔しいけど緊張してるっぽい。


「……入ってもいい?」


 ……キッカさんお悩みのご様子。

 たっぷり一分くらい待つと、可愛らしいくしゃみが聞こえた。

 よく見ると、てかどう見ても髪が濡れている。風呂上りっぽい。


「……着替える、ね」

「……おぅ」


 なんだこのやりとり。

 ……え? あれ? 閉められた? みく外で待つの? 入れてくんないの?

 はぁ、なんか、始まる前から疲れた。


 あー、もう。ほんと、ほんっとに、なんでみくがこんなこと。

 なんか回りくどいし、めんどいし。

 だー! もう! 部屋の電気を付けるみたいにワンタッチで解決しろし! めんどくさい!

 あんときだって、あいつの一言で全部どうにかなったっていうか、あっさり終わったっていうか……。

 

 ……そう、結局はコレ。

 きっかけ? みくは、それを探してるっぽい。

 そこだけ切り抜けば、たった一言っていうか、しょーもないんだけど、その一言はメンドイ過程があったからコソ生まれるっていうか、メンドイ中に転がってるっていうか……。


 とにかく、簡単な話。

 迷惑かけたから、そのお詫びというか、なんというか……。

 あいつは、何も言わずに手を貸してくれたわけで。

 しかも、あんな厄介事押し付けられときながら、文句のひとつも言わなかった。

 ……むしろ、心配とか、してた、のかも。

 だから―― 


「……ごめん、ね。どう、ぞ?」


 わっ、急に出てくんなし。

 まぁ入れてもらえるんなら黙って入るけどね。

 さーて、頭切り替えねぇと。 

 こっからはみくちゃんも真面目モード。 


 あーあ、めんどくさい。

 ほんっと、これでチャラだからな? クソ店長。




 

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