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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
5章 青の領域と赤の領域(続)
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甘さ

「カーッ!」


「颯太!あっち!」


「了解!シーザー!」


「ガルウ!」



上空から香織たちを探していたレックスは詩織の肩に乗り、主にしか分からない言語で喋る。それを聞いた詩織は東にある峡谷を指差し、颯太は頷いてシーザーへそこに向かうよう命令する。



「峡谷の中か!?」


「そうみたい!そこに竜也と伊澄がいるって!」


「香織さんは!?」


「いないみたい!もしかしたらハグれちゃったのかも!」


「それは厄介だな……―――とりあえず峡谷へ行くぞ!」


「うん!」



レックスに案内されながらシーザーは峡谷の深い裂け目へ飛び込み、ガラガラと自分のの体重によって崩れる足場を素早く移動しながらシーザーはジグザグに下へ降りていく。



「シーザーありがとう」


「グルゥ…」


「レックスもありがとね」


「カー!」



深い谷底の一番下へ降りてきた颯太と詩織はシーザーとレックスを戻し、あたりを確認する。



「あたしの索敵範囲内に敵はいないみたい」


『颯太、遠くに強力な神器反応が2つ。それからそれを囲むように神器の反応が30ある。多分この強力な反応はボルケーノとガンドレアだよ』


「見つけた。ここから少し歩いた先に竜也と伊澄がいる」


「おお、颯太の索敵範囲はどうなってんのさ」


「まぁこれも混沌の力だよ」



少しだけおどけた様子で言う詩織に苦笑しながら颯太は地図を確認する。



「竜也と伊澄だと思うが、少々面倒な状況になっている」


「どういうこと?」



地図を確認している颯太に近寄りながら詩織は尋ねる。



「高い確率で敵だと思うが、竜也と伊澄は多数のプレイヤーに囲まれている」


「でも、伊澄さんと竜也さんの神器は一騎当千のぶっ壊れ神器だよね?苦戦するような敵でもいるのかな?」


「先ほどから2人とも動いていない。恐らく竜也は怪我をしている」


「け、怪我!?もしかして罠にでも引っかかったんじゃ……」


「罠か。どんな罠だ?」


「ん~多分虎バサミか痺れ罠かな。あれ、地面に埋められるし、コスパもいいから大量設置出来ておいしいトラップなんだよね」


「なるほど。解除方法は?」


「神器の隠しステータスの技量値が高くないとダメ。うちのギルドじゃ竜也さんが一番低いから無理だね」


「伊澄さんは?」


「無理無理。あたしか颯太か香織じゃないと解除出来ないよ」


「だから動けないのか……罠、絶対下方修正すべきだろ…」


「え!?や、やめてよ!罠弱体化したらあたしのスキル全部弱体化すると言っても過言じゃないんですけど!?」


「じょ、冗談だ!だからそんなに身体を揺するな!」


「颯太、言って良い冗談と悪い冗談があるんだよ」


「わ、悪かったって――――とりあえず行くぞ。2人を助けなければ」


「そうだね。全速力で助けに行こうか」


「余り飛ばしすぎて敵の罠に引っかかるなよ?」


「索敵は常に怠らずってね」


「よし、行くぞ!」



2人は竜也と伊澄の反応を目指しながら走り出した。



「竜也…!まだ解除できないの…?!」


「くそ!なんだよこれ!全然解除出来ねえんだ!」


「………わたしのバリアはまだまだ持つけど、これ以上人が増えると厄介かも…」


『竜也、その罠は我の能力では解除出来ん……』


「え!?嘘だろ!?」


「どうしたの…?」


「ボルケーノが罠解除出来ないってよ…」


「……わたしも無理…」


「や、やばくないか…?」


「やばいけど、遠くに颯太とティアの反応がある……それまで持ちこたえる…」


「颯太とティアが!?お、オーケー!俺も座ったままだけど、射撃くらいは出来るからよ!やってやるぜ!」


「ダメ……そんなことしたらバリア内で爆発してわたし達爆発四散するよ…」


「お、おう…そいつはやばいな…」



大砲を取り出した竜也だったが、冷静な伊澄にそう言われて大砲を地面に置く。



「すまねえ、俺は何も出来ないけど頑張ってくれ…」


「うん……わたし頑張る…」



伊澄はより一層バリアの着弾予測点の演算処理に集中した。



「………」


「………」


「………」



臨時拠点で待つクレア、滉介、リーナの3人は退屈な時間を過ごしていた。



「あ、あれ!?ユキナちゃん戻って来ていないの!?」


「ん、香織か」



そんな3人のところへ息を切らした香織が走って戻ってきて、クレアは開いていたメモ帳を閉じる。



「香織、ユキナと会ったのか?」


「は、はい!それで皆心配しているから戻るよう言ったのですが、私だけ先に戻ってきてしまったのようで…」


「とりあえずお前はここで待機だ。颯太が怒っていたぞ」


「あ………ごめんなさい…」


「長らく席を外していた私と颯太にも責任があるが、我々はチームだ」


「すみません…」


「……まぁ説教はあまり好きではないからここまでにしておこう。それでユキナは戻ってくると言ったのか?」


「はい……ですが、多分寄り道しているかと…」


「ふぅ……ユキナには相当厳しく説教をしなければならないようだ」


「とにかく香織は戻ってきたわね。ねえ、香織。あなたの後を追って竜也と伊澄が出て行ったのだけれど、知らない?」


「え!?兄さんと伊澄さんも!?」


「その様子では見てないようだ。ユキナしか眼中に入ってなかったのか?」


「う、うん……」


「それ竜也が聞いたら落ち込むレベルだな」



滉介はにやり笑う。



「まぁ何はともあれ香織が戻ってきたのだ。颯太とティアも出て行ったことだし、いずれ竜也と伊澄も戻ってくるだろう。問題がユキナだが、最悪放っておいて構わん」


「え!?それどういうことですか!?」


「我々が下手に探しに行くより、勝手に戻ってくる確率の方が高いと言っているのだ。忘れがちだが、ユキナは1世代目の神器の中でも凶悪な部類のビャッコの神器使いだ。早々死なん」


「ですが……」



ユキナを心配して食い下がる香織に対してクレアは厳しい目つきをした。



「香織、お前はユキナに対して過保護すぎるな。その過保護さは近年見る子供をダメにする親と酷く似通っている。いいか、この際だからハッキリ言わせて貰うが、お前の過保護さはユキナを甘やかしているに過ぎない。お前の面倒見の良さはもちろん評価はしている。だが、その面倒見の良さが仇となっているのだ」



初めてクレアに怒られた香織は驚きの余り震わせる。



「………」


「お前の性格上厳しく怒ることなど出来ないのはとうの昔に分かっている。だから、それ故にユキナはお前に甘え、そして甘く見る。無意識のうちにユキナはこれくらいなら許されるのではないだろうと線引きをしていたのだ。今までは私や颯太が傍にいたから派手な行動に出なかったものの、あまりの退屈さ、そして私と颯太が傍にいないことから遂に行動へ移ってしまった」


「じゃあどうすればいいんですか…」


「変わるしかないだろう。だが、人間はそう易々と自分を変えることが出来ない。だがしかし、そこは意識の問題だ。香織、暴力に訴えるのではなく、言葉で厳しく、時には優しさも入れてユキナと接するのだ。厳しいばかりでは捻くれてしまうだけだからな」


「…分かりました…」


「ふぅ……説教は止めにすると言ったのについやってしまった――――………くだらん、私は少し席を外すぞ」



自分に嫌気が差したクレアは帽子を深く被りながらどこかへ行ってしまった。

残された滉介とリーナはお互い頬に汗を流しながら顔を見合わせて、この状況をどうするべきかを考える。



『ど、どうするのよ!まさかこんなにクレアが怒るなんて思わなかったわ!』


『お、俺だって予想外だ!なんでいつも俺は損な役割しか回ってこない!』


『主人公の違いかしら』


『はぁ!?何の話だよ!』


『いやいやこっちの話。それでどうするの?香織凄い落ち込んでいるけど』


『声なんかかけられるわけないだろ!こういうのは颯太の役割のはずだ!』


『それじゃ早く戻ってくるといいわね……ホントガチで…』


『あぁ、早く戻ってきてくれ…!!』



意外と繊細な滉介は胃が痛くなる想いだった。





『やっぱりボルケーノとガンドレアだ。早く急いだほうがいいよ。竜也、罠に引っかかってる』


「ティア、読みが当たったな」


「やっぱり……颯太、どう仕掛ける?」


「敵は伊澄と竜也に集中している。下手に隠れてバレてしまうより突っ込んで蹴散らそう」


「了解!」



そして敵のスキルのエフェクトが見え始め、颯太は大剣を。詩織は両手に苦無を構えて峡谷の狭い通路を走りぬけた。



「ティア!!」


「うん!!」



ここにだけ隕石が落ちたような広いホールに出た2人は左右に飛び、背後からほぼ同時に2人のプレイヤーの首を落とした。



「な、なんだお前らは!?て、敵の仲間が来たぞ!!」



隣の味方がやられたことで颯太と詩織の奇襲に気付いたプレイヤーは周りにそう呼びかけ、仲間に注意を促す。



「ティア、分かっているな」


「うん!あたしが動きを止める!!」



詩織は虚空から現れた黒い衣を身に纏って霧のように消えると、反対側に現れてまだ2人に気付いていないプレイヤーの首を空中から刈り取る。



「レックス!行くよ!」



敵の銃弾を後ろにジグザグにステップしながら避ける詩織は、右手の甲に翼を折りたたんだレックスを召喚し、右腕を弓の弦のように引く。



「はぁ!!レイヴンストライク!!」



後ろの壁を使い、壁蹴りをして空中へ舞った詩織は勢い良く右手を突き出して必殺のレイヴンストライクを放った。


地面へ着弾したレイヴンストライクは辺りに凄まじい熱風を巻き起こし、味方である颯太、伊澄、竜也意外のプレイヤー達を熱風によって動きを拘束する。



「ナイスッ!――――レーナ!」


『おーけー!雷撃!フルチャージ!!」


「くっ!おおおおお!!!」



そして入り口の方から雷の大蛇が大地を駆け、味方である詩織たちすらもダメージを受けてしまうのではないかと思うほどの威力の雷撃が放たれた。




バチ―――!バチバチ――――!!



「うっはぁ……耳がやられたぁ…」


「ごめんな、こうでもしないと敵を倒せなかったから」



耳をポンポン叩きながら歩いてくる詩織は少し涙目で、颯太は苦笑いを浮かべる。



「ティア、罠解除を頼む」


「はいはい!ちょいっと!」



ティアはバリアを解除したガンドレアの隣で倒れている竜也の足に食い込んだ罠に触れると、罠はあっけなく壊れた。



「ふぅ、助かったぜ」


「助かった…」


「もう、なんで勝手に出て行ったの?伊澄さんがいなかったら死んでたよ?」


「すまねえ…」


「それで香織さんはどこに行った?竜也は香織さんを追っていたんだろ?」


「そうなんだけど、追っている最中にこの罠に引っかかってしまってよ…」


「この先か?」


「あぁ、この先に行った」


「そうか。伊澄さん、竜也を抱えてここを昇れるか?」


「問題ない……」


「んじゃ、先に戻っていてくれ。俺とティアはこのまま進んで香織さんを見つけてくる」


「ユキナは…?」


「ユキナは勝手が過ぎる。だから香織さんを見つけ次第一度拠点に戻る」


「放っておくのかよ!?」


「別に1世代目の神器なんだから死なないだろ。それにたとえ死んだとしても自業自得だ」


「わたしも颯太に同意する……ユキナのせいで竜也は死にかけたから少し怒ってる…」


「……了解。んじゃ、俺と伊澄ちゃんは戻るぜ」


「あぁ、気をつけて戻れよ」



伊澄は変身を解き、両足にブースターを装備すると竜也を抱えて上へと昇っていった。



「竜也さん、落ち込んでいたね」


「仕方がない。でも、俺はリーダーとして皆の安全を考えなきゃいけない。それにユキナの勝手な行動によって皆の命が危険に晒され、実際竜也は伊澄の到着が少しでも遅れれば死んでいた。いくらこのゲームで死のうともリアルで死ぬわけじゃないが、それでも死は避けるべきなんだ。だからユキナの行動は許せない」


「よくこの手の小説やマンガをよく見ると、大体デスゲームだもんね……死んだらそこでおしまいの…」


「あぁ、だからそういう危機感を持たなくちゃいけないと思う。いつこのランゲージバトルがデスゲームに変わってもいいように」


「変わったら、怖いな……まだリアルでしたいことまだまだあるのに…」


「もしもの話だよ。そんな本気にするなって」


「そ、そうだよね」


「………香織さんはこの先だったか。行こう」


「うん」



颯太は大剣を背中に背負って詩織と共に先に進んだ。

どうもまた太びです。


相変わらず執筆を続けていまして、ようやく納得がいくものが出来ました。

この前の狐耳云々の話もそこそこかな~?何て思っていましたが、次に書いた話が思った以上に出来がよく(自分の中では)大変満足できるものでした。


公開は………するのかなぁ……まぁ次の章お題にそったものであれば出したいと思います。

なろうでキーワードに何か付ける感じであればですがね。

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