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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
5章 青の領域と赤の領域(続)
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颯太の休日3

次の日の日曜日は、颯太に断りもなくまた健太、本田、上条の3人がやってきて勉強会が勝手に始まった。



「颯太これでどうよ!」


「どれどれ………―――-おお、当たりだ」


「おっしゃー!」


「健太もちゃんと復習してきたんだね」


「ま、補修があると部活の合宿に参加できねえからな。何としてでも今回は回避しなきゃならねえ」


「本田は?」


「俺も似たようなもんだ。ほら、今年からは2年の俺らが引っ張っていかなきゃならないじゃん?だからさ、監督が赤点で補修だった奴は問答無用でレギュラーから外す!なんていいやがってよ」



颯太の問いかけに本田は問題を解きながら答える。



「あれだろ?勉強と部活を両立できねえ奴はうちにいらねえ的なこと言うんだろ?」


「あぁ、健太も似たようなこと言われたのか」


「おう。あのハゲ頭め」


「でもうちの高校って結構強いんでしょ?」


「本田のバレー部は強いぞ。毎年全国大会に行っている」


「全国行っていると言っても毎回1回戦か2回戦で敗退するけどな」


「健太のサッカーは?」


「うちは微妙だ。毎年波があってさ、いいときは準決勝とか行くんだけど、ダメな本当にダメだ」



そんな部活の話をしていると家のインターホンが鳴った。



「はーい!」



颯太は一度手を止めて面倒臭そうに立ち上がり、玄関の扉を開けるとそこには千草がいた。



「あれ?千草ちゃん」


「あ、レーナいる?」


「あぁ、2階にいる。寝ていると思うが、たたき起こしていいぞ」


「もちろんよ!それじゃ、お邪魔するわね」



千草は靴を綺麗に揃えて颯太の家に上がる。そのままリビングへ行くと、健太達が目に入り、思わず颯太の背中に隠れてしまった。



「あぁ、こいつらは俺の友達だ。テストが近いから勉強しているんだ。千草ちゃんは気にせずレーナと遊んでいいぞ」


「え、ええ」



千草は脱兎の如く階段を上っていった。



「あの子は?」


「あの子は俺が教えている家庭教師の子だ。これが頭いいんだ」


「へえ、レーナちゃんと友達だったのか」



自分の場所に座るとさっきの子が気になった健太が質問してくる。颯太はペンを持ちながら答え、教科書を開く。



「たまたまうちに来てな。その時レーナと出会って友達になった」


「いいねそういうの。でも、最近の子って何して遊ぶんだろう」


「さぁ?レーナは俺に染まりきっているからゲームしか知らないし、千草ちゃんも部屋には外国語の本くらいしかなかったからな」


「外国語?それってどういうこと?」


「プライベートなことだからあまり言いたくないが、千草ちゃんのお父さんは外国を渡り歩いている人で、お土産もよく分からない本やらグッズらしい」


「一応最後聞いておきたいけど、読めるの…?」


「読めるわけがないと本人が言っていた」


「だろうね」



上条は分かりきっていることを聞いて苦笑いを浮かべる。と、そこでまた家のインターホンが鳴り響く。



「なんで今日はこんなに来客が多いんだ…」


「ほら行ってこいよ」


「くっそ、座りなおしたばかりなのに」



再び颯太は悪態をつきながら立ち上がって玄関へ向かった。



「はーい」


「あぁ、颯太か」


「え、なんでクレアさんが…」


「ん?私はよく颯太の家に来るだろう?何をそんなに嫌そうな顔をしている」


「えっと、その…」


「ん?まぁいい、和彦君はいるか?今日は彼と約束事をしていてね。これから出かける手筈になっているのだよ」


「兄貴ですか?ちょっと待っていてくださいね。今呼んできます」


「あぁ、リビングで待たせて貰おう。少し約束の時間より早く来てしまったようだからな」


「え!ちょっと!ま―――」


「ええい、うるさい!いいから私を上がらせろ!客人だぞ!」


「なッ!?ご、強引な!ってまたニヴルヘイムか!おい!お前!主の暴走止めろよ!神器の力を借りた人に俺が力で勝てるわけないだろ!!」



全力でクレアの進行を止めようとする颯太だが、クレアの瞳が淡く光っていることに気付いた。

その時颯太はクレアの中でくすくすとこの状況を楽しんでいるニヴルヘイムの顔が何となく思い浮かんだ。



「ん?なんだ、颯太の友達か」


「ぜえぜえぜえ……!はい、勉強中です…」



結局強引に颯太バリケードを突破したクレアは、リビングのテーブルで勉強をしていた健太達を見つける。

健太達は突然のクレアの登場にぽかーんとしており、目を白黒させていた。



「あぁ、私はクレア・フィールストン。職業はモデルをやっている。今日は颯太の兄の和彦君に用があってね。勉強の邪魔をして悪いな、私に気にせず勉学に励むといい」


「んじゃ、俺は兄貴呼んできます…」


「頼んだぞ。その間私はコーヒーでも飲んでいよう」



どっと疲れた颯太は肩を落としながら2階に上がっていった。クレアと言えば勝手にキッチンへ足を運び、ポットの中の蓋を開けて水を入れてお湯を沸かし始めた。



「おい…誰だよあの人…」


「ぼ、僕に聞かれても分からないよ…!」


「颯太の兄貴に用があるって言っていたな…!もしかして兄貴の彼女…?」


「あ、見てみて…!今検索かけたけど、あの人本当にプロモデルだよ…!!」


『マジかよ…』


「ん?私に何か聞きたいことでもあるのか?」



キッチンの椅子に座って新聞を読んでいたクレアは健太と本田の視線に気付き、目だけをやって2人の反応を待つ。



「え、えっとあなたは本当にあのモデルの―――」


「あぁ、そうだ」


「マジかよ…」


「颯太とはどんな関係で…?」


「颯太とはゲーム友達だ」


「またゲーム友達……一体颯太は何のゲームをしているんだろう…」


「し、失礼を承知で聞きますが!颯太の兄貴と付き合っているんですか!」


「いや、彼とは良き友人として付き合っている。彼はゲーム会社の人間だからな。興味深い話を毎回聞かせてもらっている」



スパスパと慣れたように答えていくクレアに健太と本田は唇をわなわなと震わせる。



「私からいくつか質問させて貰うが、いいか?」


「え、ええ!構いませんよ!」


「ふむ……―――颯太は、元気にやっているか?」


「はい?」



質問の意図が分からず、健太は隣にいる上条と本田の顔を見渡す。



「待った、それではよく分からないだろうから、少し補足しよう。颯太は学校で元気にやっているか?」


「ええ、ゲームしたり授業中寝たり、委員長に殴られたり、とても刺激的な毎日を過ごしていると思いますよ」


「そうか…」



健太の答えにクレアは少しだけ遠い目をしてから再び健太達に向き直る。



「2つ目だ。颯太は、部活とかやらないのか?」


「やらないって言ってましたね。つうか、あいつ結構な運動神経持っているのになんで部活やらないんでしょうね」


「何か理由はあるんでしょ?あんまり詮索しないほうがいいよ、そういうの」



クレアの質問に今度は本田が答え、上条が付け足す。



「やはり引きずっているか……―――大体ことは分かった。ありがとう」


「あぁ、いえいえ」



クレアは丁度電気ポットのお湯が沸いたのでコーヒーを淹れるために再びキッチンの中へ戻っていった。

質問の意図が全然理解出来なかった3人は首を傾げるのであった。



「すまん!待たせてしまった!」


「いや、こちらが時間より早く来てしまっただけだ。和彦君は何も気にする必要はないよ」


「クレアさん、まさかランゲージバトルのことで…?」



しばらくして私服の姿で慌てて降りてきた和彦をクレアが迎え、後から階段を降りてきた颯太がクレアに小声で尋ねる。



「あぁ……前々から和彦君とはランゲージバトルについて何か知れないかと思って色々な大学の教授を尋ねていてね。今日も会えると言ってくれた教授の下にこのファイルを持っていくつもりさ」


「そのファイルは…?」


「パラセクトソルジャーと和彦君が撮ってくれたカード状態のレーナの写真が入っている」


「クレアさん、遅れるぞ!」


「あぁ、今行く!颯太、君がやろうとしていることは分かっている。だから君はその目標ゴールへ全力で走れ。私は私なりのコースでゴールへ向かって走る」



颯太の視線に反応したクレアが、脇に挟んだファイルを見せてから和彦の後を追って家を出て行った。



「クレアさん、色々活動しているんだな……だけど俺は…」


「なんかお前の人脈すげえな。トップモデルと知り合いとか、お前どうなってんだ?」


「俺が知りたいよ」



クレアが出て行った玄関を見つめる颯太へ健太が呆然とそう呟き、颯太は吐き捨てるように答えるのであった。



えっと、連続投稿です!


今回の2話は颯太達が勉強?する話でした(全然勉強してねえな?

颯太はファンタジーの世界からランゲージバトルを切り崩そうと考え、クレアは現実世界からランゲージバトルを切り崩そうと考えています。

クレアに願いごとなどありません。が、ランゲージバトルの覇者は確固たる望みがある者がなるべきと考えています。

それは自分ではないと悟っていて、本当になるべき覇者は颯太だと信じています。

だから彼女は彼に手を貸し、彼を鍛え、彼を導く。と、こんな感じです。

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