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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
5章 青の領域と赤の領域(続)
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颯太の休日2

「ありがとうございましたー!」


「ふ~食った食った」



適当に見つけたレストランに入って昼食を済ませた颯太達はレストランを後にする。



「さて、どうするよ」


「え?颯太の家に帰って勉強するんじゃ?」


「おいおい、レーナちゃんがいるのに勉強なんかできっこないだろ?」



振り返った健太に上条はそう問うが、健太は『やれやれ』と言った風に返す。



「ゲーセンでも行くか?」


「お、それいいね」


「ねえ颯太……」


「どうやら健太と本田はもう勉強する気はないらしい。というか、完全に集中が切れてしまっている。こうなったら無理に勉強させても頭に入らないぞ」


「だろうね」


「レーナちゃん格ゲーとか出来る?」


「ん?出来るよ~?颯太にしごかれたからね!」


「お、それは期待できそうだな!」


「師匠は颯太か……ひょっとすると健太負けるかもな!」


「ばーか、いくら颯太が師匠だと言ってもゲーセンにはコントローラーがないんだ――――」


「あぁ、健太。一応言っておくが、ゲーム機にセットする台ならうちにもあるぞ。もちろんレーナはコントローラーより台の方が気に入っているみたいでな」


「あ……」


「健太、おつかれ」


「さて!健太がちっちゃい子に負ける姿を拝むとするか!」


「い、いや待て!俺だって相当ゲーセンの格ゲーには慣れている!」


「お手並み拝見だな。レーナ、本気でやっていいぞ」


「うん!ゲームで手加減って難しいからね!」


「んじゃ、健太がレーナちゃんに負けたら全員にジュースを奢るってことで」


「そいつはいいな。丁度飲み物が欲しいとこだったんだ」


「おいおい!そんな賭け知らないぞ!つうか、俺負ける前提!?」


「ほら、行くぞ」


「颯太ももう勉強する気ないでしょ…」



颯太が3人を連れていつもの穴場のゲーセンへ向かう中、上条だけはがっくりと肩を落とすのであった。




「流石に土曜日だから人がいるな」


「ま、ここのゲーセンは人気だからな。店長の趣味がいい、最新の格ゲーが揃っている、アームの強度も丁度いいの3拍子」


「でもちっちゃい店だね」


「それがいいんだよ。な?」


「おう。ゲーセン好きは皆ここに来るぜ」


「僕もここのUFOキャッチャーには何度もお世話になっているからね」


「レーナ、あっちだ」



レーナが店内をきょろきょろ見渡していると健太達はさっさと脇を通り抜けて行き、颯太はレーナに声をかけてから健太達の後を追う。



「さ、どれやる?俺は一通りここの格ゲーには慣れているからな。レーナちゃんが好きなの選んでいいぜ」


「ん~……んじゃ、あれ」


「グラディウスか。健太、お前ガチでレーナに勝ち目ないぞ」


「いやわからないぜ?それなら俺も慣れているゲームだしよ」



グラディウス―――格ゲーを知っている者ならばこのゲームから全てが始まったと言っても過言ではない格ゲーの基盤を作ったゲームだ。

最近の格ゲーはCGの技術も上がったこともあり、よりリアルな格闘戦が味わえる格ゲーが増えている。しかし、グラディウスだけはドットを維持し続け、その拘りとグラディウスだけがなしえる圧倒的コンボとハイスピード戦闘が今もファンの心を掴み、家庭用ゲーム機でも大ヒットしている。

もちろん颯太もそんなグラディウスの1ファンとして家庭用ゲーム機版なら全て揃えており、レーナもすぐにグラディウスの世界観にどっぷりと浸かった。



「さてと、何使ってやろうかな~」



椅子を引き寄せて健太が手をもみながら座る。その向かいの席にレーナが座り、颯太は財布からここのゲームセンター用のカードと100円玉を取り出して機械へ投入する。



「わぁ、知らないキャラいるー!颯太これなに!?」


「あぁ、更新されたばっかだったか……えっと、こいつは確かカウンター系だったかな。相手の攻撃を見切ってそれからコンボを繋げていく感じだ」


「面白そう!」


「でもこいつネットの評価見るとかなり上級者向けって言われてたよね。使いこなせば強いらしいけど、いくら見切れるかにかかっているキャラだよ」



キャラクター選択画面でレーナは大剣を背負った銀髪の女戦士を見て目を輝かせる。颯太はそのキャラクターについて軽く説明して上条が補足する。



「颯太これ10割いける?」


「あぁ、10割コンボあったぞ。いいかまずは――――」


「え?健太に10割する気?健太泣いちゃうよ?」



10割とは、つまり一度の攻撃でHPバーを全て持っていくことである。それを今颯太が口頭で教えているわけで、レーナは颯太の言葉に頷きながらバーを操作しながら動きを把握している。



「―--覚えたか?」


「うん、覚えた」


「ええ!?1回しか説明してないよね!?それで覚えたの!?」


「うん!大丈夫」


「まぁ、レーナは特別だ」


「そ、そうなんだ……―――…でもあれって相当練習しなきゃ10割は出来ないよね…」


「俺も出来ないが、レーナは別だ」


「よーし!颯太が師匠って言うんだ。手加減はしないぜ!」


「手加減はいらないよ。というか、健太が私に手加減してって言いそう」


「お、言ったな?んじゃ、俺ガチでやっちゃうよー!」


「俺たちは何を飲むか考えていようぜ」


「そうだな」


「うん、それがいいね」


「うおおおい!ちっとも俺が勝つビジョンが見えてないのかよ!お前らには!」


『見えてない』


「くそー!お前ら今に見てろよ!!」



健太の叫び声と共に始まった一戦目。健太が操作する筋肉モリモリのパワーキャラがレーナのキャラに右ストレートをかました瞬間――-



「――-ッ!」



レーナの目が細くなり、タイミングどんぴしゃでカウンターが発動した。

健太のキャラが大剣で打ち上げられ、レーナは素早くレバーを上下させて隙のないハイジャンプを使って追撃を始める。



「うお!?」



空中でレーナのキャラがエリアルコンボを決め、地面に着く瞬間にバウンド効果がある必殺技を使って健太のキャラを地面に叩きつけてもう一度空中に飛ばす。



「え?」


「レーナ、落とすなよ」


「分かってる…!」


「あ~健太終わったな。これ、10割コンボじゃん。しっかし、よくこれ出来るな。ネットでロマンとか言われてた奴やん」


「え、ちょ!おいおい!?あれできるのかよ!?」


「落とすことに賭けるんだな」


「レーナは落とさなないと思うぞ」


『なんせスーパーコンピューターのバックアップを受けているようなもんだからな……』



ランゲージバトルのシステムと直結しているレーナにとって決められたコンボをやることくらいどうとない。ただ決められたレールを走るだけなのだから、間違いなど起きるはずがないのだ。


言ってしまえば、今健太は超高度な学習プログラムが積まれたAIと戦っているようなもので、少しうまい程度の健太が勝てるはずがない。



『KO!!』


「あ……」


「落とさなかった」


「わーい!決まったー!」


「あぁ、流石だ」


「これはもう台パンもんだね…」


「レーナちゃん!10割なしで!!な?な!」


「え~?」


「うわぁ……」


「しゃーない。レーナ、今ので大体このキャラの特徴は掴めただろ?次は10割なしでやってやれ」


「まぁ颯太がそういうのなら10割封印してあげる」


「あぁ、ありが-―――」


「でも、10割じゃなかったらいいんだよね?だから、9割に行ったら1回だけ落としてあげる」


「うっ…!」


「健太、ワンチャンしかないぞ」



悪魔のような笑みを浮かべたレーナに健太は思わず怯む。そんな健太を本田は哀れみながら肩に手を置いた。



『レーナにゲームをやらせると大抵こうなる……』



颯太はこれから起きるであろう惨劇を予想しながら遠い目をするのであった。

まぁ颯太はその惨劇を起こさせた張本人にであるのだが。





結果は言わずともレーナが勝ち、健太が全員にジュースを奢る事となった。

そして現在は各々が好きなゲームをしており、上条と健太と本田はUFOキャッチャーを。颯太とレーナは先に2戦勝ち越した方が勝ちという条件を課してグラディウスをやっている。



「………」


「………」



颯太とレーナは本気になると無言になる。

現在も激しい攻防が繰り返されていて、まるでCPU同士が戦っているような正確さである。

レーナの行動を先読みして颯太が攻撃を守り、レーナはそれを更に読んで掴みからの派生を仕掛ける。



「………」


「ふふ……」


「ち……」



一度コンボが繋がってしまえば後は10割か9割コースである。しかしまぁ、格ゲー界には『しなやす』という言葉があり、死ななければ安い。

つまり、どちらかが落とせば確実にやり返される酷いゲーム展開となっていた。

今も颯太が読みを間違ったせいでレーナに10割を決められて終わってしまった。



「おい、あれ見てみろよ…」


「あぁ、さっきから見ていたが、この2人うますぎだろ…」


「ほとんど10割だぞ…」



グラディウスはこのゲームセンターでもかなり人気な格ゲーであり、それはもう休日とあれば人盛りが出来るほどである。

その中で一際ずば抜けて10割コンボをかまし続ける2人にいつの間にか観客が大勢集まっていた。



「颯太~?このままだと私勝ち越しちゃうよ~?」


「次のラウンドでチャラにするから問題ない」


「そう?」


「あぁ、10割決めてやる」


「今のところ颯太と私の戦績は五分五分だけど、僅差で私のほうが上だからね?」


「むしろスパコン並みのバックアップを受けているお前に勝っている俺を褒めて欲しいもんだが」


「まっさかー!純粋にゲームを楽しみたいのに演算処理能力なんてアシスト借りるわけないじゃん」


「なんだって?お前、借りてないのか」


「うん、もちろん。演算処理能力使ったら人類に勝ち目ないよ?たとえば颯太の攻撃が全部コマ送りで見えてまさに見てから余裕でしたってなるし」


「へえ、なるほどね。いいぜ、それが分かってやる気が出てきた」


「ま、なくてこの結果なんだから先は見えているけどね~」


「どうだろうな!」



颯太は指を鳴らしながらレバーを握り、ボタンに手を這わせる。



「カウンターキャラじゃなくて私が使い慣れたキャラ使ってあげる。これで負けたら凹むクラスのね!」


「んじゃ凹ませてやる」


「やれるもんならね!」



そして颯太とレーナの長い戦いが始まった。





「いや~楽しかったな!」


「レーナ、楽しかったか?」


「うん!凄い楽しかった!」


「もう最後らへん颯太とレーナちゃんの周りの台観客だらけだったな」


「UFOキャッチャーから戻ってきてみれば凄い騒ぎだったよね」



時刻は17時を回ったところで颯太達はゲームセンターを後にしていた。

レーナは颯太と一日一緒に過ごせたことが嬉しいのか、先ほどからステップしたりくるりと回ってたりとかなりご機嫌な様子だ。



「結局勉強あんまり出来なかったね」


「そうだな。健太と本田は今日教えたことしっかり復習するんだぞ。家に帰ってもぐーたらするようだったら何の意味もないからな」


「へいへい、分かってますよ」


「本田も分かった?」


「おう、大分解けるようになったからな。あとはノート見ながら問題解けばいいんだろ?」


「うん、それでバッチリ復習できるはずだよ」


「このままじゃ健太は本田に負けてしまいそうだな」


「な、何言ってんだ!俺だってちゃんと話聞いてたぜ!」


「ホントかな~?僕が教えている時寝そうだったよね」


「ね、寝てねえよ!大丈夫!ちゃんと本田以上の点は取って見せるからよ!」


「お?何か賭けて勝負するか?」


「いやいやそういう問題じゃねえよ。赤点取るなって話だぞ」



また賭け事を始めようとする2人に颯太は半眼でツッコミを入れる。



「ま、何はともあれ今日4人で遊べて楽しかったな」


「何かと俺たちって都合が合わないよな」


「あぁ、確かに言われてみれば僕達4人が休日集まるって結構レアじゃない?」


「むしろ初めてだぞ」


「え?4人って学校でいつもつるんでるんでしょ?休日1回も遊んだことないの?」



レーナの最もな質問に4人はバツが悪そうな顔をする。



「ほら、健太と本田は部活で忙しいし、上条はいつも塾なんだ。結構都合が合わないもんだよ」


「ふ~ん?どうも言い訳くさいけど、まぁ私には関係話だからいいや」



レーナはそう言って17時だというのにまだ明るい街中を歩き出す。



「また遊ぼうな」



健太はそう言った。



「あぁ、また遊ぼう」



本田がにやりと笑いながら続く。



「遊ぶ時は事前に言ってよ?連絡くれればちゃんとその日は空けるから」



上条も苦笑いを浮かべ―――



「時間はいくらでもある。何度だって遊べるさ」



颯太がどこかすっきりした表情でそう〆る。



「次は委員長とか誘おうぜ。男だけだとむさ苦しいからな」


「そんときは颯太の頼むとするか!」


「あぁ?なんで俺なんだよ!つうか、お前彼女いるだろ!」



健太が颯太の肩を叩くと颯太は手を払いのけながら嫌そうな顔をする。



「いやいや、もちろん俺の彼女も誘うぜ?皆でカラオケとか行こう!」


「こいつ節操ないな」


「あぁ、全くだ」


「まぁ健太らしいでしょ」



颯太の発言に本田と上条も呆れを隠せず同意するのであった。

どうもまた太びです!


少し更新が遅れてしまいました。最近リアルが忙しくなってきたので申しわけないです。。。


えっと、このまま連続で話を書き上げる予定なので今回の後書きは短めで、次で少し語らせて貰います。

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