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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
1章 ランゲージバトル
9/172

バッドステータスの申し子レーナ

次のフロアに着くと、そこには馬鹿でかい砲台を背負った亀が寝ていた。



「うわ、かったそう……」


「ボス前の中ボスってか?」


『現段階最強の防御力を誇るだろう。こやつは』


「こちらが攻撃するまで起きないようだ」


『あれれ…?あれれれれ?』


「れ、レーナさん?どうしましたか?」


『この敵、状態異常が効くよ』


「へえ…それはまた…」



颯太の顔が悪魔のような意地の悪い顔に変わる。

まぁそうだろう。恐らくこいつを倒すには防御力を下げたり、毒で減らしたりとチマチマ戦わなければいけない仕様になっているのだと颯太は推測する。

運営側は、ここでありとあらゆる道具を使って貰い、次のボス戦で絶望して貰おうという考えなのだろう。


だが、この混沌の力があればそんなもの関係はない。



「お、おい!ソウタ何する気だよ!」


「颯太くん!?今あなた攻撃したら起きるって言ったばかりじゃ―――」



亀からすれば爪楊枝に見える剣がぷすりと足に突き刺さった。

それだけで――――



「ッ!???!?」



亀は勢いよく立ち上がると天井を目が飛び出るほど見つめて、そして身体を痙攣させる。


次の瞬間――――バキィイイイン――――!!ガラスが砕けるようにポリゴンを派手に散らして消滅した。



「さっすがレーナちゃんだぜ!俺初めて見たわ!ボスが一発で死ぬの」


「あはははは!ざまあねえぜ!運営!俺を止めたかったら状態異常を全レジストにしておくんだな!」


『気持ちがいいね!中ボスがあっさり死ぬなんて!』


「え!?今なにしたの!?ボスのHPバーの下に状態異常がいっぱい出て…」


『これが混沌の力です……状態異常が効くのであれば必ず殺せる混沌の侵食…』


「い、今のが……そう、混沌の力なのね…」



前で笑う颯太とタツヤ。

しかし、香織は手を上げて喜べなかった。

そう、混沌の力を恐れてしまったのである。



「香織さん!次はボスだ!気合を入れて行くぞ!」


「は、はい!」



アイアンタートルをチートに近い能力で倒した颯太達はボスが守っていた扉の先に足を運んだ。



「あっつ!」


「何なんですかここは…」


「マグマか……レーナ」


『特にHPなどに異常は見られないね。ただ暑いだけの演出』


「なるほどね」



扉から少し歩くと颯太達が入って来た入り口の扉が閉まってしまった。



「逃げられない…」


『元々テレポストーンは高価なものだから、私たちは買っていない。ここから出るには死ぬか、勝つしかないね』


「分かっているって」



マグマが激しく荒れ狂う。

そしてマグマから飛び出したのは巨大な赤いサソリだった。

腕のハサミには鋭い鎌のような刃が生えており、隣のタツヤは嫌そうな顔をする。


フィールドは円形。

結構広いが、あのサソリの尻尾が振るわれれば間違いなく全体を埋め尽くす。



「マグナポッドか」


「初めてのボス戦ね。HPバーが3つもあるわ」


「ソウタ、悪いが俺は戦力になりそうにないな…」


「あぁ。マグマからの演出といい、こいつは炎耐性が恐ろしく高いだろうな」


「むしろ吸収されそう」


『厳しい相手だな、我には……我が武器で盾になるくらいは出来るが』


「ソウタ、俺は香織を守るのに専念するぜ」


「分かった。俺が出来るだけ引きつける。香織さんは弱点の顔か足の関節部を狙うんだ」


「うん、わかった。颯太くん、これを」


「俺のもやるぜ」



マグナポッドに突撃しようとした颯太に二人はポーションを渡してきた。



「もう残り少ないんでしょ?兄さんと颯太くんが守ってくれたから、私は1個も使ってないの」


「俺もだ。お前が前衛で戦ってくれていたから、分けるくらいには残っているんだよ」


「二人とも………ありがとう。大切に使わせて貰う」



二人から所持限界数のポーションを受け取ると颯太は駆け出した。



「おおおおおお!!!」



繰り出される尻尾とハサミの連携攻撃を躱し、まずは身体に一太刀入れる。



「ちっ!流石にレベル差がありすぎるか!」



全然削れない敵のHPに颯太は舌打ちをする。



『今までの敵は弱点をついてきたからね。流石に弱点以外となると厳しい…』



「それでも!」



颯太はマグナポッドの背中に乗ると何度も切りつける。



『颯太!』


「やばッ!」



敵のHPを減らす事に集中しすぎた颯太は迫りくる尻尾の攻撃に気付かなかった。

だが、尻尾の攻撃が颯太に当たる前に火炎玉が尻尾に直撃して軌道が逸れる。



「大丈夫かー!HPを減らすのは無理かもしれねえが、お前の援護もしてやれるからよ!頑張れー!」


「ありがとう!助かった!」



香織も颯太がヘイトを取ってくれているおかげでマグナポッドの顔を集中的に狙えている。

まだまだ倒すのに時間はかかると思うが、これなら行けると颯太は確信した。



『颯太、ジュエリークラブ同様にこのサソリも打撃耐性が高いみたい。切断重視で行こうよ』


「了解だ!」



颯太は再び迫る尻尾を飛んで躱す。

マグナポッドから降りた颯太は大剣を振るうと剣は形状を変え、中から黒い刃が顔を出した。



「行くぞ!」


「キシャアッ!」


「遅い!」



雨のように降り注ぐ毒の尻尾の攻撃を飛ぶように高速で躱し、颯太は背中を斬りつける。


ピシ――――ッ!



「あいつ速いな…」


「颯太くん凄い……」


「お、おい!何ぼーっとしてんだよ!お前は狙え狙え!」


「し、指示しないで!」



初めて颯太の戦闘を見た時と同じ反応をしている妹にタツヤは声をかける。



『颯太、もしかして部位破壊を狙っているの?』


「あぁ、流石にこの殻をいつまでも斬っていてはこちらが不利なだけだ。この殻を壊して状態異常を叩き込む!」



直撃は避けれているが、それでも被弾してしまい颯太のHPがゴリゴリと削れていく。



「香織さん!背中を狙えるか!?」



激しく尻尾を振り回す攻撃を大剣で受け止める颯太は辛そうだ。



「や、やってみるわ!アルテミス!」


『はい!先ほどのサソリの攻撃のように、こちらも雨のように降り注ぐ矢をイメージして放つのです!』


「くううッ!行って!」



一際強い輝きを放つ矢が放たれた。

矢はマグナポッドの上で静止すると、光の散弾が降り注ぎ始める。



「ギャアッ!?」


「ナイスだ!」



颯太は駆け出した。

フレンドリーファイヤ。味方の攻撃が無効化される事を知って颯太は光の矢の嵐に飛び込む。



「壊れろおおおおお!!!!」



無我夢中で剣を振るう。



『颯太!行けるよ!』


「おおおおおおおおッ!!!!」



散弾が止むと颯太はマグナポッドの背を踏み台にして高く飛び上がる。

颯太は空中で剣をマグナポッドのひび割れた背中向けて突き刺すように持ち替えると、そのまま落下してマグナポッドの背中に剣を突き刺した。


バキィ―――!!!


甲殻がはじけ飛び、弱点が丸裸になった背中へ懇親の力を込めて剣を突き刺した。



『颯太!即死以外のバッドステータスが乗った!!!流血!ポイズン!幻覚!まだまだ乗るよ!』


「そのまま動くんじゃねえええ!!」


『麻痺蓄積が来た!!颯太!私達勝てるよ!!』



痺れて動けなくなったマグナポッドは凄まじい勢いでHPバーを減らしていく。


動けないマグナポッドの背中で颯太は剣を突き立て続けた。

最後まで油断は出来ない。

そして永遠のようで短い拘束にも終わりが来た。マグナポッドのHPバーが全て黒く染まるとその身体を派手にポリゴンを散らした。



「や、やりやがったあいつ…!」


「兄さん!やりました!!!」


「おおおおおおお!!!ソウタあああああああああ!!!」


「終わったか…」



颯太は自分のHPバーを確認すると赤く点滅して危険域を示していた。



「結局使用したポーションは委員長に貰ったこの1本だけか」



ポケットから紫色の液体を取り出して、それを飲み干すと颯太は自分が生きている事を実感する。



「ソウタあああああ!!」


「ぐはッ!」



まるでラグビー選手のようなタックルに颯太はその場に倒れる。



「あ、あれ?」


「いつつ……もっと静かに来いよ」


「颯太くん!」



タツヤ同様に走って来た香織は颯太に抱き付いた。



「い、委員長!ちょ、む、胸が!」



密かに委員長は着やせするタイプだという噂が流れていたのは本当だった。

むちゃくちゃでかい。



「良かったぁ……死んじゃうかと思ったよ」


「い、いやこのゲーム死なないし」


「それでも!」


「は、はい。すみません」



颯太は少し泣いている委員長の身体を離して立ち上がる。



「正直クリア出来ないと思ったぜ。ソウタ、お前がいなかったら俺はきっとこの宝の地図を売ることにしていた。お前がいてくれて助かったぜ」


「お互い様だ。俺もお前の援護がなかったらここまで辿りつけなかった」


「私は…?」


「委員長の索敵と最後の攻撃は本当にありがたかった。あれがなかったらマグナポッドの背中は壊せなかったよ。本当に2人には感謝している」


「へへ、良いってことよ」


「うん。私も役に立てて嬉しいわ」


「颯太、お宝の所に行こうよ!」


「あぁ!よし!お楽しみの時間だ!」



腕を掴んで急かすレーナに颯太は頷く。


マグナポッドを倒した後に開かれる宝物の部屋に踏み込むと同時にクエストクリアのBGMが流れる。



「ほ、報酬金60万Gだって!?」


「未踏破ボーナス?」


「初めてそのダンジョンをクリアしたプレイヤーには莫大な報酬金が出て、それをパーティーの皆で山分けするの。2度目はクエストクリアの報酬金しか出ないよ」



皆のストレージに20万ずつ入金されてタツヤはご満悦のようだ。



「颯太!早く宝箱開けよ?」


「レーナお前が開けてくれ」


「私が開けていいの?」


「皆もそれでいいよな?」


「俺は構わねえぜ!それにあのボスを倒したMVPは完全にレーナちゃんだもんな!」


「私も構わないわ。レーナさんのおかげであのボスを倒せたんですもの」


「うわぁ!ありがとう!」


「さぁ、混沌。開けてみよ」


「どうやらボルケーノは早く中身が知りたいようですよ」


「うん!それじゃ開けるね!」



レーナは目を輝かせて宝箱を開けた。

運営の思惑を裏切る。そんなことしたいな、と思って出来た子がレーナでした。

文でも書いてある通り、アイアンタートルは状態異常を起こしてからが本番という設定で出しましたが、レーナには関係ないですね。状態異常カモン!!!という亀ちゃんはレーナの愛を受けきれませんでした。

即死の愛を受けられるのはどうやら颯太くんだけのようです。

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