勢力戦勃発20
「へへ」
「グル!」
何かの気配を感じ、シーザーはレギュンから離れた。次の瞬間シーザーがいた場所に巨大なモンスターが降り立った。
「今回は痛みわけにしてやるよ」
あいつは……
レギュンのテイムモンスターと思われるモンスターは一言で言うならば”ドラゴン”だった。黒い鱗を持つ4足のドラゴンはレギュンに張り付いたソードタイガー達を蹴散らすとシーザーを睨む。
「紹介するぜ、こいつはあたいのテイムモンスターだ。名前はディン」
「グオオオオオ!!!」
「グルルル…!!」
レギュンは手の平を空へかざすと結界を構築していた炎が手の平に収束していく。
「まぁこれからよろしく頼むわ。お前とお前の主とは長い付き合いになりそうだ」
『虎、よくも我が主に傷をつけてくれたな。次は貴様の身体を八つ裂きにしてくれる』
『ほざけ!トカゲ如きがよく吼える』
「ガアアアア!!!」
「ゴオオオオン!!」
「ディン!引き上げるぞ!」
「グルルルル……」
ディンはレギュンが背中に乗ったことを確認すると最後にシーザーを睨んでから大空へ飛び立った。
「みんなー!!」
「香織!?皆!弾幕張って!!香織が帰ってきたよ!!」
『了解!!』
空から手を振って帰ってきた香織に気づいた詩織は、防衛隊に弾幕を張るよう命令をかけた。
「香織!無事だったんだね!!」
「ええ!それよりもシーザーが帰ってきたわ!!皆!反撃よ!!」
「ッ!?分かった!!指揮権は香織に返すね!」
「ええ!ティア!あなたはこの事をユキナちゃんと滉介さんに!」
「了解!」
詩織は黒い衣を纏うと影となって消えていった。
「おかえり!香織ちゃん!」
「皆!ただいま!戦況の方は!?」
「香織ちゃんがレギュンを追っ払ったことでレギュン側に展開していた味方部隊が押し変えている所だぜ!」
「それじゃ私達の部隊はレギュン側から反撃に転じるわよ!そこから展開していけば敵部隊を切り崩せるはず!」
「レギュン部隊は攻撃の要である中央部隊!うまくうちの部隊が切り崩せれば他の部隊も分断可能っすね!」
「ええ!ここが攻め時よ!皆!頑張って!」
『おおおおおおおおお!!!』
防衛に専念していた香織たちの部隊が一斉に攻撃に転じ、今まで均衡していたバランスが崩れた瞬間だった。
『セイリュウ…!どうやら勝負はお預けのようだな』
『馬鹿な!四神の中で一番の力を持つこの僕が!?』
片目がなくなり、炎の揺らめきも弱くなっているビャッコがそう呟き、セイリュウが赤い血を大地に吐き出す。
『貴様が何を企んでいるのか我は分からないが、ユキナは幼いながらも勘付いている』
『はん、何を言うかと思えば僕はこの楽しいゲームを純粋なプレイヤーとしてただ楽しみたいだけですよ』
『なるほどな。いいだろう、現時刻を持ってユキナは貴様のギルドから脱退する』
『ええ、構いませんよ。もう済みましたから』
セイリュウはとぐろを巻くと竜巻を引き起こし、竜巻が消えるとそこにはもうセイリュウの姿はもうなかった。
『もう限界か……』
ビャッコも苦しげに地面に倒れると炎が消え、ユキナが投げ出される。
「あう…」
『ユキナ!大丈夫か!?誰か!ユキナを!』
「ユキナちゃん!しっかりしろ!」
「おい!人員を割いてユキナちゃんを中央拠点まで下がらせろ!!いいか!絶対にやられるなよ!」
ビャッコの声に反応したプレイヤー達が倒れて意識を失っているユキナを慌てて囲み、敵の攻撃に晒されないよう弾幕を張り始めた。
そしてユキナ部隊の副隊長がプレイヤー達に指示を出し、1人がユキナを背負い、4人を護衛につけて下がらせた。
「皆……あとは任せたよ…」
「ユキナちゃん!?おい!皆今の声を聞いたか!?我らの女神から激励のお声を貰ったぞ!」
「ははは!!余計に死ねなくなったな兄弟!!行くぞお前らあああああ!!!」
『うおおおおおおおおおおお』
僅かに意識を取り戻したユキナは、最後の力を振り絞ってプレイヤー達にそう声をかけてまた意識を失った。
それを聞いた突撃部隊のプレイヤー達は歓喜の声を上げ、戦場の中とは思えぬ笑顔を浮かべて敵陣へ切り込んでいった。
『なかなかやるな』
「はっ!はっ!はっ!うぅ…!」
『滉介!しっかりなさい!あなたが死んだら後ろにいる皆はどうなるの!?』
「分かってる……ぐッ!」
滉介は満身創痍だった。血を流し、美しい大剣も今や赤い血で汚れてしまっている。
相手の覚醒能力に対し、こっちはまだ覚醒能力にすら目覚めていない。それに滉介は攻撃力はさほど高くない。防御と防御の要がぶつかり合えば消耗戦しか待っておらず、ジリ貧なのは明らかに滉介のほうだった。
『滉介ぇ!!』
「うるさい!黙ってろ!」
『混沌と戦ったが、お前はどうやら間逆の存在らしいな』
「はぁ…はぁ…はぁ…」
滉介は荒い息を吐きながらMAPを確認する。どうやら自分の部隊は後ろに下がったらしい。これで自分は完全に孤立してしまった。
『お前はなかなか頑張っている方だ。私が覚醒能力を使ったのはほんの数回だが、それでも30分もの間一人で私を足止めした者は誰一人としていなかった』
「そいつはどうも……アンタを倒すか、それとも足止めするのが俺の役目だからな」
『だが、そろそろ限界だろう。ポーションも切れたと見える』
「あぁ、切れたさ。でも、もう少し粘らなきゃならないんだ」
『何故そこまでお前たちは防衛に徹している。確かに我らは此度の戦を決戦と決めているが、お前たちに手ごたえを感じない。まるで何かを待っているような…』
「お喋りなんだな、アンタ」
8mはあろう巨岩の亀に滉介は血反吐を吐き捨てながらゆっくりと大剣を構える。
『ふっ……さて、続きを始めるぞ。どうやらセイリュウとレギュンはやられたらしい。私が戦況を切り開かねばならないようだ』
「へえ、それは良いことを聞いた。それじゃアンタをこのまま足止めをすれば俺たちの勝ちってことだな」
『足止め出来たら、な』
ガイエンはそう呟くと甲羅から巨大なガトリングを2丁取り出し、バリバリバリと音を立てながら空撃ちを始めた。
『滉介!飛びなさい!』
「くっ!なんで亀がガトリングを持っているんだ!!」
そして滉介が飛んだ瞬間大地に鉄の雨が降り注ぎ始める。
『私を盾にしながら突っ込みなさい!あの威力なら10秒耐えて見せるわ!』
「流石!」
滉介は転がってから素早く起き上がると大剣を展開しながら鉛の雨の中を突っ込んだ。
『ほう?だが!』
「くそ!」
口から岩の礫を吐き出し、滉介は悪態を吐きながら亀の股を通り抜けて大剣を逆さに持ち替えた。
「おおお!!」
大剣に光が集まり、滉介は大剣を抜き放った。
『おお!?』
光の斬撃は甲羅に当たり、鉄壁の甲羅に傷をつけた。
『ぬん!!』
「あっ!?」
『滉介!?』
ガトリングの砲台で殴られ、滉介はバウンドしながら地を滑る。
『たちなさい!』
「あぁ!分かっているさ!」
滑りながらも立ち上がり、地を踏み砕いて滉介は走り出した。草木を分け、木を切り倒し、滉介は圧倒的な力を持つ敵へ何度も何度も襲い掛かる。
「うおおおおおお!!!!」
『滉介!武器の耐久値が限界よ!少し休ませて!』
「了解!回避行動に移る!」
『ほう、なかなかな神器との連携だ!悪くない!』
「ありがと、よ!!」
大剣を銃に変えて滉介は走りながら連射する。HPバーは残り3割を切っているが、滉介の足は止まらない。
相手のHPバーはまだ8割もある。でも滉介にとってそんなこと些細なことだった。
彼には当てれば即死する必殺のスキルがあるのだから。
「ぐッ!」
『左手損傷!』
「構わない!突っ込むぞ!」
『どうするつもり!?』
「武器耐久値確認!早く!!」
『ッ!に、20%よ!』
「俺の残りHPを合わせて何秒持つ!?」
『大体5秒よ!でも武器耐久値は臨界一歩手前で強制的に神器解除するわ!いい!?』
「了解!行くぞ!」
木の陰から飛び出した滉介は大剣を盾にして突撃した。
「うおおおおおおおおお!!」
『特攻か!来い!受けてやる!』
鉛の雨を掻い潜り、滉介は巨大な亀の真下へ滑り込んだ。そして右手を銃のように構え―――
「真下からの絶対切断攻撃だ。受けれるもんなら受けてみろ」
『なにッ!?』
「おせええ!!トライデリート!!」
『うっ!?うおおおおおあああああああ―――――!!!!』
巨大な亀に風穴が開き、ばっくりと真っ二つにされたガイエンは最後におぼつかない足取りで数歩歩くと轟音を立てて大地へ倒れた。
「はは……やったぜ…」
「滉介!?」
神器状態から人間の姿に戻ったリーナは、大の字になって倒れている滉介に抱きついた。
「大丈夫!?しっかりして!」
「………」
「滉介!!おきなさい!滉介!!」
「どうしたの!?」
そこへ反撃の指令を伝えにやってきた詩織が何もない虚空から現れ、黒い衣を脱ぎ捨てながら滉介に近寄る。
そんな詩織にリーナはキッと彼女を睨め付けた。
「遅いわよ!!あなたね!もう少し早くこれないの!?滉介、死んじゃうところだったのよ!!援軍も来ないし!部隊に配属したプレイヤー達ときたら腰抜けばっかだし!」
「あ、いやそれはあたしのせいじゃ…―――と、とにかく…颯太達が帰ってくる!これより全部隊は攻撃に転じます!以上!香織からの指令です!って滉介がこんなんじゃ…」
「代役を立ててあるわ!人員を回して急いで滉介を下がらせることも伝えてきなさい!いい!?」
「りょ、了解!あ、あたしはその代役の人に指令と滉介を下がらせる伝言を伝えてくる!」
「早くしなさいよ!いつ敵がやってくるかわからないんだから!」
「うん!それじゃ、行ってくる!」
再び詩織は黒い衣を纏って虚空へ消えていく。
「滉介…よく頑張ったわね…]
意識を失っている滉介にリーナは微笑んで小さな唇を彼の唇に重ねた。
どうもまた太びです!
今日余りにも暇だったので、ゲオでDVD漁りをしていたんです。特に見たいものはなかったのですが、適当に暇を潰せたらいいなと思って歩いていたんです。
そして最近私が好きな曲の『夜鷹の夢』というナイトホークというステルス戦闘機を下にして作られた曲を思い出し、なんとなく戦争系の映画を見たいなと思いました。
そしてであったのが『フューリー』という映画でした。余りネタバレになるので言いたくないのですが、本当に素晴らしい映画でしたね。戦争というものは本当に悲しいものだと改めて思い知らされました。
やっぱ戦争系の映画は素晴らしい作品が多いですね。