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敏捷値が高い=強い(旧題ランゲージバトル)  作者: また太び
5章 青の領域と赤の領域(続)
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勢力戦勃発19

「よう、逃げたかと思ったぜ」


「逃げるもんですか」



地面に降り立った香織はレギュンを睨んだ。香織とアルテミスが叩きだせる最高火力の『アーダーペイン』を受けてもピンピンしているレギュンに思わず苦い表情が浮かぶが、自分の役割は時間を稼ぐことにあることを思い出し、香織は気持ちを整えるため深呼吸をした。



「あのまま空で飛び回っていたら、お前のこと無視して先に進もうかと思ったが、降りてきたからやめといてやるよ」



上から目線なのが気に入らないが、実際相手は自分よりも遥かに上の存在だ。ランクC程度の火力ではきっとレギュンを倒すことは出来ないはずだ。


香織は観察する。


狩猟の神アルテミスの真骨頂は急所の狙い撃ちによる一撃必殺である。しかし、今現在レギュンの周りには小さな炎の塊がいくつも浮かんでいる。恐らくあれはクレアが使う反射鏡のような役割を果たす防衛スキルだろう。


試しに香織は光の矢を射た。



「おっと」


「やっぱり…」



レギュンの身体に当たる直前に炎の塊が動いて光の矢を吸収してしまった。



「よし!」



レギュンは拳を鳴らすと大きく息を吸い、目を閉じて息を吐き出した。



「ん……?」


「あたいの神器は対空を想定していない」



レギュンの雰囲気が明らかに変わった。



「だから空に逃げられると厄介なんだよ。でもな――――」



そして目を開き…――――-――



「あたいが全力を出せばお前なんか一発だろ?」


「くぅっ!」



レギュンの拳にヘルヘイムのエンブレムが入ったグローブがはめられ、そしてグローブから身も焦がしてしまいそうな灼熱の炎が噴き出し、遠くにいる香織のところまで灼熱の余波が襲い掛かってきた。



「空なんか飛ばさせねえ。全力でぶっ潰す。神器も、お前も壊してやるよ」



風でレギュンの髪と赤いマントが舞う。



「お前、さっきあたいのこと挑発しただろ。別に安い挑発なんぞに乗ってやるつもりもないが、まぁあたいのことを挑発したんだ。それ相応のもんを見せてやる」



レギュンはもう一度息を吸い―――――



「まずはお前の身体を壊してやるよ」


「あっ――――――!!」


『香織!!』



気がついたら飛ばされていた。いや、殴り飛ばされていた。



「あうっ!」


「簡単には殺さねえ。あたいが満足するまで殴ってやる。あぁそうそう、死にそうになってもあたいのポーションで回復させてやるからHPのことは気にするな」



見えなかった。颯太とは何度かPVをしたことがあるので速さというものには慣れているつもりだったが、今の攻撃は全く見えなかった。



「おらおら!!」



「う、うぅ…」


『香織!しっかりしなさい!』



香織に逃げるという選択肢はない。自分が逃げればまず背後で戦っている詩織や仲間のプレイヤー達が次に餌食になる。それにそもそもレギュンが発動させている炎の結界に閉じ込められているので逃げる選択肢など初めから存在していなかったのだ。



「おら、立てよ」


「うぐっ!」




木に激突した香織の胸倉を掴んでレギュンは無理やり立たせる。



「まだまだこんなもんじゃねえからよ。頑張って耐えてみせろ」


「ああああああ――――!!」



手をぱっと離したレギュンは炎を纏った右足の回し蹴りで香織を蹴り飛ばした。



何度も何度も殴られて飛びそうになる意識のなか、香織の頭に颯太の姿が思い浮かんだ。



『颯太……くん……』


「ガアアアアアア!!!」



その時、獣の声が響いた。



「ん?うお!?」


「え……」



炎の結界を引き裂いて現れたのは1体の虎だった。その虎は現れるなりレギュンに猛烈な体当たりを決め、レギュンを遥か遠くに吹き飛ばすと香織へ近寄って砂がついた顔をぺろりと舐める。



「あれ……この子は颯太くんの…」


「ウオオオオン!!」


「あ……作戦は成功したのね!?それじゃもうすぐ颯太くん達がこっちに!」


「オン」


「あぁ……良かった…」


「そのソードタイガー…誰のだ?しかもレアモンスターかよ」



顔についた砂を払いながら怒りの表情を浮かべるレギュンは、香織を庇うように前に出るシーザーを睨んだ。



「おいおい、テイムモンスター如きがあたいに歯向かうってのかい?冗談はよしてくれよ!」



腹を抱えて笑うレギュンをよそにシーザーは兜についた刀剣に力を込め、炎の壁へ向けて斬撃を放った。



「どこ撃ってんだよ!AIでも壊れたか!?あはははは―――…お?」



斬撃は炎の壁を切り裂き、1人くらい通れそうな穴を作るとシーザーは香織を咥えて思いっきり投げた。



「え!?ちょっとシーザー!?あっつ!」


「オオン!!」



外に投げ出された香織は閉じていく炎の壁に近づこうとするが、余りの熱さに足を止めてしまった。そして壁は完全に閉じてしまい、中にシーザーだけが取り残される形となった。



「シーザー………まさかあなた1人でレギュンを……」



何故シーザーがあのような行動を取ったか、香織はそれを考えてすぐに思いついた。



「あ!そうだ!颯太くん達が戻ってくるのなら皆に反撃の指令を出さないと!!」



香織は部隊の司令塔だ。香織が戻ってこない限り詩織たちに命令を出すことは出来ない。今はいち早く詩織と合流し、部隊全員に反撃命令を出さなければならない。



「ファレル!!シーザーが作ってくれたこのチャンス!無駄に出来ないわよ!!」


「ピエエエエ!!!」



ファレルは主の声に呼応するように雄たけびを上げていつもより倍近く速い速度で戦場の空を翔けた。



「ガウ!!」


「ちい!!なんだこいつ!」



シーザーはレギュン相手に善戦していた。颯太のテイムモンスターになってからというもの、シーザーは主のステータスを完璧に受け継いでおり、敏捷ステータスに至っては颯太を追い抜かすほどにまで成長していた。


そしてシーザーは成長したことによってある特殊な能力を2つ覚えていた。

まずは魔法攻撃全反射のリフレクシールド。これによりレギュンの炎は完全にシーザーに無効化され、打撃しか通らない状況を作り上げていた。


そして2つ目は分身である。颯太のパートナーに相応しい能力で、最大6体まで全く自分と同じ分身を作り上げることが出来る。

分身にもHPが存在しており、シーザーの20%に値するHPバーを持っている。



「くそ!あたいの炎が効かないだと!?」



レアモンスターは普通のモンスターとは全く違う。シーザー、フェンリル、ファレル達レアモンスターは限りなく人間に近い思考回路を持ち、戦う度に成長していく。



「ガアアアアアアア!!」


「うぐッ!舐めるな!!!」



シーザーは怒りに燃えていた。香織のIDを辿って炎の壁に突入したとき彼の目の前に広がっていたのは、ボロボロで今にも泣きそうな表情をした香織の姿。そんな彼女を笑いながら殴るレギュンに彼の中の僅かに残っていた心に火をつけた。



「オオオオオオオオン!!」



シーザーが雄たけびを上げ、散っていた5体のソードタイガーが一斉にレギュンへ攻撃を仕掛ける。



「くそ!なんだそのでたらめな速度は!」



主譲りだよ、とシーザーは心の中で笑う。いつも暇さえあれば寝てるようなダメ主だが、この時だけシーザーは自分の主に感謝をした。



「ぐはッ!おい!離せ!!」



5体のソードタイガーがレギュンの身体に噛み付いて拘束する。



「グルル…!」


「ははは、冗談じゃねえぞ。あたいがテイムモンスターに負けるだと?」



レアモンスターとは、当初宝の地図ダンジョンのボスモンスターとして作られたモンスターだった。しかし、その案も没となり、シーザー達は低確率であるクエストに登場するレアモンスターとして配置された。

そう、彼らは言ってみればボスモンスターなのだ。その中でも極めて強い部類に入るソードタイガー種のレアはフルパーティーを組んでも倒せるかどうかのレベルである。

そのボスモンスターの名残で、シーザーの能力にはボスモンスターに相応しい能力が追加されていたのだ。ダンジョンのボスモンスターに相応しい所見殺しの魔法反射能力とlast danceである分身。


あの颯太とクレアですらシーザーとフェンリルのHPを半分も削れなかったのだ。炎を封じられたレギュンがシーザーという名のボスモンスターに勝てる道理などない。



「グルルルル…!」


「全く、とんでもねえのに出会っちまったな。お前を捕まえた主、相当な廃人だな」



兜の刀剣に稲妻を宿し、シーザーはレギュンへ突進した。


シーザーが誇る最強の一撃である雷光突きはレギュンの身体に―――

どうも!また太びです!

さて、今回の後書きは親父と酒を飲んでいた時に親父が思い出したことを語ります。え?何故そんなことを書くのかって?あぁ…毎度の如く書くことがないんです…ごめんなさい…。


それは私が小学生の頃でした。うちの祖母が胃ガンにかかってしまったんです。その時の私はまだ幼いということもあり、親に詳しいことは聞かされなかったんです。聞かされた事と言えばおばあちゃんは胃がちょっと悪いから入院するの。程度でした。

『あ~そうなのか?まぁ早く治るといいね』なんて言っていました。実際は命の機器に瀕していたわけですが。

そして医者に相談したところ、早期発見ということもあってか、すぐ入院して取り除けば大丈夫だと言われました。(ちなみにこれは最近になって知ったことです)


でも、親父と祖父は『本当に大丈夫なのか…』と心底不安に思っていたそうです。いや、皆思っていましたが、息子と父の方は母の心配を家族の中でも一倍心配していました。

それから祖母はすぐに入院し、見舞いなど私も行きました。いや、ホント今でも覚えていますが、何で腹が減ったからと言って祖母の病院で出された飯を食ったのか今でも分かりません。


えっと、そして入院してからしばらく経ち、ついに祖母が手術する前日に迫ったときに事件は起こりました。

あ、その前にある人物を紹介しておきます。私の近所にある男の子のうちに住むおばあちゃんがいました。そのおばあちゃんは両親共に仕事に追われる日々からよく親から子を預かっており、度々うちに来て私と姉とその男の子で遊んでいたりしていました。

あのおばあちゃんが生きていればあの男の子もあんな悪行の限りを尽くす先輩になったりしなかっただろうな……あ、いやいや話を戻します。

今書いたとおり、そのおばあちゃんは60何歳という若さでこの世を去ってしまい、葬式の日には私の家族も参列しました。


そして話は手術前日に戻ります。

その日、祖父は仏壇に『どうかうちの祖母を救ってやってください、お願いします』と神頼みしたそうです。

それから今日はそのまま居間で寝てしまったらしいです。

私と姉と母と父は2階で寝ており(もちろん姉と私は別の部屋)皆が寝静まった頃、父はある夢を見たといいます。

それは先ほど書いた近所に住んでいたおばあちゃんでした。『○○ちゃんは大丈夫だからね、何も心配しなくていいんだよ』と夢の中で言っていたそうです。

そして祖父は金縛りにあったそうで、枕元にそのおばあちゃんの霊が見えたといいました。


そして手術は無事に成功し、ガンの再発もなく今も元気に祖母は暮らしています。


それは酒の飲みすぎで見た幻覚だったのか、ただの夢だったのか、それとも余りにも心配性すぎる我が家の男子(私を除く)を心配して天国から来てくれたのか、それは分かりません。

でも、もし本当にそのおばあちゃんのおかげでうちの祖母が助かったというのなら、なんだか少し夢がありますよね。

では、こんなあとがきになってしまいましたが、コレにてドロンです。

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